本問は『固定資産税』の仕訳。2013/11実施の第135回‐第1問の4問目。本問は、固定資産税の処理に、自家消費を加えた応用問題です。「自家消費」の分を、きちんと処理しましょう。ちょい混乱しますが、解説のように考えてみてください。仕訳そのものはカンタンです。仕訳の切り方の要領や手順、注意事項など。憶え方、まとめページへのリンクもある。
◇問題◇
4.土地と建物に対する固定資産税\240,000の納税通知書を受け取り、第1期分\60,000を当座預金の口座振替により納付した。このうち、事業用の割合は60%で、店主用の割合は40%である。
◇勘定科目群◇
結論から言うと、「答えの仕訳はこちら」です。
本問のレベルは「ふつう」です。
固定資産税の処理と、簿記3級おなじみの論点「自家消費」が合わさった、応用問題です。
少々面食らいますが、落ち着いて解けば大丈夫です。
言うまでもありませんが…、
「借方」は「左がわ」で、フォーク・お茶碗・スマホを持つ方です。
「貸方」は「右がわ」で、ナイフやお箸を持ったり、配偶者の小屋を掃除するときのほうです。
本問のポイントは、『自家消費』部分です。
支払った固定資産税は\60,000です。しかし、問題文の『なお書き』には、「事業用の割合は60%で、店主用の割合は40%」とあります。
ここをキチンと処理しないと、点数になりません。
「事業用の割合」は、お店の経営に関係する費用であり、当該費用こそ、お店の帳簿に計上しないといけないものです。
んで、残る「店主用の割合」のところは、「お店の経営には関係ない」という塩梅です。
「お店に関係ない」のですから、当該支払いは、「店主の個人的な使い込み」となります。
「個人的な使い込み」は、ごぞんじのように、「自家消費」として処理します。で、当該使い込みの額は、「60,000*0.4」の「24,000」となります。
当該\24,000の仕訳をどう切るかが、本問の肝です。
大事なことを言います。
自家消費の処理は、使う勘定科目に注意しなくてはいけません。
自家消費の処理は、2系統あって、「引出金」か「資本金」の、どっちかの勘定科目で処理します。
使う勘定科目は、指定勘定科目群にあります。んなもんで、どっちが使われているかを確認したうえで、処理します。
自分勝手に仕訳を切ってはいけません。
本問指定の勘定科目群には、「引出金」があって、「資本金」がありません。よって、本問は、「引出金」で処理します。
今後、卑劣な出題者は、「資本金」でも出してくる公算が大です。自家消費の処理は、指定勘定科目群で使い分けることを、しっかり憶えておきましょう。
さて、自家消費の額は「24,000」です。
仕訳は、純資産(資本)の減少なので…、
借方:引出金 24,000
…と相なります。
本問のような固定資産税は、「租税公課」で処理します。
なお、当該「租税公課」は、そのほかに、印紙税や自動車税、配偶者税を支払ったときも、当該勘定科目で処理します。
先ほど見たように、商売上の正当な経費は、「60,000-24,000」の「36,000」となります。これが、“本式の”、“経理上、正当な”固定資産税の額です。
仕訳は、費用の増加なので…、
借方:租税公課 36,000
…と相なります。
決済は、「当座預金」と問題文にあります。
支払額は\60,000なので、仕訳は、資産の減少で…、
貸方:当座預金 60,000
…と相なります。
先の仕訳を合体すると…、
借方:引出金 24,000
借方:租税公課 36,000
貸方:当座預金 60,000
…と相なります。これが答えです。
本問の自家消費が「???」な人は、問題文「第1期分\60,000を当座預金の口座振替により納付した。このうち、事業用の割合は60%で、店主用の割合は40%である」を、以下のように、読み換えてみてください。
「店の固定資産税として、\36,000を当座預金から支払った。」
「店主が、店の当座預金\24,000を盗んだ。店主は、その金銭で、自宅の固定資産税を払った。」
こんな風に考えると、整理がつくと思います。
基本的に、「お店」と「店主個人」は、帳簿上、関係がありません。
お店に関係のない、店主個人の費用を、お店の帳簿に計上することは、できません。
固定資産税の支払いも、お店の帳簿に載せないといけないのは、お店の分の固定資産税だけです。
固定資産税から考えると、頭がモヤモヤしますが、要は、店主の使い込みさえ押さえればよい、という次第です。店主がぱくったお金の使い道は、お店にとって関係ありません。本問では、たまたま、同じ固定資産税を払っただけ、という塩梅です。
また、貸方の「当座預金 60,000」のほうにモヤモヤしている人もいるかもしれません。なんで、お店に関係ない支払いなのに現金を減らすの?!ってな寸法です。
ここは、カンタンに考えます。
現実上、お店の金庫からは現金\60,000が無くなっているのだから、それをそのまま反映させるだけ、ってな次第です。(6万は国庫に入ってます。)お金の用途うんぬんは、深く考えなくていいです。
本問で、少し注意したいのは、「固定資産税\240,000の納税通知書を受け取り」のところです。
高校生さんなどは、税金の納付書を受け取ったことがないのでわからないでしょうが、「納付書が来た=即、支払い義務発生」ではありません。
税金や社会保険の納付書は、大概が「分割払い」です。問題文にあるように、「1期」とか「2期」とかで、「支払期限」が異なっています。
注意すべきなのは、納付書の金額\240,000でもって、仕訳を切らない、という次第です。
難しく考えて…、
借方:租税公課 216,000
借方:引出金 24,000
貸方:当座預金 60,000
貸方:未払金 180,000
…といった仕訳を切ってはいけません。
本問は、「固定資産税\240,000の納税通知書」を受け取っただけです。
つまり、これは、皆さんおなじみのクソ理屈「簿記上の取引」に該当しない、といった寸法です。
そう、単に納付書を受け取っただけで、“物やお金は、一切動いていない”のであります。
仕訳の対象は、“現実の動き”があった、\60,000のところです。
できる人ほど、難しく考えて、配偶者のようなへんてこりんな仕訳を切るときがあるので、注意してください。
答えは…、
…です。
一口コメントです。
本問は、2つの論点が含まれている、応用問題です。
1つ目の論点は、固定資産税の支払いには、「租税公課」で処理することです。
2つ目の論点は、自家消費があった場合は、「引出金(または、資本金)で処理するところです。
混乱した場合は、1つ1つ処理を念頭に、解答しましょう。
1問:現金過不足・・・「ふつう」。
2問:改定のため削除
3問:固定資産売却・・・「ふつう」。
4問:固定資産税・・・「ふつう」。
5問:当座借越・・・「ふつう」。
簿記3級は格段に難化しているので、本格教材を使うのが一番、無難です。
詳細は「教材レビュー」で述べてますが、読むのがメンドクサイ人は…、
テキストは「合格テキスト 日商簿記3級」で…、
問題集は「合格トレーニング 日商簿記3級」で…、
過去問は「合格するための過去問題集 日商簿記3級」で揃えば、独学に支障ありません。どれも『ド定番教材』です。
ところで、電卓です。
100円ショップで売ってるような、ぺらぺら計算機は計算ミスの元です。
高品質な電卓を使っていない方は、「簿記検定試験の計算機(電卓)選び」や「売れ筋の電卓は、結局なに?」を参考に、買い換えてください。
左のがぺらぺらで、中と右が高品質の計算機です。絶対的に高品質の方が打ちやすいです。
考えるのが面倒な人は、現在わたしが愛用している「DF-120GT」にすればよいでしょう。全く支障ありません。
簿記3級の中で異色のメンドクサさを誇るのが為替手形です。当該論点についてはブログの方にまとめているので、「ブログ:簿記3級-為替手形」を参考ください。
仕訳問題は、「簿記3級の仕訳問題」を参考ください。
そのほか、簿記3級に関するこまごましたことは、ブログにも投稿しています。興味のある方は、「簿記3級:ブログ記事」をばご参考ください。
また、電卓の打ち方についてを、「簿記のコツ-それは計算機」や「計算機打ち方例」で述べてます。お目汚しください
「検算のコツ」を知っておくと、計算ミスを結構防げます。
なお、お手持ちの電卓が、試験で使えるかどうか不安な方は、「簿記の電卓」を参考ください。
また、簿記3級の求人数等を、「簿記3級独学資格ガイド」に挙げていますので、ご高覧をば。
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