簿記2級・商業簿記第3問‐総合問題対策

まずは初めに結論を。一口で言うと。まとめ。要旨。

 簿記2級の商業簿記の第3問「総合問題」の独学に必要なことを最小限にまとめています。試験の傾向が一定しないので、「部分点」確保を最優先する。新問題や新論点の出題が予想されるが、深追いはせず、解ける問題を解いて、解答用紙をある程度埋めてから、本腰を入れる。精算表の勉強方法や注意事項なども。

不動の戦略・部分点‐ひとくち基本方針

 「簿記2級の独学」でも述べていますが、第3問においても、「部分点」を最重視します。

 反対に言うと、完全解答は目指さない、見知らぬ論点は深追いしない、といった次第です。

 難化傾向にある昨今では、未知なる論点や会計処理が続々と採用される“きらい”があり、また、“設問の数を増やしかねない”ので、「見切りと目利き」と「解答の順番」が実に大事になっています。

 第3問の基本方針は、満遍なく問題を解くのではなく、「解ける問題」「できる問題」に絞って、“効率よく”解答して「部分点」を確保し、それから新問題や新論点に“食らいついて点数を底上げする”ってな次第です。

主要論点と傾向

 第3問は、「試算表の作成」が主要論点です。

 「財務諸表の作成」も出題されますが、大元の作業は精算表と同じです。

 なお、改定によって、「本支店会計」の比重が、かなり落ちています。

 というのも、ド定番の「内部利益の控除」が2級から削除されたため、本支店会計は“問題が作りにくくなった”からです。

 今後の本支店会計は不明ですが、従来のままだと、あまりに簡単すぎるし、難しくするとしても、たとえば、支店の数を倍にするなどしても、単純な処理が増すだけという塩梅で、何気に問題にふさわしくないのです。

 こんな次第で、本支店会計については、定番の処理を、念のためくらいに、押えるくらいでよいでしょう。まあ、出るとしたら、推定問題か、第1問の仕訳問題にて「本店集中計算制度」くらいです。

財務諸表の作成問題

 先述したように、財務諸表の作成問題では、大元の作業が精算表なので、精算表の勉強をしていれば、おおむね点数は取れます。

 ただ、勝手が少し違うので、油断は禁物です。1年基準摘要による集計の違いや、表記する場所は、念入りに見ておく必要があります。

 一番狙われやすいのは、「有価証券」です。

 同じ勘定区分でも、1年基準の適用によって、「流動資産」と「投資その他の資産」に分けられて表記されるからです。

 T字勘定を設けて、整理するなど、各自で混乱しない工夫を重ねてください。

 また、「関連会社株式」が「関係会社株式」で表記されるなど、厄介なところもあるので、丁寧に見ておきましょう。

 参考:関連会社株式と関係会社株式の区別は、語呂で

精算表の掟

 精算表の勉強で大事なことは、「コピーした解答用紙で、直に練習する」ことです。

 必ず、精算表に、直に解答します。

 絶対やってはいけないことは、ノートに仕訳だけ書き出して、(これはここに書けばいいんでしょ)的な、浅い問題演習です。

 繰り返しますが、これは絶対にダメです。

 精算表には精算表なりの要領があり、実際の精算表で、何度も何度も、何枚も何枚も練習をしていないと、たとえば、左右(貸借)逆に記入するなどの、ミスを“絶対”にします。

 わたしのケースでは、「前払費用」を貸方に書いていたりして、馬鹿みたいな失点を犯したものです。

 また、精算表の作成に慣れていないと、「修正記入はしているのに、B/SやP/S部分には記入していない」という、これまた馬鹿らしいミスを犯します。

 仕訳や計算が合っていても、記載箇所が間違っていたり、採点箇所に記入されていないと、点数になりません。

 そして、なにより「解答時間の短縮」です。

 第3問は、「時間との戦い」であることを忘れてはいけません。

 「実際の解答用紙」で「実際に練習」していない限り、本試験では、必ず記入に手間取ります。

 えっちらおっちら精算表を埋めていては、絶対にライバルに追い付きません。あなたが精算表を終える頃、ライバルは第4問の後半に駒を進めています。スピードアップには、実地の練習が不可欠です。

 「ぐずでのろま」なのは仕方ありませんが、「ぐずでのろまのままでいる」ことは許されません。

 練習だけが、物を言います。

 解答用紙をコピーするのは、手間でしょう。しかし、実際の精算表で練習しない限り、実力は付きません。

 問題の1問1問ごとに、解答用紙を3枚はコピーして、問題演習でバリバリ消費していきましょう。

 なお、大体の教材には、ダウンロードサービスがあって、解答用紙のヒナ形(PDF)を落とせるようになっています。USBメモリにPDFを落として、コンビニ・コピーです。

精算表は『自分ノウハウ』を

 精算表の頻出論点は、あまり変わりありません。(頻出論点については後述。)

 ですから、丁寧に問題集や過去問を解いていれば、処理だけはできるようになります。

 しかし、第3問では、それだけではいけません。

 切った仕訳なり、施した処理なりを、解答用紙に記入して、なんぼのものだからです。

 先も言いましたが、精算表は、「慣れていない」と、必ずミスをします。

 記入忘れ、貸借の場所を取り違え、B/S欄とP/L欄に書いていないなど、さまざまなミスがあります。

 で、このミスなのですが、実に個人差があり、他人から見ると、なぜこんな間違いをするの?的なミスとなっています。

 ですから、「どうしたら自分がミスをしないか」を、個人で追求しなくてはいけません。

 ちなみに、わたしの場合だと、簿記試験ではないのですが、建設業経理士の受験の際、精算表問題にて必ず「記入忘れ」があって、くだらない失点をしていました。

 仕訳と処理、計算はすべて合っているのに、書いていないから「×」だったり数字が合わなくなったりで、ストレスが溜まりました。

 で、対策としては、計算用紙にすべての仕訳を書き出し、精算表に記入する都度、仕訳の数字部分に丸をつけて、「記入忘れのチェック」をするようにしました。

 1手間食うので余計な時間がかかりますが、ミスがなくなったので、ミスを直す時間がセーブできた、ってな塩梅です。

 精算表のやり方は、いろんなやり方があります。

 「修正記入」に書いたら即、B/S等に転記するとか、反対に、まず、修正記入を埋めてからB/S等にまとめて転記していくとか、です。

 しかし、一番なのは、「自分が、ミスをしない」やり方です。

 問題演習時は、「問題を解く」のと並行して、「自分なりの、ミスしない解答方法」を練り上げてください。

設問を2~3度読んで作戦会議

 第3問は、すぐに取り掛かるのではなく、まずは、資料と設問とを、2~3度、目を通します。

 これが第3問の最大のコツ『作戦会議』です。

 最初に設問を2~3度読んで、

 ・設問同士のつながりを調べ、

 ・解く問題に目星をつけ、

 ・難問・奇問・新論点を排除する。

 …といった次第です。

設問同士のつながりを調べる

 設問を何回も読むことによって、「つながっている設問」が判明します。

 たとえば、「銀行勘定調整」の問があり、「売掛金の入金が未達だった」なんて文言があったとしましょう。

 売掛金の入金があったということは、売掛金の減らす仕訳を切らねばならず、売掛金が減ったなら、当然、貸倒引当金の計上も変わってくる、という塩梅です。

 こうした場合、貸倒引当金の問題文の端っこのほうに、「売×回収あり」的なメモをしておけば、格段にミスは減ります。

 そのほか、固定資産の期中取引があれば、減価償却も変わってきます。減価償却の設問の端っこにでも、「期中取引あり」などとメモすれば、ミスは減るでしょう。

 このように、「互いに関連がある=一方の処理によって、もう一方の数字が変わってくる」ものを、いの一に把握することで、“解答を整理する”といった次第です。

 出題者は、基本的に、単独の処理ではなく、『複数の仕訳(多重処理)』が絡んでくる問題を、好んで出してきます。

 また、昨今の難化傾向では、さらなる多重処理を仕掛けてくることを否定できません。

 ですから、先に設問を2~3度読み、互いに関ってくる設問(処理)を、明白にするといった次第です。

問題の目利きと見切り

 昨今の簿記2級は、1級や税理士試験同様、完全解答のできない試験へ変わりつつあり、「問題を、選んで、解く」ことが、重要な手法となっています。

 設問には、ややこしくて・時間がかかって・複雑なものもあれば、仕訳1本で解答できるものもあります。

 わたしたちがやるべきことは、後者の仕訳1本切って精算表に記入すればそれで済むものを、目ざとく見つけて、優先して解くことです。

 時間は有限です。後に工業簿記・原価計算も待っているのです。試験戦術上のポイントは、まず、カンタンなところを解く、です。

 処理の難しいところやヤヤコシイところに時間を割いても、最終的に解けなかったり、合わなかったりします。

 たとえば、貸倒引当金です。

 当該貸倒引当金は超定番の論点ですが、多数の論点が「噛んでくる」ので、一筋縄でいきません。

 貸倒が判明した、売掛金の回収があったが未達、売上の値引き・割戻しがあった(ついでに割引も)、手形貸付金、営業外受取手形、営業債権には○%・非営業債権には×%などなど、いくらでも処理が絡んできます。

 “見切り”が必要です。

 複雑な処理に、多くの時間を割くと、他の設問のみならず、果てには、工業簿記・原価計算の時間が足りなくなってしまいます。

 ぶっちゃけ、仕訳1本の設問と、複雑な貸倒引当金の設問も、同じ『得点』です。なら、手を焼くなと思った設問は、「後回し」です。

 また、有価証券の評価も、資料の多寡で、難易度が計れます。数が2~3個ならカンタンですが、10以上も有価証券の資料が長々と続けば、手を焼くことは明白です。

 なら、「後回し」か、カンタンな「子会社株式・関連会社株式」の処理だけして、他の手の焼かない設問に向かいます。(仕訳なしなので、T/Bの数字をそのまま転記。)

 こんな次第で、まずは、部分点の取れる設問を優先して処理する、といった次第です。

新問題・新論点

 第3問では、「200%定率法」や「未収還付法人税等」など、従来にはなかった論点が顔を出すようになっています。

 今後も、テキスト等ではそう指摘されなかった会計処理や実務事項を、挿し入れてくる公算が大です。

 一口で言うと、『第3問には、見知らぬ処理が出てくるはず(出なかったらラッキー)。』と覚悟しておくことです。

 大事なことは、パニックに陥ってはいけない、という次第です。

 「???」な新問題・新論点に遭遇したときは、「配点は、あって1つか2つ」と、敵を呑んでしまいます。

 で、「後回し」です。

 第3問の設問の大半は、過去問演習でお馴染みの論点であり、先述したように、まずはそれらを処理して、部分点を確保してから、「???」な新問題・新論点に、立ち向かうようにします。

 新問題・新論点の出来・不出来で合否が分かれる、という事態は、そうそうありません。

 それに、です。

 新論点・新論点では、資料や問題文にヒントや指示が“意図的に”残されているケースが多いのです。

 解ける設問を処理して時間を確保した後、本腰を入れて“よくよく考えても”、少しも遅くありません。

 それかいっそのこと、全問題を解き終えた後の見直し時間で考えます。

 “かっちり”解けないので気持ち悪いでしょうが、

頻出論点

 出題者は、鼻の長いピノキオなみに信用がならないので、予断は禁物ですが、おおむね、例年通りの出題で、「点が取れる」のは、以下の論点です。

 ☆売上原価の計算・期末商品の評価。

 ☆費用の繰延と見越。

 ☆収益の繰延と見越。

 ☆建設仮勘定。

 ☆引当金の処理、計上(貸倒引当金を除く)。

 ☆消耗品の処理。

 ☆無形固定資産の償却。

 一番のねらい目は、無形固定資産の償却です。

 償却期間が頭に入っていれば、それで仕訳が切れるし、当該償却期間もカンタンなので、いの一に有無を調べるといいでしょう。

 費用・収益の見越と繰延も、“複雑な指示”がなければ、即答できます。

 建設仮勘定は、減価償却の方に目が行きがちですが、何気に精算表のB/S残高で点をくれることもあるので、忘れずに処理・記入します。

 引当金の計上も、そう難しくはないでしょう。

 売上原価の計算・期末商品の評価は、「ボックス図」をまず書いて、じっくり攻めれば、取れる出題が多いです。

 なお、言うまでもありませんが、処理に手を焼きそうなら、原則どおり「後回し」です。

 というのも、出題者は、「皆が点を取るところに、意図的に難しい処理を挿し込んで来る」可能性が高いからです。

 「○○は点が取れる」なんていう思い込みを、出題者は突いてきます。

 固定観念はパニックの元なので、柔軟に対処する必要があります。事前の得点計画など、立てない方がよいでしょう。

 次は、「厄介なら後回し」にするグレーゾーン論点です。

頻出だが、グレーゾーン論点

 資料の数が少ない・処理が少ないなど、「解けそう」なら着手しますが、膨大な多重処理や、見聞きしない指示・処理があるなど、手間取りそうなら「後回し」にする、グレーゾーンの論点は以下の通りです。

 難~普通:貸倒引当金の設定

 難~普通:売買目的有価証券・満期保有目的債券の評価・その他有価証券の評価

 難~普通:減価償却

 処理の数を増やせばそれだけで難易度が高くなるので、見切りが必要です。あまりに難しいものが出たら、捨ててもいいでしょう。

 配点は、あっても1~2つですから。

 しかし、原則は不動で、取れそうなところは「解く」です。子会社株式の処理は“そう多くないはず”なので、そこだけ解いて、雑多かつめんどくさい売買目的有価証券は後回し、ってな塩梅です。

過去問は、要注意

 過去問のパターン学習が崩れて久しい簿記2級ですが、そうであっても、「過去問」は解かねばなりません。

 とりわけ注意したいのが、「出題された、未知なる問題や処理」です。

 第3問では、たとえば、「200%定率法」や「未収還付法人税等」といった、馴染みのない論点が採用されていますが、新しく問われたことが、次回次々回それ以降の試験で、再び出題されることを否定できないのです。

 また、第3問に問われた新論点・新問題が、第1問や第2問にて、装い新たに登場する可能性は、実に高いです。

 (こんな変な処理、もう出ないだろう)とは思わず、「今後、何かしらを仕掛けてくる」ことを想定して、丁寧に解説を読んで内容を理解し、解けるようになっておきます。

第3問まとめ

 繰り返すように、まずは、「点の取れるところ」を、物にしましょう。

 ある程度解いてから、処理が複雑で難しい設問に、本腰を入れます。

 部分点方式の最大のメリットは、「心に余裕が生まれる」こと。

 これまで見聞きしたことのない問題や、厄介で手間のかかる難問にかかりっきりだと、どうしても、「焦り」が生じて、解ける問題も解けなくなりがちです。

 これが、少しでも問題を解いて、「答案用紙が埋まっている」と、格段に落ち着くのです。

 部分点確保による、当該メンタル効果は、実に大きい。

 (なんだこれ?)と思った新問題が、実は、資料の出し方・見せ方を変えただけで、やるべきことは、従来のままだった、ってなことも、考えられます。

 複雑な問題は、1つ1つの処理を丁寧に積み重ねていけば、解けます。

 また、新論点や新問題には、資料や問題文にヒントが記載されている公算が高く、“よくよく考える”と、正解に迫れる問題するなどの“配慮”が見られます。

 だからこそ、落ち着くべきなのです。

 「解ける問題」を優先して解くことに、解答上の支障はありません。

 繰り返します。第3問は、満遍なく問題を解くのではなく、「部分点」を重視し、「解ける問題」「できる問題」に絞って、“効率よく”解答することが、大事になっています。

 なお、使用教材の詳細は、「教材レビュー」で述べていますが、読むのがメンドクサイ人は…、

 テキストは「合格テキスト 日商簿記2級 商業簿記」を、問題集は「合格トレーニング 日商簿記2級 商業簿記」を、過去問は「合格するための過去問題集 日商簿記2級」にしておけば、当面は、支障ないです。

簿記2級のこまごましたもの

 簿記2級に関するこまごましたことは、ブログにも投稿しています。興味のある方は、「簿記2級:ブログ記事」をばご参考ください。

 そのほか、「簿記のコツ-それは計算機」や「計算機打ち方例」なども役に立つかと思います。

 さらに、「検算のコツ」も知っておくと、磐石でしょう。

 また、簿記2級の求人数等を、「簿記2級独学資格ガイド」に挙げていますので、ご高覧をば。

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