簿記2級の難易度

まずは初めに結論を。一口で言うと。まとめ。要旨。

 簿記2級は、「難しい」のではなくて、「苦労」する資格である。が、根っこの部分はシンプルなので、問題演習と過去問演習をしっかりやっておけば、合格レベルの実力を習得できる。また、高合格率な救済試験や、高合格率状態が続いているラッキー期間もあるので、さらに、『合格』だけはできる。

 端的に結論を言うと、「商業簿記と工業簿記の両科目で点数を取らないといけないので、文理ともども簡単には受からず、相応に苦労はするけれども、勉強さえ続ければ必ず合格できる」難易度です。

 合格率は、平均で30%台ですが、当該合格率は「20%前半から40%後半」と開きがあるので、一概に難しいともカンタンとも言えず、一口で言うと、合格率は当てになりません。

 というのも、合格率は、かなり変動するからです。

 たとえば、第107回の「5.7%」という歴代最低クラスの合格率は、次の第108回となると「46.9%」と、歴代でTOPクラスの高合格率となっています。

 

 同様に、第124回では「12.4%」だった合格率は、次の回の第124回となると「40.0%」となっています。

 

 つまり、『合格率は、下がり過ぎたら、次は上がる』という次第なのです。

 しかしなのです。これとは、真逆のケースもあるからわかりません。つまり、『合格率が上がり過ぎたら、次は下がる』のです。

 顕著な例では、第133回(H25.2.24実施)と第134回(H25.6.9実施)です。

 

 第133回の合格率は「47.6%」で、合格者をたくさん出してしまったという反省会でもあったのでしょう、次回の第134回では調整が入って「13.9%」と、合格率が極端に下がってしまいました。

 二転三転しますが、しかし、なのです。「上下かつ下上するのが簿記2級」なのかと言うと、そうでもないのです。

 どういうことかというと、30%超の高合格率状態が連続することもあるからです。

 先の画像の赤点線のところです。平均より高い合格率が、1年近く続いている期間が多々あります。

 

 こんな風に、「上がったら下がり、下がったら上がるも、そうでないときもある」のが簿記2級の特徴で、単純に「カンタン」とか「難しい」と判断できなくなっています。

 簿記2級は、こう考えておきましょう。

 ① 運が悪いと、難問オンパレードの難儀な回に当たって落ちるか、合格率の低い難しい回に遭遇して落ちる。このため、簿記2級に1発合格できるかどうかは運不運の問題である。

 ② しかし、たとえ落ちたとしても、“低合格率状態が連続したことはないので”、必ず訪れる救済試験や、やや高い合格率が維持されるラッキー期間に受験できれば、合格できる。

 ③ 2~3回受験することを覚悟しておけば、ほぼ合格できてライセンスを入手できるのが簿記2級である。

 じゃあ、の話です。「反対」を考えておくのは損ではないでしょう。

 つまり、自分が受ける回・受けようとする回の『直前の回』の合格率が…、

 50%近いという極めて高い合格率なら、次回の合格率は、極端に下がる可能性が高いので、「パスする」ことも選択肢の1つである、と。

 試験まであまり時間が取れない、本試験まで間に合いそうもないなどの事情があるなら、無理に受けなくてもよい、という寸法です。

 反対に、10%以下の、極めて低い合格率であったなら、次の試験は救済試験で合格率が高くなりそうなので、「必ず受ける」のが選択肢の1つである、という次第です。

 極端に低い合格率が「数字となって目に見えている」ので、怯んでしまいがちですが、だからこそ逆に、「受けるのが大アリ」なわけで、あんまり勉強してなくても、試験だけは受けた方がよい、という塩梅です。

 ま、試験は水物です。データどおりに行く保証はありませんが、それでも、学習計画の参考にはなると思います。

商簿と工簿は、水と油

 試験勉強そのものの難易度は、「高くない」のです。

 最初はとっつき難いのですが、商業簿記や工業簿記・原価計算の根っこの部分は、とても素直でシンプルです。

 丹念にテキストを読んで、十分な量の問題演習して、過去問を繰り返しておけば、必ず合格レベルの実力となります。

 しかも、そのシンプルさ(単調さ)から、一度できるようになれば、後々になってもずっとできる内容です。合格者が自信に満ちた顔をするのも、「一度できるようになった」からです。

 しかし、当該「できるようになるまで」が、苦しいのです。

 間違えを犯すのを恐れずに言うと、「文系は、工業簿記・原価計算で苦しみ」、対して、「理系は、商業簿記で苦しむ」ことになります。

 他のページでも述べているのですが、簿記2級は、「異質の試験科目」が組み合わされているので、文理ともども、“苦労”します。

 ヘンなたとえですが、『刺身とコロッケが同じ皿に盛られている定食』という感じです。

 商業簿記では、取引の処理方法を身に付ける「暗記と記憶」が求められています。「憶えていないと・知っていないと、絶対に点が取れない」のです。言うなれば、ルールブックを憶える次第で、論理もクソもない、これが商業簿記です。

 言うなれば、商業簿記は、「知ってさえいれば、憶えてさえいれば点が取れる」ので、努力が即点数になる科目です。

 これに対して、工業簿記・原価計算では、情報処理やデータ処理といった、数理的な作業が求められており、数学的な頭が動かない人は、テキストを丸暗記したとしても、少しも点数が取れないのです。

 反対に言えば、問題の表・データ・資料の論理性や規則性、法則性をつかむことに長けている人なら、工業簿記・原価計算をあまり勉強してなくても、点が取れてしまうのです。

 こんな風に、商業簿記と工業簿記・原価計算は、その性質が水と油のように違っているため、厄介なのです。

簿記2級は難しくないが、“苦労をする”

 ところで、文系が工業簿記・原価計算に苦しむのは、情報処理的な作業やデータの取扱いに不慣れなためです。

 このため、何回テキストを読んでも、問題集や過去問の解説を読んでも、少しも頭が動かず、『できるようになる』までに、時間がかかります。当該「時間がかかる」間は、ずっと無味乾燥状態を舐めることになります。苦しいです。

 反対に理系は、おおむね工業簿記・原価計算が得意です。こーしてこーしているところに、ああしたいなら、ここの変数をこう変えたらいいんでない、何が難しいの?、です。

 しかし、理系は、商業簿記の杓子定規さに苦しみます。つまり、「これはこうして処理してください。」→「でも、こうしたほうがはやくない?」→「そうであっても、こうしてください。それ以外は認められていません。」→「・・・」という感じに、イライラすることになります。

 文系は、おおむね商業簿記が得意です。あーここを憶えたらいいんでしょ、まあ、2回くらい回せばできるかな、で済んでしまいます。

 こんな次第で、簿記2級は、水と油的な科目で構成されており、しかも、「簿記2級の独学」でも述べているように、捨て問のない簿記2級では、両科目でそこそこの点数を取らなくてはなりません。

 文理ともども、「異質の作業を強いられる」ので、相応に「苦労」してしまうのでした。

 とはいえども、先述したように、根っこの部分はシンプルなので、根気よくやりさえすれば、文理ともども、苦手科目を克服できるし、理解と最終的な合格に到ることができます。

 合格者の数を数えてみてください。

 例年4万人から5万人が合格しているのです。これだけの「多数」の人が「できるようになっている」のですから、絶対にできないことではありません。

 加えて、簿記2級では、救済試験やラッキー期間もあります。ですから、『合格』だけはできるようになっています。

 簿記2級は、合格できない資格ではありません。ただ、苦手科目に“苦労”をするのみです。

補足的なこと

 まずは教材について述べておきます。簿記2級は受験生が多く、市場の規模が大きいので、たくさんの教材が売られています。

 つまり、独学向けのものからそうでないものまでが、たくさん売られているという塩梅です。

 経験者は語りますが、独学で下手な教材を掴むと、マスマスわからなくなって詰まります。「教材レビュー」を参考して、慎重に選ぶよう、アドバイスしておきます。

 あと、電卓も、ペラペラ計算機を使っているなら、買い替えを絶対推奨します。バカみたいに能率が上がります。

 なお、計算機を選ぶ際は、「簿記検定試験の計算機(電卓)選び」を参考にしてみてください。

 が、読んで考えるのがめんどくさい人は、「売れ筋の電卓は、結局なに?」で選べば支障ありません。

簿記2級のこまごましたもの

 簿記2級に関するこまごましたことは、ブログにも投稿しています。興味のある方は、「簿記2級:ブログ記事」をばご参考ください。

 また、簿記2級の求人数等を、「簿記2級独学資格ガイド」に挙げていますので、ご高覧をば。

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