登録販売者 第2章:人体

第2節:薬が働く仕組み

第1項:薬の生体内運命

1)薬の生体内運命(b)薬の代謝、排泄

 「(b)薬の代謝、排泄

 「代謝とは、物質が体内で化学的に変化することであるが、有効成分も循環血液中へ移行して体内を循環するうちに徐々に代謝を受けて、分解されたり、体内の他の物質が結合するなどして構造が変化する。」

 「その結果、作用を失ったり(不活性化)、作用が現れたり(代謝的活性化)、あるいは体外へ排泄されやすい水溶性の物質に変化したりする。」

 「排泄とは、代謝によって生じた物質(代謝物)が尿等で体外へ排出されることであり、有効成分は未変化体のままで、あるいは代謝物として、腎臓から尿中へ、肝臓から胆汁中へ、又は肺から呼気中へ排出される。」

 「体外への排出経路としては、その他に汗中や母乳中などがあるが、体内からの消失経路としての意義は小さい。」

 「ただし、有効成分の母乳中への移行は、乳児に対する副作用の発現という点で、軽視することはできない。」

① 消化管で吸収されてから循環血液中に入るまでの間に起こる代謝

 「経口投与後、消化管で吸収された有効成分は、消化管の毛細血管から血液中へ移行する。」

 「その血液は全身循環に入る前に門脈という血管を経由して肝臓を通過するため、吸収された有効成分は、まず肝臓に存在する酵素の働きにより代謝を受けることになる。」

 「したがって、全身循環に移行する有効成分の量は、消化管で吸収された量よりも、肝臓で代謝を受けた分だけ少なくなる(これを肝初回通過効果 (first-pass effect) という)。」

 「肝機能が低下した人では医薬品を代謝する能力が低いため、正常な人に比べて全身循環に到達する有効成分の量がより多くなり、効き目が過剰に現れたり、副作用を生じやすくなったりする。」

 「なお、薬物代謝酵素の遺伝子型には個人差がある。(※1)」

② 循環血液中に移行した有効成分の代謝と排泄

 「循環血液中に移行した有効成分は、主として肝細胞の薬物代謝酵素によって代謝を受ける。」

 「多くの有効成分は血液中で血漿タンパク質と結合して複合体を形成しており(※2)、複合体を形成している有効成分の分子には薬物代謝酵素の作用で代謝されず、またトランスポーター(※3)によって輸送されることもない。」

 「したがって、代謝や分布が制限されるため、血中濃度の低下は徐々に起こる。」

 「循環血液中に存在する有効成分の多くは、未変化体又は代謝物の形で腎臓から尿中に排泄される。」

 「従って腎機能が低下した人では、正常の人よりも有効成分の尿中への排泄が遅れ、血中濃度が下がりにくい。そのため、医薬品の効き目が過剰に現れたり、副作用を生じやすくなったりする。」

 「また、排泄の過程においても血漿タンパク質との複合体形成は重要な意味を持つ。」

 「複合体は腎臓で濾過されないため、有効成分が長く循環血液中に留まることとなり、作用が持続する原因となる。」

注記‐※1

 「小腸などの消化管粘膜や腎臓にも、代謝活性があることが明らかにされている。」

注記‐※2

 「血漿タンパク質との結合は速やかかつ可逆的で、一つ一つの分子はそれぞれ結合と解離を繰り返している。」

注記‐※3

 「細胞膜の脂質二重層を貫き、埋め込まれて存在する膜貫通タンパク質で、細胞膜の外側から内側へ極性物質、イオンを選択的に運ぶ」

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