工業簿記・原価計算は、文系や未経験者にとっては、未知・未開の作業となっています。このため、脳の神経回路(シナプス)がつながっておらず、「わからない」ではなくて「頭が動かない」状態になっています。後々、必ずできるようになるので、そこまで、耐えること、続けることが大事です。
工業簿記や原価計算の苦手な人に、アドバイスするならこう言います。
工業簿記・原価計算は、脳の問題である、と。
いきなり大上段から来たなーと思われるでしょうが、実感を持って主張します。
工業簿記・原価計算の「わからなさ」は、普通の「わからない」ではなくて、本当のところは、「頭が動いていない」のだ、と。
工業簿記・原価計算が苦手の受験生の試験勉強は、大概こうなります。
テキストを読むと、「こーしなさい」と書いてます。指示通りにやります。一応は、できます。
しかし、ちょっと違う問題に当たると、何をしたらいいか、頭は動かず手も動かず、解答用紙は真っ白で、しばし呆然とするのでした。
原因は、工業簿記・原価計算の“性質(たち)”にあります。
『工業簿記・原価計算とは、情報処理であり、データの取扱いであり、アルゴリズムの把握である、と。』
“こういうこと”をしたことのある人、たとえば、理系出身とか、システムエンジニアとかの人は、工業簿記・原価計算はカンタンか、最初は戸惑うけれども、実力の伸びは早いのです。
なぜなら、“こういう”頭の使い方を、脳が経験済みだからです。F1に出た人は、宅配もできるでしょう。
対して、文系のような“こういうこと”に未経験な人は、“こういうこと”に頭を使ったことがありません。
古事記や金塊和歌集に「x→0」はないし、「Hello world」ではなくて「男もすなる日記といふものを」です。
文系の勉強では、情報処理的・データ処理的・アルゴリズム的な頭の使い方をしないため、それ相応の神経回路(シナプス)が通っておらず、これがため、頭が動かないのです。大八車か猫車しか知らない人が、T-90戦車に乗るようなものです。
ですから、文系たるわたしたちは、脳に新たな神経回路(シナプス)が出来上がるまで、“気長に”待つしかない、という塩梅です。
工業簿記・原価計算の制覇に時間がかかるのは、脳神経に由来しているんです。
おそらく、多くの方が、問題を見ても、何をしていいのやら、どこから手を付けたらいいのやら?で、無為な時間を経験をするでしょう。
真っ白な計算用紙とノートを前にして、少しもちびっていない鉛筆を見て、進展のなかった虚ろな時間を、とてももったいなく思うことでしょう。
こんな徒手空拳が続けば、頭の動かない試験勉強に嫌気が差します。
しかし、結論から言うと、「大丈夫」で、必ずわかります。(断定)
毎日、延々と「わからない」「しっくりこない」が続いても、ある日突然、豆球が灯る“ピコーン”が脳内に起きます。で、なぜか、それ以降は、問題が解けるようになるのです。
合言葉は、「あきらめない」です。
工業簿記・原価計算は、たとえるなら、一種のトレーニングやリハビリのようなものです。
工業簿記と原価計算の試験勉強は、『脳のトレーニング』か『頭のリハビリ』と思っておくと、気が楽です。
トレーニングやリハビリは、急には進展しません。
しかし、毎日、倦まずにやっていたら、ある日突然、持てなかったバーベルが“普通”に持ち上げられ、到底できなかった屈伸・動行が“普通”にできるようになります。
「トレーニングは嘘をつかない」という名言どおり、きちんとトレーニングを続けると、必ず結果として現れます。それが、人体です。
工業簿記・原価計算でも同じ次第で、あるときを境に、一気に問題が解けるように・わかるようになるのです。
そして、ここが重要ですが、工業簿記・原価計算は、一度できるようになれば、かなりの長期間、できる状態が続きます。
この点は、顕著に商業簿記と異なります。商業簿記は、1年もほっとけば、ほとんど忘れてできなくなります。
対して、工業簿記と原価計算は、ブランクが生じても、(こーしてあーしたらよかったね)という“昔取った杵柄”が発動し、さくっとできます。つまり、実力の低下はかなり緩やかで、「一度できるようになったら、こっちのもんだ」てな寸法です。
バランスは取れてるんですよね。
先憂後楽。
序盤は苦しいですが、後で必ず楽になるので、あきらめず、毎日少しずつでも、問題演習を消化していくのが、工業簿記と原価計算の正攻法かつ確実な攻略法です。
必ず訪れる、「できるようになる日」まで、焦らず、倦まずに、取り組んでください。
気休めを言うと、楽ではあるんです。「できなくて当然」なので、「わからない」を深刻に受け止めなくてもいいからです。「わかんねーよHAHA」でいいのが工業簿記・原価計算です。
真剣に、だけど、気楽に取り組みましょう!
工業簿記と原価計算の勉強方法は、持久戦で、やることも普通でいいです。『要塞』に突拍子のないことをしても、歯が立ちません。
テキストを読んで、テキストの言うとおりに例題を解きます。解説で解き方や進め方を確かめます。
問題集を開いて、同種の問題を解き、解説の勘定連絡図やボックス図をしっかり追います。
しかし、どれほど真剣に取り組んでも、「わからない・できない」でしょう。
そこで、合言葉を決めておきます。
問題演習の合言葉は、「20分」です。
問題を解き始めて「20分」経っても、何も浮かばない、糸口すら出てこなければ、解答作業を止めましょう。
そのまま1時間、2時間解答を続けても、事態は進展しないためです。
わたくし事を言うと、基本情報技術者のときに「頭が動かない」状態に陥り、朝の4時までテキストと格闘しましたが、少しも進展がありませんでした。
だらだらと無用な時間を費やしても意味はありませんし、何より、精神衛生上、健全ではありません!
1つの問題は、「20分」だけがんばってください。「20分」だけ、解答用紙の真っ白な不快さに耐えてください。
「20分」なら、毎日でも耐えられます。
さて、個人差はありますが、以下のように、「あなたの試験勉強」は進展します。
テキストと問題集を1回転すると、「問題文に何が書いてあるのか」は、夏服のようにウッスラ見えるようになり、問題の趣旨は把握できるも、解き方や処理は頭に浮かばず、てんで解けません。解説を追うのが精一杯です。
2回転目になると、少し問題に肉薄できて、“何をしたらいいか”頭に浮かびますが、うまく“その何か”を処理や行動に移せません。正確さも欠け、モヤモヤっとしたもどかしさは続きます。
で、3回転目になると、ようやく一縷の展望が見えてきて、「ここをこうしてここはこうするのはわかるが、こことここの処理はどうすれば?」的に、ようやく“問題演習らしく”なってきます。
テキストと問題集を3回やって「指先に食い込み感」を感じるようになったら、過去問に舞台を移します。多少、わからないところが残っていても構いません。
過去問レベルとなると手強いでしょうが、同じようにやっていきます。
目標は、「3回」です。頭を抱えますが、テキストと問題集を「3回」やっておれば、そこそこに手ごたえもあるはずです。
遅くても、テキスト・問題集を「3回」、過去問を「3回」やれば、先に言った“ピコーン”が発動して、「できる!できるぞー!」に到達します。
最後に、注意事項を。初学者の人は、独学向けの良質な教材を、必ず、使ってください。
個人的に、かつて工業簿記で完全に詰んだことがあるので、何度も指摘しておきます。よい教材は、解説や勘定連絡図の丁寧さが違います。いい教材を使ってください。
参考:教材レビュー
また、ちまちました試験勉強は、気が滅入ります。数字や文字を大きく書いて、計算してください。
本試験では、A4の計算用紙が配られます。ホームセンター等でA4サイズのコピー用紙を一束買い、それで問題演習すると、「試験慣れ」になるし、大きく計算もできるし、用紙不足に悩まされることもないしで、いいこと尽くめです。
余ったら、本来の使い方をするか、子供のお絵かきに使うか、配偶者のシャツにすればいいでしょう。たぶん気づきません。
価格参考:アマゾン‐A4コピー用紙
過去問演習で一番大事なことは、定番の問題や、パターンが決まっている問題を必ずマスターすることです。
解説の総評で、頻出の問題とか、パターン問題とか、オーソドックスな問題と書かれた問題は、解き方を憶えてでも、できるようになっておきます。
「勉強していれば取れる問題で、確実に点を取る」ことほど、合格に貢献する作業もありません。合格する人は、必ずこうした問題で点を確保しています。
また、出題者側も、意図的に定番問題・パターン問題を出題して、試験全体の難易度を調整する“きらい”があります。
過去問をしっかり解いて、定番問題・パターン問題を落とさないようになっておいてください。これこそが合格直結作業です。
試験では、満点を狙う必要はありません。
要は、合格点を確保できればいいだけです。
完璧主義は、自滅のもと。
ある問題を完璧に解こうとすると、他の問題にしわ寄せ時間が“必ず”発生します。
一部だけ特に難しい出題にして、受験生の足止めを図らんとする、出題者の意図を感じませんか?
得点の更なる上乗せは、「部分点」という橋頭堡を築いてからです。
工業簿記と原価計算が超苦手な人は、“自分が何の原価計算をしているのか”を、常に、いつも、事あるごとに、確かめてください。
要は、新しい何たら原価計算を勉強したら、必ず、前に勉強した原価計算と『違い』をハッキリさせます。
というのも、工業簿記・原価計算は、「決まってない」からです。反対を言うと、商業簿記は「決まっていた」ので、違いの把握が必要なかった、という寸法です。
たとえば、手形。融通手形を受け取ったらこういう処理をする、と決まっています。
たとえば、社債。社債を買入償還したら、こういう仕訳を切る、と決まっています。アンダーパー発行なら、当期分の差額は社債利息扱い、と決まっています。
商業簿記は、主に『1物1処理』でした。ですから、手形と社債の処理で混乱することは、まずありえません。
しかし、工業簿記・原価計算ではそうではなく、ただただ、決まっていません。
『会計原則に沿ってたら、1物をなんででも処理していいよ』という世界です。そう、メーカーの好きにできるわけです。
このため、商業簿記に慣れ親しんだ人は、「???」に陥りやすいのです。
これが、「シャツは標準原価計算だけ」とか、「タオルなら直接原価計算しか認めない」のなら、まだしも、イメージが湧くので理解も進んだことでしょう。
しかし、実際は、「シャツ」は個別だろうが標準だろうが総合だろうが直接だろうが好きにしていい、となっているので、「???」になるのでした。
そのうえ、費目別やら工程別やら組別やらが絡んでくるので、余計に「???」になるのでした。
当該「決まっていない」が、工業簿記・原価計算の「わからない」を、かなり強化しています。
では、これらの反対をすれば、何とか展望も開けるという塩梅で、先の「自分が何の原価計算をしているのかを確かめる」に到達する次第です。
「わかる」ときまでは、常に各計算の違いを意識して、勉強してください。1歩進んで5歩振り返るくらいで、丁度いいです。
なお、当該振り返り確認作業は、通勤や通学時のスキマ時間に行うのが最適です。
(ほにゃらら原価計算はこうで、何たら原価計算はこうだったよな)といった感じで、「違い」を思い浮かべるだけでも、いい勉強になります。
計算だけが、工業簿記・原価計算の勉強ではないのです。電卓の叩けない電車でも、効果的な勉強はできます。
商業簿記は、基本は暗記科目なので、「追い込み」が効きます。
つまり、土日・祝日・ゴールデンウィークやシルバーウィークのすべてを勉強に充てたら、そこそこ「実力」が付いて、点数が取れるようになります。
ですから、本試験直前に、がんばりにがんばれば、合格ラインに滑り込める可能性の高い試験科目なのです。
しかし、工業簿記・原価計算は、このような「追い込み」が効きません。
いくら直前期に24時間ガンバろうとも、問題が解けるようにはなりません。
工業簿記・原価計算の遅れは、致命的です。
工業簿記・原価計算は、「前もってやっておかないと、直前ではどうにもならない」と認識した上で、学習計画を立ててください。
言うなれば、工業簿記・原価計算を優先した計画にする、という寸法です。
手数料を払ったのに試験を受けない“受験放棄”は、主に、工業簿記・原価計算の遅れが理由です。
工業簿記・原価計算は、文系や未経験者にとっては、やったことのない「作業」です。
ですから、できなくて当然です。「できない・わからない」からといって、腐らないようにしてください。
時間は食いますし、いつできるようになるか不明なので、不安に思うことでしょう。
しかし、必ず、できるようになります。そこまで、耐えること、続けることです。工業簿記・原価計算は、“脳神経”の問題なので、気長に構えましょう。
凄く長いこのページを最後まで読み通したあなた。その忍耐力があれば、必ず工業簿記・原価計算は突破できますよ!
簿記2級に関するこまごましたことは、ブログにも投稿しています。興味のある方は、「簿記2級:ブログ記事」をばご参考ください。
そのほか、「簿記のコツ-それは計算機」や「計算機打ち方例」なども役に立つかと思います。
集計の多い工業簿記・原価計算では、さらに、「検算のコツ」も知っておくと、磐石でしょう。
また、簿記2級の求人数等を、「簿記2級独学資格ガイド」に挙げていますので、ご高覧をば。
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