簿記3級の難易度

まずは初めに結論を。一口で言うと。まとめ。要旨。

 簿記3級の難易度は、試験そのものの難化と実務重視路線のため、格段に難しくなっており、簡単には受からない試験に変貌している。パターン学習のみならず、読解力・理解力・応用力まで求められている。

受かりにくくなった簿記3級

 簿記3級の難化を、一口で言えば、「頭を使わないと、問題が解けなくなった」です。

 反対に言うと、かつては、頭を使わなくても合格できていたが、今ではもう無理、といった次第です。

 後述するように、試験そのものの難化と実務重視路線への転換によって、格段に受かり難くなっています。

 読解力・理解力・応用力まで求められるのが、現行の簿記3級です。

 1つ1つの論点は、決して難しくはないのですが、浅いパターン学習では、受からなくなっているので、しっかり勉強する必要があります。

読解力が必要

 たとえば、1問目の仕訳問題です。

 かつては、本当に基礎的な仕訳が出題されていました。たとえば、“普通の”減価償却の仕訳です。(びっくりするでしょ)

 ですから、本当にカンタンに点が確保できていたのです。

 しかし、昨今の仕訳問題は、正確に「問題文」が読み取れないと、誤解答する問題が増えており、格段に頭を使います。

 たとえば、普通の事業者が車を買えば「車両」ですが、中古車販売業が車を買えば「仕入」になります。ですから、問題文で取引主体の事業が読み取れていないと、誤った仕訳を切ってしまう、ってな塩梅です。

 他の問題でも、問題文とともに、資料を正確に読ませる問題が増えており、格段に「読解力」が必要になっています。

 単に仕訳さえ暗記していれば点が取れたのは、もう過去の話です。

 日々の試験勉強から、丁寧に、正確に問題文や資料を読み解く“練習”を積んでいないと、本試験で泣きを見ることになります。

理解力が必要

 かつての簿記3級は、ド定番・ド頻出の問題ばかりで、パターン学習さえしていれば、通っていました。

 しかし、パターン学習のみでは、通用しなくなっています。

 取引の背景や前提を把握しているか、簿記1順の流れを知っているか、仕訳の意味と目的がわかっているか等々、格段に「理解力」が求められています。

 処理を暗記しておけば解ける問題は、毎回、影を潜めており、どこかに「ひとひねり」ある問題が多くなっています。

 たとえば、修正仕訳ですが、「貸借逆に記帳していた」場合のように、「誤った仕訳の確定」→「逆仕訳でゼロに」→「正しい仕訳」→合わせて「修正仕訳」といった風に、これまでに比べて、一歩も二歩も、踏み込んだ出題がなされています。

 テキストの説明をざっと流すのではなく、『どうしてそうなるのか?』を、常に念頭に置きながら勉強しないと、本試験で戸惑うことになります。

応用力が必要

 知っておくべきは、簿記3級においても、毎回、“見たことのない”新論点や新問題が出題されるようになった、ということです。

 たとえば、第3問では、ほぼ精算表の作成問題だったのに、最近では、財務諸表の作成が出題されており、安易なパターン学習だけでは、本試験でかなり手を焼くようになっています。

 新論点や新問題は、簿記3級の基本である「仕訳‐転記‐集計」を踏まえたうえで、出題されています。

 代表的なのは「各自推定」で、たとえば、この勘定科目のT字勘定がこういう集計になってるなら、数字はこうなるでしょ的な問題を出してくる、ってな手合いです。

 そのほか、簿記一巡の流れが理解できているなら、こういう仕訳を切らないといけないよね的な、推定が入り組んだ出題が増えており、カンタンに解けないようになっています。

 単純な問題は鳴りを潜め、格段に「応用力」が求められています。

実務重視路線

 簿記3級が難しくなった理由として、先述した「実務重視」路線への転換が挙げられます。

 「実務重視」とは、端的に言えば、「実際に経理の仕事に就いたときに、戸惑わない」です。

 3級は、個人事業者や中小事業者の経理を対象にしています。

 経理は、多くの事業者で電子化されていますが、だからといって、すべての事業者が完全にPC化されてはいません。規模の小さいところや、昔ながらのところでは、伝票を使っているところも多いですし、紙の帳簿で経理をしているところも多々あります。京都といった古い町では、未だにそろばんが現役だったりするのですから、まだまだ電子化されていない事業者は多々です。

 こうした背景があるので、簿記3級では、「伝票の仕組み」や「帳簿の記入」、「帳簿の締め切り」、「帳簿同士の関係」といった、経理実務の上で必要になる論点が、本試験で数多く採用されるようになっています。

 これらの論点は、決して難しくはありません。が、きちんと勉強しておかないと、本試験ではまず点が取れません。

 パターン学習しかしていない受験生は、これら実務問題で撃沈されることでしょう。

 簿記3級の勉強の際は、頭の片隅で、「経理職についている自分をイメージ」しつつ、勉強してください。

 繰り返しになりますが、簿記3級は、パターン学習と仕訳の暗記と記憶だけでは、本当に受からなくなっています。

まとめ

 簿記3級は、浅い勉強では、受からない試験に変貌しています。

 かつてのように、○○しときゃ合格、とはいかなくなっているのです。

 すべての論点を確実に消化し、問題集と過去問で問題演習をしておかないと、合格は覚束ないです。

 かつては40~50%が“ざら”だった合格率も、近年では20~30%台が目立つようになっています。

 時間を取って腰を落ち着けて、じっくり取り組んでください。

簿記3級のこまごましたもの

 簿記3級に関するこまごましたことは、ブログにも投稿しています。興味のある方は、「簿記3級:ブログ記事」をばご参考ください。

 また、簿記3級の求人数等を、「簿記3級独学資格ガイド」に挙げていますので、ご高覧をば。

みんなとシェアする