第138回‐仕訳過去問(2014/11実施)

まずは初めに結論を。一口で言うと。まとめ。要旨。

 本問は、『固定資産の売却』の問題である。2014/11実施の第138回‐第1問の2問目。本問は、おなじみの固定資産の売却時の処理がテーマです。「間接法」の意味を、おさえましょう。ここがわからないと解けません。後は、過年度の減価償却費の計算だけです。仕訳の切り方の要領や手順、注意事項など。憶え方、まとめページへのリンクもある。

第2問‐固定資産の売却

 ◇問題◇

 2.平成22年9月1日に取得した業務用パソコン(取得原価\150,000、残存価額ゼロ、耐用年数5年、減価償却費の計算は定額法、間接法で記帳)を、平成25年1月1日に\20,000で売却し、売却代金は現金で受け取った。なお、当店の決算日は12月31日であり、取得年度の減価償却費については月割計算する。

 

 ◇勘定科目群◇

 

解説

 結論から言うと、「答えの仕訳はこちら」です。

 本問のレベルは「ふつう」です。

 ポイントを2口で言えば、『過年度の減価償却費をする』そして、『忘れずに、当期の減価償却をする』です。

 「今年の分」を意外に忘れるので、線を引いて時間軸を明確にして、解答しましょう。

 ところで、言うまでもありませんが…、

 「借方」は「左がわ」で、フォーク・お茶碗・スマホを持つ方です。

 「貸方」は「右がわ」で、ナイフやお箸を持ったり、配偶者にお札を貼るときの方です。

ポイント‐時間軸

 本問は、過年度と当期の減価償却費が計算できれば、正解します。

 問題文には、「平成22年9月1日に取得」とか「平成25年1月1日に\20,000で売却」とか「当店の決算日は12月31日」と表記されています。

 こういう日時の指定があるときは、線を引いて、時間軸をはっきりさせると、誤答が劇的に少なくなります。

 わたしは、この種の問題を頭の中だけで解くと100%間違うので、線を引いて年月日を“明確”にしてから解いてます。手間も時間も食いますが、試験で大事なのは、正確に解くことです。

 さて、本問での「当期」は、「平成25年1月1日~12月31日」が会計期間となります。(問題文には指定がありませんが試験日的に。)

 で、下線を引いて、先に挙げた年月日を記入していくと、以下のようになります。

 

 下線に、このような『時間軸』が書けたら、もう終わったも同然です。

H22年の減価償却費を計算する

 問題文の指定は、「取得原価\150,000、残存価額ゼロ、耐用年数5年、減価償却費の計算は定額法、間接法で記帳」となっています。

 「間接法」とは、おなじみ「減価償却累計額」を以って、減価償却費を計算・集計・表記するやり方です。

 んで、本問では、解答に必要な「減価償却累計額」が、“意図的に”省かれているので、自分で計算しなくはいけません。

 先の『下線時間軸』を参考に、減価償却費の数字を求めます。

 まず、「H22年分」から見ていきます。

 問題文には、『取得年度の減価償却費については月割計算する』とあります。

 パソコンは、H22年の9月に購入しています。んで、会計期間は「1月1日~12月31日」です。

 買ってからは、9月・10月・11月・12月の「4か月」しか経っていません。

 んで、「取得原価\150,000、残存価額ゼロ、耐用年数5年、減価償却費の計算は定額法」に基づいて計算すると…、

 「(150000-0)/5*4/12」で、「10,000」となります。

 H22年分の減価償却費は、\10,000と相なります。この額が、「減価償却累計額」になります。

 なお、先の月数の計算には、ミスを防ぐため、小学生のように指折り計算するのを勧めます。わたしは、常に指折りで計算します。頭でやると、ほぼ間違うからです。

 数を数えられない、仔犬並みの知性の配偶者にも、指折り計算を教えてあげてください。

H23年の減価償却費を計算

 H23年の減価償却費を計算します。この年は、月割りしないので、カンタンです。

 「(150000-0)/5」の「30,000」が、H23年の減価償却費で、当該金額が、過年度の減価償却累計額に加算されます。

H24年の減価償却費を計算

 H24年の減価償却費を計算します。同じく、カンタンです。

 「(150000-0)/5」の「30,000」が、H24年の減価償却費で、当該金額が、過年度の減価償却累計額に加算されます。

H25年の減価償却費を計算

 H25年の減価償却費を計算します。

 なにいってんの?と思われる方もいるでしょう。

 しかし、減価償却費の問題においては、必ず、「当期」の減価償却費に留意することを、癖付けておきます。

 本問は、“たまたま”、期首の「1月1日」に売却しているので、「当期分の減価償却費」をしなくて済んでいるだけです。

 もしこれが、「2月1日」なら、「1ヶ月分」の減価償却費を計算しなくてはいけなかったのです。

 難化している簿記3級ですから、今後は、「当期分」の減価償却費を計算させる問題が出て、全くおかしくありません。

 うっかりすると、「過年度分」を計算したところで満足してしまい、「当期分」をすっかり忘れることが多々あります。

 こうしたミスを防ぐために、「常に当期の減価償却費」を考えることを、癖付けるといった寸法です。

 今後の簿記3級や、さらには簿記2級等々で、当該癖付けは、活きてくると思います。

 さて、H25年の減価償却費ですが、先述したように、期首に売却しているので、減価償却費の計上はありません。「ゼロ」です。

減価償却累計額の計算

 過年度の減価償却費をまとめると…、

 H22年分・・・\10,000

 H23年分・・・\30,000

 H24年分・・・\30,000

 H25年分(当期)・・・\0

 …となり、合計は、「10,000+30,000+30,000」の「70,000」と相なります。

 当該\70,000が、貸方に、「減価償却累計額」で、計上されている、ってな寸法です。

売却と決済

 問題文には、「\20,000で売却し、売却代金は現金で受け取った」とあります。

 「間接法」ですから、取得原価\150,000そのままが、計上されています。言うまでもなく、パソコンの勘定は、「備品」です。

 資産の減少で、資産の増加ですから、仕訳は…、

 借方:現金 20,000

 貸方:備品 150,000

 …の仕訳を、取り敢えずは、切りましょう。

損益の判断

 備品であるパソコンの元の値は、\150,000です。

 減価償却累計額は、\70,000です。

 帳簿上の価値は、「150000-70000」の「80,000」あります。

 しかし、売れたのは、\20,000でした。

 \80,000の価値のあるものが、\20,000でしか売れなかったので、「80000-20000」の「60,000」を損したことになります。

 使用勘定科目群を見ると、「固定資産売却損」があるので、当該科目を使用して、仕訳を切ります。

 費用の増加ですから…、

 借方:固定資産売却損 60,000

 …と相なります。

減価償却累計額を減らす

 先に見たように、既に、貸方に計上されている減価償却累計額は、\70,000です。

 備品を売却するのですから、当該金額を控除します。

 使用勘定科目群を見ると、「備品減価償却累計額」とあるので、当該科目を使用します。

 負債の減少ですから、仕訳は…、

 借方:備品減価償却累計額 70,000

 …と相なります。

仕訳を合体

 先の仕訳を合体させましょう。

 仕訳をあわせると…、

 借方:現金 20,000

 借方:備品減価償却累計額 70,000

 借方:固定資産売却損 60,000

 貸方:備品 150,000

 …と相なります。

 これが答えとなります。

まとめとこたえ

 答えは…、

 

 …です。

 ひとくちコメントです。

 最初は、頭がウニ状態になりますが、慣れたら、どうってことはありません。

 減価償却費の計算は、本当によく出るので、何回も何回も解きましょう。

 なお、固定資産の売却損益は、貸借差額で、求めることができます。

 主要な…、

 借方:現金 20,000

 借方:備品減価償却累計額 70,000

 貸方:備品 150,000

 …の仕訳を切ります。

 借方は、「20000+70000」の「90000」です。

 貸方は、「150000」です。

 その差は、「150000-90000」で「60,000」です。

 借方の方に不足があるわけですから、「損」で処理する、ってな塩梅です。


138回‐第1問:仕訳

 1問:改定のため削除

 2問:固定資産の売却・・・「ふつう」。

 3問:手形割引・・・「ふつう」。

 4問:売上応用・・・「ふつう」。

 5問:商品券・・・「ふつう」。

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