端的に言うと、簿記2級を全くのゼロから始める人は、簡易廉価版は勧められない。ある程度の素養のある人や、公認会計士や税理士を目指す人が、一通り“簿記2級的なことを済ます”には向いている、という塩梅である。
簿記2級の教材には、「簿記2級のテキスト・問題集・過去問レビュー」にて推奨した「本格版」以外に、一連の「簡易廉価版」のシリーズがあります。
たとえば、ネットスクールからは「日商簿記2級に合格するための学校 」という、“良質な”簡易版シリーズが出版されています。
たとえば、TACから、テキストと問題集がいっしょになった「スッキリ 」という、廉価版シリーズが売られています。
TACの本シリーズは、有名本屋の売上が1位で、累計200万部突破のベストセラーですが…、
結論から言うと、「わたしは使いません」です。
わたしが知りたいのは、どこの書店で何位だったとか、何部売れたのかではありません。
廉価版で合格“できた”人は、何人いるのかを知りたいです。そして、合格者とは、どういう人なのかを、知りたいのです。
わたしが、こうした廉価版シリーズを避ける理由は、「問題数が少な過ぎる」ために、どのみち、新たな問題集を買い足ししなくてはならないためです。
簿記は、理屈だけ説明されても仕方がないもので、地道に問題を解かないと、「本試験で点が取ません」。
経理実務のベテランや、よほどに理解力に優れた人、そのほか、過去に簿記2級を受験したことがあり、ある程度の素養のある人なら、簡易廉価版でで合格できるかもしれませんが、それ以外の人は難しい、というのが実感するところです。
先述したとおり、わたしは使いませんし、友人知人が使っていたら、「公認会計士や税理士のガイダンスみたいなものとして、2級をざっと済ませたい」くらいの、相応の利用目的がない限り、止めるでしょう。
なお、簿記3級にも同じシリーズがありますが、簿記3級の難易度なら大丈夫なのです。対して、難化傾向にある2級では、厳しいといわざるを得ません。
本シリーズの特徴は、単純に、「値段が安いだけ」でしかありません。
本格版でテキストと問題集をそろえたら1科目3000円以上かかるのに、廉価版だと1000円で済むからです。
言葉が悪いですが、マーケティングの象限として、「低価格帯に飛びつく人」を対象にしていると思えてなりません。
マーケティングとしては、「需要の掘り起こし」として正しいのでしょう。
そして買った人は、「安物買いの銭失い」を経験する、いいきっかけとなるのでしょう。誰しもが通る道です。
簿記2級では、最初から本格版で勉強していく方が、無難だといわざるを得ません。
ちなみに、独学では、「教材にお金を惜しんではいけない」が鉄則です。
本シリーズのコンセプトとして、入門的・ガイダンス的な位置づけがなされています。
しかし、一口で言うと、本シリーズは、入門でもダメです。
簿記2級をやろうかどうか迷っていて、決意グラグラな中途半端状態なら、2級は受けない方がいいです。
なぜなら、(とりあえず軽くだけやってみるかなー)などと、心が一歩引いていると、工業簿記・原価計算で詰まるからです。
工業簿記・原価計算は、できるようになるまで、出口の見えない地道な作業を強いられる科目で、心が弱気に傾いていると、まず挫折して、ほっぽりだします。
決意が固まるまでは、無理に2級を受けなくていいです。
「簿記3級で、ぶっちゃけいいんでない?-知識・素養編」や「簿記3級で、ぶっちゃけいいんでない?-お仕事編」を参考にしてください。難化傾向にある今、3級で止めておくのも一手です。
簿記ではありませんが、わたし自身、廉価版の「スッキリ」シリーズの威力を、FP技能士(1級・2級・3級)で体感しています。
FP技能士の「スッキリ」シリーズも、簿記のそれと同じ“つくり”で、本試験に的を絞りきり、テキストと問題集がセットで、リーズナブルな価格設定がなされています。
廉価版ながらも必要なことは載っているので、短期間で合格できました。FP技能士は、それぞれ、1級・2ヶ月、2級・2週間、3級・1ヶ月でした。
しかし、これらの合格は、わたしが「社労士+行政書士+簿記+宅建+管理業務主任者+投資暦10年超」というバックグラウンドがあってこその合格であり、本教材が優れていたから受かった、とは言えません。
「使うのにふさわしい人」が使えば、威力のあるシリーズです。最も低コストで合格することができるでしょう。
しかし、「ふさわしくない人」が使えば、『安物買いの銭失い』に直行することを、忘れないでください。
繰り返しますが、簿記2級のこのシリーズは、わたしは使いませんし、勧めもしませんし、友人知人親類縁者が買おうとしていたら止めます。
・スッキリわかる 日商簿記2級 商業簿記 [テキスト&問題集]
・スッキリわかる 日商簿記2級 工業簿記 [テキスト&問題集]
廉価版は、万人に推奨できません。自転車を集めても、戦車には勝てません。
簿記2級を全くのゼロから始める人や不安のある方は、「簿記2級のテキスト・問題集・過去問レビュー」でも述べたように…
TACの「合格テキストシリーズ」と「合格トレーニングシリーズ」、「合格するための過去問題集」で勉強することを勧めます。
独学では、いい教材を使うのが、結局はいちばん安上がりで、いちばん早く合格できます。
相応の事情や自信がない限りは、簿記2級では、簡易廉価版を避けるように助言致します。
簿記2級に関するこまごましたことは、ブログにも投稿しています。興味のある方は、「簿記2級:ブログ記事」をばご参考ください。
また、簿記2級の求人数等を、「簿記2級独学資格ガイド」に挙げていますので、ご高覧をば。
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