独学合格を目指す人向けに、宅建士の「民法」の勉強方法を説述する。主に、法律の素養のない「ゼロ」の人向けの内容。頻出論点中心の勉強で、最低得点は確保できる。そのほか、判例対策・判決文対策、脱初心者、最後の手段も併せて述べる。
以下は、法律の素養のない人向けの「民法」の勉強方法です。
ある程度、“法律を知っている人”は、「頻出論点」や「判決文対策」くらいをお読みください。
「民法」ですが、「民法コメント」で述べているように、「10問」出題中で最低でも「5~6問」を取らないといけない科目となっています。
「民法」は、法律の素養が「ゼロ」からだと、実に取っ付きにくい上に、ボリュームも1000条(出るのは600条くらい)と膨大で、宅建の中で、最も手強い科目となっています。
「民法」には、少々の覚悟が必要です。
後述しますが、「民法」には、ほぼ毎年出題される「頻出論点」があります。
んなもんで、まずは、それら頻出論点に尽力すれば、法律的な素養がない「ゼロ」の人でも、最低でも「5~6問」のうち、「3~4問」が確保できます。
大学の講義や教養講座じゃないので、「民法」の全論点を、1から順になんて、とてもやってられないです。
まずは、頻出論点がどこかを把握しましょう。
頻出論点には、付箋を貼ったり、赤ペンでマークするなりして、(ここをやるんだ)と、強く意識付けましょう。
「民法」の頻出論点は、「7つ」あって…、
・意思表示
・代理
・不動産対抗要件
・抵当権
・売主(請負人)の担保責任
・不法行為
・相続
…が、該当します。
加えて、特殊ですが、「賃貸借」も、頻出論点の1つに、含めておきましょう。
これらは、ほぼ10年連続して出題されている論点です。
先に挙げた頻出論点のうち、「不動産対抗要件」と「売主(請負人)の担保責任」などの「1~2問」は、判例等が問われたりで、難易度が厳しくなっています。
しかし、残りは、テキストレベルの基本問題だったり、定番の判例が問われたりで、点数にできる問題が多いです。
よって、先の7つの頻出論点をシッカリやっておけば、フルマークは無理でも、「3~5点」は確保できる勘定となるわけです。
何が言いたいのかと言うと、『膨大な「民法」だが、頻出論点だけでも、シッカリやっておけば、「民法」が「0点」という最悪の事態だけは、防ぐことができる』ってな次第です。
「民法」が「3~5点」では、合格確定からは遠くても、まだまだ、合格戦線には残れます。
しかし、「民法」が「0点」だと、ほぼ不合格です。
言うなれば、頻出論点だけの勉強で「3~5点」が取れるので、頻出以外は「捨てることも可能」となるってな寸法です。
「民法」が苦手な人は、全部やろうとせず、または、点を稼ごうなんて考えず、まずは、先の頻出論点の制覇を目指して、最低得点を確保することを、至上命題としてください。
全部やらなくていい・捨て問も可能ということを前提にして、勉強に臨んでください。
余計なプレッシャーに潰されなくなります。
さて、では、以下に、頻出論点の詳細を見ていきますが、難しそうなら、読み飛ばして、先に進んでください。
「意思表示」ですが、取れる論点です。
絶対に見ておくべきは、「意思表示の瑕疵」、「意思表示の効果」、「第三者保護規定」、「登記(対抗要件)との関係」です。
テキストに赤丸をしておきましょう。
「代理」で見ておくべき論点は、「代理の要件」、「無権代理」、「表見代理」、「復代理」が実によく出題されています。
テキストに赤丸をしておきましょう。
「代理」も、取れる論点です。
「不動産対抗要件」ですが、これは、単独の論点ではなく、「物権」の総合問題的な論点です。
個々の「物権」の条文規定が問われるほか、「判例」も問われるため、厳しいところです。
「物権」自体が難しいので、追々とやっていく論点です。
当該論点は、多岐に渡るので、テキストの精読のほか、過去問演習、そして、模試問題集・予想問題集で問われたことだけ「やる」というのも、一手です。
「抵当権」ですが、「民法」でのガチ論点です。
基本事項の「物上代位」「抵当権消滅請求」「法定地上権」「一括競売」「賃借権との関係」「根抵当」などが出題されます。
昨今では、「譲渡」「放棄」「順位の譲渡」「順位の放棄」まで出題されています。
当該「抵当権」は、テキストの隅々まで、全ての記述・論点を、押さえておくべきです。
抵当権だけは、本当に、ガチです。
「抵当権」だけは、「すべて勉強」です。捨てるところはありません。
「売主(請負人)の担保責任」ですが、担保責任の基本事項が問われるほか、「悪意」のときの取扱や、「判例」が問われることが多いです。
担保責任は、「民法大改正」のところなので、過去問演習が効かないです。
よって、テキストの精読のみならず、「予想問題集」や「模試問題集」で、シッカリと問題演習をしておく必要があります。
「不法行為」ですが、当該論点も「民法大改正」があったところです。
改正内容はもとより、昔からの頻出論点「時効の起算点」も、相変わらず、問われる可能性が大です。
キッチリと押えておきましょう。
一概には言えませんが、「取れる」問題です。
「相続」ですが、難しいときと、易しいときに2分化されています。
カンタンなときは、「相続の承認・放棄」や「代襲相続」や「遺言・遺留分」の基本事項が問われます。
また、「計算問題」で、相続分の計算があったりします。
これらの問題のときは、比較的、取りやすいです。
しかし、難しいときは、条文の細かいところを聞いてきたりして、到底、解けないこともあります。
点数の勘定としては、配偶者並に「当てにできない」です。
「取れない」時は仕方がありませんが、試験勉強では、「取れる」時に備えて、基本事項だけは、ガッチリと押さえておくべきです。
「賃貸借」は、「民法」では、そんなに問われない論点です。
「使用貸借」などとの比較問題で問われるくらいで、「民法」では、1問丸ごとが「賃貸借」になることは、そうありません。
しかし、「賃貸借」は、「借地借家法」で、ガチで問われます。
「賃貸借」の規定がわかってないと、「借地借家法」が全滅することもあるので、「民法」ではあまり出題されないけれども、「借地借家法」のために、絶対に勉強しておかねばならない論点となっています。
「民法」の勉強時は、ひとまず基本事項だけ押えて、「借地借家法」に駒が進んだら、本腰を入れて勉強していきましょう。
「民法」の勉強で重要なことは、「いち早く、過去問に進むこと」です。
テキストを完全理解してから過去問に進む、ではないです。
ある程度、テキストを読んだら、果敢に過去問で、読んだところの過去問を解きます。
どういう問題が出るかを先に知ったほうが、テキストに身が入ります。
(ここ、試験に出てたわ)という発見が、テキストを丁寧に読むきっかけとなります。
解ける・解けないは別にして、さっさと「過去問」に進むことが大事、と頭の片隅に置いてください。
最初は、テキストの頻出論点に絞って読んでいきましょう。
慌てなくていいです。焦らなくていいです。何が書いてあるかさっぱりでいいです。
最初からわかる人は、絶無なので、ざっくり内容を押えていってください。
なお、テキストを読むときは、「憶えようとしない」でください。まず憶えられないので、無駄な努力です。
テキストを読んだら、即、そこが該当する過去問を解いてみましょう。
LECのテキストなら、過去問とかのコンビネーションが良いのでスムーズです。
過去問がチンプンカンプンでしょうが、テキストを読みながらでいいので解答します。
んで、解説を読み、不明なところがあれば、再度テキストに当たります。
注意事項ですが、最初は全部理解できなくていいので、ざっくりやっていくのがコツです。
始めから、民法の条文に当たる必要はありません。
まず、テキストと過去問の制覇を目指してください。
んで、テキストと過去問とを、“3回くらいやったら”、条文に当たるようにしてください。
民法ですが、令和2年に大改正があったため、凝った出題があまり見られなくなっています。(出題者としては、条文がこなれていないため、問題を作り難いのでしょう。)
改正後の民法の大半の問題は、条文知識を問うものが多いです。
テキストに載ってない条文に対処するためにも、既存の問題演習に加えて、出た条文の前後の条文を、じっくり読んでみてください。
ガチ暗記は無用です。
ある程度、法律の理解が進んでいると、(あー、こういう規定もあるのね)といった感じで、記憶に残ります。
憶えようとすると、消耗します。ゆっくり、『精読する』姿勢で、条文に当たってください。
さて、条文ですが、「民法 PDF」で検索すると、政府運営の「e-Gov法令検索」のページがわかります。
そこで、条文をPDFでダウンロードして、見ていくといいでしょう。
なお、条文のPDFですが、圧倒的に、PCやタブレットの方が、調べやすく、見やすいです。
「民法」ですが、頻出論点以外にも、当然、論点があります。
しかし、それらは、頻出論点がそこそこ解けるようになってからでいいです。
というのも、頻出以外は、「アラカルト」というか「ランダム」というか、実に、費用対効果が悪いのです。
頻出以外は、更に1~2点上乗せしたいという上級者向けの論点です。
点が取り難いとはいえ、頻出以外も、テキスト精読し、過去問に出たものをチェックし、模試問題集・予想問題集を解くことで、そこそこの対応が可能です。
頻出以外でプラス1~2点できると、かなり“大きい”ですが、まあまずは、頻出論点の「5~6点」が確実になってから、着手しましょう。
「民法」の「判例」ですが、対策の基本は、「後回し」です。
まずもって、ベースの条文知識が頭に入らないと、どうにもならないので、「序盤」では、「判例」を考えなくていいです。
過去問演習で「判例」が出てきても、チェックだけしておけばいいです。
「中盤」以降に、「判例」の判断や趣旨を、丁寧に押えいきましょう。
まあ、やることは、「暗記と記憶」だけです。
大事なことですが、「深追い」は厳禁です。
我々は、法律家になるわけじゃないので、判例集を買って読む、なんてことはしなくていいです。
テキストに記載された判例や、過去問で問われた判例を、憶えるくらいで十分です。
「民法」の変わった問題の1つ「判決文」ですが、“基本的に「国語」の問題であり”、これといった対策が「ない」です。
当該判決文問題ですが、判例知識や条文知識を問う問題のときもあれ、テーマに関する知識がなくても、判決文の論理から解答を導けるときもあったりします。
基本的には、取れる問題なのですが、慣れるまでは、たいへんです。
よって、「後回し」で、「中盤」以降に、追々、見ていきましょう。
「序盤」では、(混乱しそうなので)(実力アップにほとんど寄与しないので)、過去問も解かなくていいでしょう。
「中盤」以降の対策としては、まずもって、過去問演習で傾向をつかむことです。
そして、模試問題集・予想問題集で、類似問題に当たっておくことです。
難問・奇問の登場も予想されるので、先の対策くらいが、受験生にできる“すべて”だと思います。
「コメント」でも述べてますが、「民法」に触れたことがない・苦手・困っているなら、「読書」を推奨します。
「教材レビュー」で紹介している「出る順宅建士テキスト&ウォーク問セット」は、かなり、初学者・法律ゼロ者向けに作られてはいます。
とはいえ、やはり、民法に抵抗があるのは事実です。いきなり、あんな漢字だらけの文章を見たら、目を回します。
また、相性もあります。無慚なほど民法が頭に入らない人は、読書で「間」を取ります。
無理は禁物。無理こそ挫折の最要因。頭の地ならしから、始めましょう。
下記2冊は、法律や民法のド素人でも、何とか最後まで読み通せる民法入門書です。
まず、「新書」形式なので、ページ数が多くないです。電車で読めます。また、あまり学問的でもないし、専門的でもないので、高校生でも読めます。
て、テキストのようにガチンコの条文解釈から入らず、主に、民法の背景や前提、考え方からアプローチするので、「民法(法)と自分」との間の「欠落」を生めることができます。
宅建民法の足がかりとしては、最適だと思います。下手な試験勉強より、下記2冊読書です。
推薦書1-「弁護士が教える分かりやすい「民法」の授業 」
推薦書2-「民法はおもしろい」
これまた、「コメント」でも述べてますが、「管理業務主任者」の「民法」を解くのも、一手です。
「管理業務主任者」の「民法」ですが、宅建と比べると、比較的やさしい問題が多く、「序盤」での実力の養成に、ピッタリとなっています。
とにかく、「民法」は「数」なので、管理業務主任者の過去問も、活用してみてください。
昨今の宅建では、「事例問題」が多用されています。
有体に言うと、当事者がコレコレこういう関係にある場合、正しいのはどれ?的な出題形式です。
解答のキーは、当事者の関係を「図」にすることです。
この種の問題は、言葉で考えると、どんどん、こんがらがってくるからで、「図や絵で考える」ことが必要です。
「図や絵で考えられる」ようになるには、やはり、練習が必要です。
テキストの精読時は、個々の法律関係の図・絵も、押えていきます。
少なくても、一度くらいは、白紙の上に、自分の「手」で、法律関係を展開すべきです。
テキストのをそのまま写すだけでも、ぜんぜん違います。
宅建業法などの「非民法科目」は、大半が知識問題で、憶えれば点が取れます。つまり、勉強すればするほど、点が伸びます。
しかし、「民法」は、それらの科目とは、“質的に”、大いに違います。
テキストを読んでも茫漠として掴みどころがなく、問題を解いてみてもしっくりこないというか「なんだろなー」と砂を噛む状態が、1~2ヶ月は続くのです。勉強しても勉強しても、砂噛み状態が続きます。
「民法」は、点数が取れるようになるまでに、そして、実感を持って解答が出来るようになるまでに、「時間がかかる」のです。
で、あるとき、ふっと「わかる」ようになるのです。「こういうことでしょ」的な感じで、テキストが読めるようになり、問題が解けるようになります。
もっと言うと、「なんでこんなカンタンなことがわからなかったのかな」と我ながら訝るくらいに、「腑に落ちてくる」のです。
民法という科目の試験勉強は、いつか来る「わかる」転換期まで、焦らずにテキストを読み、倦まずに問題演習を続けて、早々にあきらめないことが大事です。
民法さえ得点が出来るようになれば、圧倒的な安全圏で、合格できるようになります。確実な合格のためにも、試練の数ヶ月を耐えることにしましょう。
毎日コツコツやっていたら、必ずわかるときがやってきます。
なお、基礎的な法律用語がわかっていないため、ひどく苦労するケースがあります。「法律用語のコツ」を参考にして、ちゃんと接続語等々が理解できているかどうか、確認してみてください。
先述したように、民法はなかなかに「わかってこない」科目です。
こうこうこうこう考えたら理解できる、という代物ではないのです。
個人的な意見ですが、民法は、あまりに分量が多すぎて、人間の一時的な脳の処理量を超えているのでは?と思います。
で、時間をかけて脳の「長期記憶」が溜まってきて、ようやく、ぱっと「わかる」感じが生まれるのでは?と考えます。
「無理に理解しようとすること」は、民法の勉強で一番よくない、理解から遠ざかるやり方です。
当分は、(ふーん)、(あっそ)、(そうっすか)が続きますが、やっていたら必ず「あ、そういうことね」の転換期がやって来るので、無理から理解しようとしないでください。
自ら消耗して、自ら挫折に近づくリスクを、自ら犯す必要はありません。
時間が解決することも多いので、無理な勉強で、やる気を損なわないようにしましょう。
ま、本試験までに間に合いそうになかったら、次節をば。
本試験まで時間がないとか、本試験に間に合わないという方は、「過去問」の問題と解答と解説を、“機械的に”、ド暗記します。
過去問の問題や選択肢だけは、本試験にて、100%確実に正解できるようになっておきます。
こういう「過去問だけは解けるレベル」に到達しておけば、「得点(加点)」は難しくても、「失点(減点)」は抑えられるようになって、ギリギリで合格ラインに滑り込む「率」が上がります!
「民法」ができてないからといって諦めるのではなく、過去問の機械的な暗記だけでもこなして、本試験に臨んでください。
過去問のド暗記で、“もしかしたら”という可能性が格段に上がります!
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