宅地建物取引士(宅建・宅建士)と管理業務主任者(管業)の試験科目「民法」で、改正された「第1037条:配偶者短期居住権」について解説したページ。最低限度のポイントと、チェック用の条文本文を説述する。法改正対策のページ。独学者向け。
「第1037条:配偶者短期居住権」ですが、「新設規定」で、大きな改正の1つです。
知識問題や比較問題で出る可能性が高いです。キッチリ押えておきましょう。
主な改正内容は…、
・「配偶者短期居住権」という権利が新しく設けられた。
…となっています。
「配偶者“短期”居住権」という新しい権利が創設されました。
先に見た「配偶者居住権」と比較させながら、押えていきましょう。
まあ、一口で言えば、「配偶者居住権」の期間限定版です。
まず、「配偶者短期居住権」ですが、条文まんまですが…、
『配偶者は、』
『被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合に、』
『それぞれ当該各号に定める日までの間、』
『その居住していた建物の所有権を相続又は遺贈により取得した者に対し、』
『居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。)を有する。』
…と、定められました。
さて、「配偶者短期居住権」ですが、「配偶者居住権」と大きな違いがあります。
「配偶者短期居住権」は、要件を満たせば、当然に発生します。
対して、「配偶者居住権」は、「遺産分割」「遺贈」「死因贈与契約」を経て、発生します。
このあたり、知識問題で比較問題で出そうなので、キッチリとテキストと条文を読み込んでおきましょう。
まずもって、「配偶者短期居住権」を取得するのは、「配偶者」です。
「相続人」でもないし、「子」でも「親」でもないので、注意してください。
「ひっかけ」で、「○○の場合、相続人の子は、“親族短期居住権”を取得する」などと、出そうです。
そんな規定はないので「×」です。「配偶者」のみです。
次に、条文に、『被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合』とあるように、配偶者が相続時(被相続人の死亡時)に、「無償で居住」していた場合に、限られます。
つまり、たとえば、夫のマンションに「有償」で住んでいた妻といったケースでは、ダメってな次第です。
なお、「配偶者居住権」だと、当該「無償居住」が要件ではないので、注意してください。「配偶者居住権」は、有償無償を問わず、住んでさえいればいいです。
そして、権利の請求先ですが、「建物の所有権を相続又は遺贈により取得した者」となっています。
相続人が複数いても、請求できるのは、建物の所有権を取得した者のみです。
次に、注意すべきは、「居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。)を有する」のところです。
「配偶者居住権」と、微妙に異なっています。
「配偶者居住権」では、その権利を取得した場合は、建物の「全部」が使用・収益できました。
対して、「配偶者短期居住権」だと、括弧書きにあるように、建物の一部のみ無償で使用していた場合は、その一部に限られています。
「配偶者短期居住権」の場合、「一部使用」のケースもある、ってな寸法です。
次に、「使用・収益」と「使用」の違いも、押えておきます。
「配偶者居住権」は、「使用・収益」ができます。
対して、「配偶者短期居住権」だと、「使用」のみとなっています。
そう、賃貸等の「収益」ができなくなっています。
このあたり、絶好の「ひっかけ」ポイントなので、整理して憶えましょう。
たとえば、「配偶者短期居住権を取得した配偶者は、その居住していた建物について無償で使用および“収益する”権利を有する。」などと、しれっと出題されそうです。
もちろん、「×」です。
「配偶者短期居住権」の期間ですが、ざっくり言えば、「六箇月」です。
条文の一号・二号に…、
『一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合・・・遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日』
『二 前号に掲げる場合以外の場合・・・第三項(消滅)の申入れの日から六箇月を経過する日』
…と、定められています。
「遺産分割をする場合」と「それ以外の場合」となっています。つまり、「遺産分割」をしないなら、すべて第二号で処理される、ってな次第です。
このように、「配偶者短期居住権」は「六箇月」ですが、条文の文面からすると、「遺産分割しない」そして「消滅を申し入れない」場合、ずっと、「配偶者短期居住権」が続くことになります。
「配偶者短期居住権」が発生しないときが、但し書きに明記されています。
条文まんまですが…、
『ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第八百九十一条の規定(相続欠格)に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。』
…と、定められています。
前半の「配偶者短期居住権」を取得したときは、まあ、上位互換の権利を手に入れたので発生しないのは、当然と言えます。
注意すべきは、後半の「欠格・廃除」です。
「配偶者短期居住権」は、「欠格・廃除」に該当すると、発生しません。
しかし、「配偶者居住権」では、先の「欠格・廃除」の規定が“ない”ので、配偶者が「欠格」や「廃除」に該当していても、要件さえ満たせば、「配偶者居住権」を取得できます。
比較問題で出そうです。
そもそも、「欠格」と「廃除」自体が、しばしば問われる論点なので、*ついで*といった感じで、「配偶者短期居住権」が出る可能性があります。
念のため、当該規定も押えておきましょう。
第二項に、配偶者短期居住権を取得した配偶者の保護規定が設けられています。
条文まんまですが…、
『前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。』
…と、明記されています。
建物の譲渡等を禁じることにより、権利者の保護を図っています。
なお、「配偶者短期居住権」は、「配偶者居住権」と異なり、登記ができません。
んなもんで、このような保護規定を設けているかと思われます。
居住建物取得者への保護規定が、第三項に規定されています。
まんまですが…、
『居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。』
…と、定められました。
「第一項第一号に掲げる場合」ですが、「遺産分割」をするときです。
要は、「遺産分割」以外で発生した「配偶者短期居住権」の場合、建物所有者は、いつでも、その消滅の申し入れができます。
んで、当該申し入れから「六箇月」が「配偶者短期居住権」の存続期間です。
『配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の所有権を相続又は遺贈により取得した者(以下この節において「居住建物取得者」という。)に対し、居住建物について無償で使用する権利(居住建物の一部のみを無償で使用していた場合にあっては、その部分について無償で使用する権利。以下この節において「配偶者短期居住権」という。)を有する。ただし、配偶者が、相続開始の時において居住建物に係る配偶者居住権を取得したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し若しくは廃除によってその相続権を失ったときは、この限りでない。』
『一 居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合・・・遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始の時から六箇月を経過する日のいずれか遅い日』
『二 前号に掲げる場合以外の場合・・・第三項の申入れの日から六箇月を経過する日』
『前項本文の場合においては、居住建物取得者は、第三者に対する居住建物の譲渡その他の方法により配偶者の居住建物の使用を妨げてはならない。』
『居住建物取得者は、第一項第一号に掲げる場合を除くほか、いつでも配偶者短期居住権の消滅の申入れをすることができる。』
試験勉強については、「宅地建物取引士(宅建)の独学」を、参考にしてください。
「宅建」という資格を、より知りたい方は、「資格ガイド Sランク資格:宅地建物取引士」を、一読願います。
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