簿記2級の教材レビュー

まずは初めに結論を。一口で言うと。まとめ。要旨。

 簿記2級の教材には、本格版と廉価版の2種類がありますが、確実に独学合格を狙うなら、本格版の一本槍です。値は張りますが、不合格と再受験のリスクを取るくらいなら安いもの。現在では、TACのテキスト・問題集、そして過去問でそろえれば、ひとまずは鉄壁です。

TACの1択

 結論から言うと、簿記2級の教材は、TACの本格版の1択です。

 「合格テキストシリーズ」と「合格トレーニングシリーズ」、「合格するための過去問題集」を使えば、教材面で支障はありません。(後で予想問題集を追加する方がベターです。)

 簿記2級は、今も昔も、下手な教材を使うと落ちる試験です。

 わたくし事ですが、受験生当時、廉価版の非独学教材で勉強したため工業簿記で詰まってしまい、全く勉強が進まなくなってしまいました。

 そのときは、良質な過去問に遭遇したので、ギリギリ合格できましたが、あのままだったら、確実に落ちていたでしょう。

 簿記2級に落ちる人は、わたしからすると、「何でこんなのを使っているのだろう?」と思うような教材を使っています。

 簿記2級は、内容的に3級と比べて格段に難しくなっており(とりわけ商業簿記が)、そして、文理ともども、試験科目のどちらかで手間取るため、『挫折の温床』となっています。

 さらに、商業簿記では試験範囲の大改定があったので、殊更、教材の『質』が問われます。

 こうした背景から、使用教材は、定評のあるTACの本格教材がいちばん無難だと、言わざるを得ないのです。

 TACは、これまで多数の独学合格者を輩出してきた、「カンバンと暖簾」のある出版社です。

 テキストはカラーで見やすく、大き目のB5サイズで使いやすく、丁寧な解説と、過不足のない説明、豊富な図解で、品質面でこれ以上の市販教材はありません。

 問題集や過去問も、問題数は十分にあり、解説及び解き方の説明は詳細で、“説明不足”や“理解不足”を原因とする挫折は起きないでしょう。

 また、独学向けの質問制度や解答サービスが常置されているので、この点でも、安心できます。

 現在のところ、「独学でも合格できる教材」は、TACのシリーズです。

 後述する簡易版に比べると、値段は張ります。

 が、舌足らずな説明で右往左往し、自分で調べる手間や時間を費やしたくない人は、当該本格版を使うのがベストです。

 『自分で調べる』というのは、時間もかかるし、メンドクサイです。

 多少の“上乗せ”コストは、絶対的に手間と時間の点で引き合います。

 ちなみに、わたしが「本格版」を強く推薦するのは、かつて簡易廉価版の教材を使って勉強が詰んだからで、同じ轍を踏んでもらいたくないからです。

 わたしが簿記2級を再受験するなら、TACの教材を使うでしょう。能率(=楽できる・考えなくていい)と、時間(=勉強時間の短縮)は、お金で買えます。

ネットスクールの「日商簿記2級に合格するための学校」について

 わたしはかつて、TACと双璧の出版社「ネットスクール」の教材も推薦していました。

 しかし、新しいとおるシリーズの「日商簿記2級に合格するための学校」は、保留で、様子見です。

 端的に言うと、新シリーズは“良質な”簡易版です。が、わたしが「とおる簿記シリーズ」に求めていたのは、“そういうものではない”という所以です。

 詳細は長いので、興味のある方は「ネットスクール新教材メモ-日商簿記2級に合格するための学校レビュー」をお読みください。

独学ならTACの本格版

 TACの簿記2級教材は全部で5冊ですが、先に大事なことを言います。

 試験範囲の大改定があったので、古本は絶対に厳禁です。試験に出ない論点を一生懸命になるのは悲惨です。

 必ず最新の版を買い、念には念を入れて、「平成28年(2016年)度版対応」とか、「平成28年(2016年)度・新出題区分対応」といった文言を確かめてください。

教材第1段階-まずテキストと問題集から

 端的に言うと、簿記2級の教材は、先に「テキストと問題集」をそろえ、ある程度、試験勉強が進んでから「過去問」や「予想問題集」を追加投入します。

 なぜ「先テキ・問、後過去・予想」になるのかというと、試験勉強の進み具合は、かなり『個人差』があるからです。

 過去問は、常に最新の本試験問題を織り込んでくるために、年に2~3回、版が改められます。

 試験勉強の進捗によっては、受験する回が変わる公算が『大』すぎるので、テキストや問題集が概ね消化できてから、過去問の購入に到るほうがロスがない、という塩梅です。

 また、先に教材を買いこみすぎると、ウンザリしてくるので、まずは、テキストと問題集からそろえて、気軽な心持でスタートを切りましょう。

 商業簿記のテキストは、「合格テキスト 日商簿記2級 商業簿記」を、

 工業簿記・原価計算のテキストは、「合格テキスト 日商簿記2級 工業簿記」を利用します。

 商業簿記の問題集は、「合格トレーニング 日商簿記2級 商業簿記」を、

 工業簿記・原価計算の問題集は、「合格トレーニング 日商簿記2級 工業簿記」を利用します。

 ところで、高品質の電卓を使うと、試験勉強の能率が、即、上がります。

 ダメ計算機でも合格はできますが、簿記2級では、いい計算機を使うことを、強く推奨します。

 計算機を選ぶ際は、「簿記検定試験の計算機(電卓)選び」を参考にしてみてください。

 読んで考えるのがたるい人は、「売れ筋の電卓は、結局なに?」で選べば支障ありませんが、それすらメンドウな人は、わたしが使っている「DF-120GT」を使えば、支障ないでしょう。

教材第2段階-過去問と情報誌

 過去問は、試験勉強の中盤から購入します。つまり、最初は買わなくてもよい、という次第です。

 先述したように、過去問は常に最新の過去問を掲載するので、自分の受ける回が固まってから、当該回に対応する過去問を買う方がロスがありません。

 過去問は、「合格するための過去問題集 日商簿記2級」です。

 表紙には、「○月試験対応」「第○○回対応」との文言があるので、皆さんが受ける回の過去問をご購入ください。

 当該「合格するための過去問題集」の特徴は、まず最初に、第1問から第5問の『典型的な問題』を挙げているところで、解答作業を段階別・手順別に分析して、「過去問とは、こういう風に、解いていく」というのがわかるようになっています。

 過去問への“橋渡し”を設けている塩梅で、本格的な過去問演習に入る前に、ワンクッションを置いて、テキスト・問題集と過去問との「落差」を和らげる工夫がなされています。受験生に必要な工夫だと思います。

 テキスト・問題集とTACと来たのなら、過去問も本書でよいでしょう。

 さて、ご存知のように、簿記2級は試験範囲の大改定があったために、試験の難化が予想されます。

 そこで、試験テクニックや“直近の”試験情報をまとめた試験情報誌「無敵の簿記2級」を追加することを推奨します。

 本書を勧める理由は、「時間の有効利用」です。

 本書を一口で言うと、「専門学校の直前対策講義」的な1冊で、本書があれば、ネットで試験情報を探さなくて済むので、時間のない方に最適な1冊です。

 本書は、過去問と同様に、「○月試験対応」「第○○回対応」といった風に、個々の本試験に対応したものが販売されるので、過去問演習と相性がいいのも、推薦理由です。皆さんの受ける回のそれを買うとよいでしょう。

 模擬試験(予想問題)が1回分付いているので、値段的に、リーズナブルです。

教材第3段階:予想問題集

 予想問題集は、テキストと問題集、そして、過去問が消化できてから、着手します。

 反対に言うと、テキストや問題集、過去問が終わっていないなら、予想問題集を買う必要はありません。

 予想問題集を買う理由は、大改定によって、過去の主要な論点がゴッソリ廃止されたからです。

 このため、従来の過去問は『スカスカ』状態で、どうしても、問題演習数が不足してしまいます。

 それに、今後の本試験では、未知の出題が多数予想されるので、できるだけ、バラエティに富んだ問題に接しておく方が、「本試験で動揺が少なくなります」。

 こうした理由から、予想問題集で過去問の補強を行う、という次第です。

 予想問題集はTACの「TAC直前予想 日商簿記2級」か…、

 成美堂の「日商簿記2級完全予想模試」の、どちらかを使えばよいでしょう。

 個人的なことを言うと、テキストと問題集、過去問はTACでそろえたので、違う手合いを経験しておく意味で、成美堂等の他社の予想問題集を使うことを進めます。

 成美堂は、「試験問題の問題文のメモの取り方」など、かなり実戦に則った内容なので、オススメできます。

廉価版について

 簿記2級には、たとえば、ネットスクールからは「日商簿記2級に合格するための学校 」という、“良質な”簡易版シリーズが出版されています。

 また、TACからは、テキストと問題集がいっしょになった「スッキリわかる 日商簿記2級」という、一連の廉価版が売られています。

 コストを抑えられる廉価版のレビューついては、長くなったので、「簿記2級の簡易廉価版教材について」にまとめています。

 個人的には推薦できませんが、ざっと済ませたい人や過去に2級を受験した人なら、有用に思われます。

廉価版参考

 ・スッキリわかる 日商簿記2級 商業簿記 [テキスト&問題集]

 ・スッキリわかる 日商簿記2級 工業簿記 [テキスト&問題集]

 ・スッキリとける 日商簿記2級 過去+予想問題集記

まとめ‐これで準備万端

 教材は、TACの本格版がベストです。

 廉価版は推奨できません。自転車を集めても、戦車には勝てません。

 独学では、いい教材を使うのが、結局はいちばん安上がりで、いちばん早く合格できます。

 TACの「合格テキストシリーズ」と「合格トレーニングシリーズ」、「合格するための過去問題集」を使えば、教材面で支障はありません。

 試験情報誌「無敵の簿記2級」を、過去問と併用するのもいいです。

 予想問題集は、いろいろ当たる方がいいのですが、TACの「TAC直前予想 日商簿記2級」か、成美堂の「日商簿記2級完全予想模試」の、どちらか1冊を使えばよいでしょう。

 後は、「売れ筋の電卓は、結局なに?」で紹介する、高品質な電卓に買い換えれば、“準備万端”です。

 ところで、本試験では、A4サイズの計算用紙が1枚配布されます。

 計算用紙の勝手にも慣れておくと、本試験で焦りません。また、試験勉強で計算用紙を大量に使うので、ホームセンターでA4コピー用紙を一束買っておくことを勧めます。

 価格参考:アマゾン‐A4コピー用紙

簿記2級のこまごましたもの

 簿記2級に関するこまごましたことは、ブログにも投稿しています。興味のある方は、「簿記2級:ブログ記事」をばご参考ください。

 また、簿記2級の求人数等を、「簿記2級独学資格ガイド」に挙げていますので、ご高覧をば。

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