簿記2級・商業簿記の勉強方法

まずは初めに結論を。一口で言うと。まとめ。要旨。

 簿記2級の商業簿記の勉強方法について、最小限にまとめています。もう「計算」と「会計処理」だけでは合格できない。序盤から過去問に“挑む”ことが重要。結局最後は仕訳。仕訳を常に切り電卓をたたく。難化・大改定にあっても過去問演習は不動、過去問は計3回繰り返す。「図」を憶え、「勘定科目の簡略化」で、スピードを上げる。理論穴埋めや実務対策として、テキスト読込みを。

電卓仕訳!電卓仕訳!電卓仕訳!

 最近の簿記2級では、理解力や応用力を問う出題が増えていますが、これに対処するには、「地道に仕訳を切る」しかありません。

 常に仕訳を切っていると、「仕訳で考えられるようになる」ので、新傾向の問題や難問・奇問に格段に強くなります。言うまでもありませんが、既存の論点も、解答の要は仕訳です。

 どのような問題でも、最後は「仕訳」に戻ります。「仕訳」が合っていれば、正解です。逆を言えば、受験生は、目の前の問題を、いかに「仕訳」に還元するかが、解答のポイントです。

 「仕訳を切って電卓をたたく」を徹底してください。「仕訳を切る(さぼらない)」が、攻守ともに満たすオールラウンドな勉強方法です。

 なお、商業簿記は、本試験の第1問~第3問を構成しており、第1問は「仕訳問題」、第2問は「変則」、第3問は「総合問題」となっています。

 また、独学用の教材詳細は、「教材レビュー」で述べていますが、読むのがメンドクサイ人は…、

 テキストは「合格テキスト 日商簿記2級 商業簿記」を、問題集は「合格トレーニング 日商簿記2級 商業簿記」を、過去問は「合格するための過去問題集 日商簿記2級」にしておけば支障ないです。

ひとくち基本方針

 商業簿記のポイントは、「過去問の洗礼」を、いかに早い時期に受けるか、です。

 まず、基本のテキストと問題集とを、「1~2回」済ませて、各論点を大雑把に掴みます。

 テキストと問題集は、序盤はそう深入りしなくて結構です。

 普通に、テキストを読んで、問題集で当該論点の問題演習を行う、といった次第です。

 で、“多少怪しいところ”があってもいいので、躊躇せず過去問に進みます。

 で、過去問を「1~2回」、ざっと解きます。

 まずは、「ここまで」です。

過去問で、深みと厚み

 過去問を解いてみればお分かりでしょうが、「こういうところまで突いてくるのな」という身の毛もよだつ経験をするかと思います。

 当該危機感こそ、「自分が何をすればいいか」を、心底、知らしめます。

 テキストの読み込みが浅いのなら、じっくり読み直します。理解の浅いところを見つけたら、問題集で反復練習します。

 定番の仕訳を忘れていたら、徹底暗記します。

 苦手な論点があれば、3回も4回も5回でも解いて、つぶします。

 基礎的な問題が解けないなら、そこだけ問題集で特訓します。

 過去問を解くと、これまでの試験勉強が一変します。「自分に何が足りないのか」が明白になるので、試験勉強への身の入り方が格段に変わるためです。

 一番変わるのは、「テキストの読み方」で、(こんな注意書きでも重要なんだな)的な感想を持つはずです。(テキストについては後述。)

 現状の商業簿記では、テキスト・問題集を完全に仕上げてから過去問に向かうよりも、序盤でまず1回は、過去問を通しで解いて、その後で、再びテキスト・過去問に戻り、で、きっちり仕上げていくほうが効率がいいです。

 過去問という「敵」を知って、「己」を知り、そして、それを日々の学習に反映していくのが、商業簿記の勉強と相なります。

 商業簿記は、早め早めに過去問に着手してください。気が重いでしょうが、不合格よりましです。

過去問は、合計「3回」

 過去問は、合計で「3回」解きます。

 パターン学習は廃れたといっても、やはり、過去問からの問題の使い回しは『ある』ので、似たような問題は、絶対に得点できるようになっておきます。

 過去問は、単なる過去の問題ではなくて、専門専属の人間が時間を費やして作っていることから、“現状での最良な問題集”でもあります。

 簿記2級の受験生のほとんどが過去問を解くのも、過去問が“最良な問題集”だからです。

 トンチンカンな出題や難問・奇問も多々ありますが、それでも、解かないと実力アップは覚束ないです。

 難化したからといって、大改定があったからといっても、過去問の重要性は少しも落ちていません。

 公式では、「新論点は、2~3割」といっている次第で、つまりは、「旧論点が7~8割」出るという塩梅で、今後も過去問は最重要教材です。

 「簿記2級の独学」でも述べていますが、簿記2級では時折、累積した不合格者を排除する「救済試験」が行われる節があり、この場合に、過去問演習をしっかりしておけば、格段に有利です。

 全くわからない論点でも、過去問に出たことだけは、解けるようになっておきましょう。救済に引っかかる可能性が格段に高くなります。

 こんな次第で、「過去問演習」は、いまだ健在、「3回」を目安に解いてみてください。

 最初は時間がかかりますが、時間が経つにつれて解くスピードは増します。反対に言うと、過去問でさえモタモタしてるなら、本試験でもモタモタして穏当に落ちます。

 合格とは、結局は「数」です。

 過去問演習で、問題演習の「数」をガッツリ稼いでください。

 さて、最後に、予想問題集です。

 かつては過去問演習で合格できましたが、難化している昨今では、予想問題集の追加は必須です。

 予想問題集の活用については、「予想問題集を解く理由」に述べています。使用教材については、「教材レビュー」を、読むのが面倒なら、最低でも「TAC直前予想 日商簿記2級」は解いておきましょう。

テキストの読み込みも

 現状の試験では、テキストの読み込みも、重要な勉強となっています。

 第2問にて、会計用語や簿記用語の「理論穴埋め」問題が採用される可能性が高いからです。

 公式でサンプル問題が表記されていますし、簿記3級でも出題実績あるので、簿記2級でも第2問にて、いつ「理論穴埋め」が採択されても、あやしくありません。

 「理論穴埋め」は、まず「語群選択」の選択式でしょうが、最悪、漢字で書かせる可能性も高いです。(出題者は受験生の斜め上を行くことを忘れてはいけません。)

 基礎的な会計用語や簿記用語は、丁寧に見ていきましょう。「株主資本等変動計算書」なんて漢字で書けます?「支店分散“計算”制度」や「本店集中“計算”制度」も、落とすための問題として、出題可能性がぷんぷんします。(本支店会計の比重が下がっているので余計です。)

 また、簿記試験は、「実務重視」をうたっているので、帳簿のつけ方、帳簿組織、帳簿の〆方等々も、念入りに読んでおく必要があります。

 このように、現状の簿記2級は、かつてのように「計算」と「会計処理」だけでは受からなくなっているので、「テキストの精読」も併せて行なってください。

「図」こそ武器

 商業簿記の勉強で大事なことは、テキストの「図」を憶えることです。

 たとえば、「売上原価のボックス図」や「銀行勘定調整表」です。

 総合問題で「商品」と目にしたら、すぐに、↓のようなボックス図が「頭」に湧いて、それぞれの数字が計算用紙に記入できるようになっておきます。

 

 初心者が躓く、銀行勘定調整表も同様です。即、下のような図を思い浮かべられるようになっておきます。

 

 テキストや問題集、過去問にある「図」は、最も間違いが少なくて解答時間も短い、良質な「解き方」となっています。

 うまく問題が解けない人は、「図」がきちんと頭に入っていないからです。

 「図」がぱっと頭に浮かぶようになると、問題を解く時間もミスも、格段に減るはずです。

 テキスト等の「図」は武器です。手ぶらで臨むからうまくいかないのです。使えそうな「図」は、どんどん吸収しましょう。

 なお、「銀行勘定調整表」が苦手な人は、「簿記2級‐銀行勘定調整表:ブログ記事」の一連の投稿記事を参考にしてみてください。

簡略してスピードアップ

 勘定科目は、できるだけ簡略化します。かなり勉強時間と解答時間のロスが減ります。

 以前、ある女性の問題集を拝見しましたが、顕著に彼女の性格を現していました。キッチリと、「売掛金」は「売掛金」と、「現金及び預金」は「現金及び預金」と、きれいな字で、1文字たりとも揺るがせにせず、仕訳を切っておりました。

 その姿勢はすばらしいのですが、ちょっと“時間がもったいない”気がしたのも事実です。

 というのも、いちいち本式を漢字で書くよりも、アルファベットや記号を使う方が、手間が省けるからです。

 「現金及び預金」なら、「C」と書くだけにします。「cash」の略です。

 「当座預金」なら、「バンク」で通じます。(預金は、bank account)

 「売掛金」や「買掛金」なら、「売×」「買×」と書きます。「掛=かけ=掛け算=×」という簡略次第です。

 「受取手形」は「receivable」なので「Rec」、「支払手形」は「payable」なので「Pay」にします。慣れたら、「R」や「P」でも構いません。

 「有価証券」なら「yuuka証券」で「UK」でも「Uka」でもいいですし、「有」にしてしまうのもいいでしょう。「投資有価証券」なら「投有」、「その他有価証券」なら「その有」なり「その他UK」です。

 「株式」なら「Stock」なので「ST」にできます。「株式」などと「十何画」も漢字で書かず、「St」か「S」にすりゃあ、一筆です。「子会社S」「関連S」などと書けば、手間も減ります。

 たくさん書くことになる勘定科目はこんなところでしょうか?

 さて、なんで「英語」にするのかと言うと、「簿記は翻訳」だからです。カッコをつけてペダンチックにしてるわけじゃないのです。

 『2月10日』は『簿記の日』ですが、福沢諭吉が西洋の会計本を“翻訳”した日がその由来で、関係者以外だからどうしたの極みであります。

 翻訳は、原語を母国語に正確に対応させるために、日本語として、使い勝手が悪いです。

 「繰延利益剰余金」なんて言葉は、英語の「Retained Earnings」で把握した方が、よほどにわかりやすいです。

 ですから、元の英語表記に戻る方が、会計や簿記の世界では、しっくり来るという塩梅です。

 勘定科目の英語表記を調べると、簡略化のヒントがたくさんあります。

 試験勉強を通じて、勘定科目は、数百・数千書くことになります。簡略化は大いにロスをなくすでしょう!

簿記2級の商業簿記のまとめ

 過去の簿記2級と、現行のそれとでは、大きく変わりました。が、試験勉強の根っこの部分は変わっていません。

 1つ1つ仕訳を“地味”に切って電卓をたたく。問題集で問題演習をしては復習。過去問演習でも復習。繰り返して、問題演習の数を稼ぐ、という次第です。

 注意すべきは、「テキストの読み込み」です。パターン学習だけの受験生を引っ掛ける問題が出題されるので、テキストをきっちり読み込んで、「取引の正確な把握、行なうべき会計処理の判断」が求められています。また、実務系の問題も出るので、さらにテキストが重要なものになっています。

 勉強の基本は「繰り返し」です。テキスト・問題集・過去問は、それぞれ「3回」は繰り返し、苦手な論点はそれ以上、練習しておきます。

 勉強そのものは大きく変えなくてもいいのです。変えないといけないのは受験生の意識で、一口で言うと、簿記2級は、もうカンタンに受かる試験ではなく、きっちり勉強しないとまず合格できないと、考えておく必要があります。

 パターン学習と暗記と記憶のごり押しだけですんだ時代は過去のものとなり、正直、一発合格は厳しいです。わたしは、救済試験のときに運よく1回で受かりましたが、現行の2級を再び受けるとしたら、(理想は1回合格だけど、まあ2~3回かかるだろうね)です。

 また、当今は「大改定」に当たっているので、なおさら不透明感が増しています。が、腰を落ち着けて、地味に問題演習の数を稼いでください。結局、「量」が一番ものを言います。

簿記2級のこまごましたもの

 簿記2級に関するこまごましたことは、ブログにも投稿しています。興味のある方は、「簿記2級:ブログ記事」をばご参考ください。

 そのほか、「簿記のコツ-それは計算機」や「計算機打ち方例」なども役に立つかと思います。

 さらに、「検算のコツ」も知っておくと、磐石でしょう。

 また、簿記2級の求人数等を、「簿記2級独学資格ガイド」に挙げていますので、ご高覧をば。

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