登録販売者 第2章:人体

第2節:薬が働く仕組み

第1項:薬の生体内運命

1)薬の生体内運命(a)有効成分の吸収

 「(a)有効成分の吸収

 「全身作用を目的とする医薬品では、その有効成分が消化管等から吸収されて、循環血液中に移行することが不可欠である。」

 「なお、循環血液中に移行せずに薬効を発揮する医薬品であっても、その成分が体内から消失する過程では、吸収されて循環血液中に移行する場合がある。」

 「局所作用を目的とする医薬品の場合は、目的とする局所の組織に有効成分が浸透して作用するものが多い。」

① 消化管吸収

 「内服薬のほとんどは、その有効成分が消化管から吸収されて循環血液中に移行し、全身作用を現す。」

 「錠剤、カプセル剤等の固形剤の場合、消化管で吸収される前に、錠剤等が消化管内で崩壊して、有効成分が溶け出さなければならないが、腸溶性製剤のような特殊なものを除き、胃で有効成分が溶出するものが大部分である。」

 「内服薬の中には、服用後の作用を持続させるため、有効成分がゆっくりと溶出するように作られているもの(徐放性製剤)もある。」

 「有効成分は主に小腸で吸収される。」

 「一般に、消化管からの吸収は、濃度の高い方から低い方へ受動的に拡散していく現象である。」

 「有効成分の吸収量や吸収速度は、消化管内容物や他の医薬品の作用によって影響を受ける。

 また、有効成分によっては消化管の粘膜に障害を起こすものもあるため、食事の時間と服用時期との関係が、各医薬品の用法に定められている。」

 「全身作用を目的としない内服薬は、本来、有効成分が消化管から吸収されることによって薬効を発揮するわけではなく、有効成分はそのまま糞便中に排泄されることとなるが、中には消化管内を通過する間に結果的に吸収されてしまうものがある。」

 「その場合、循環血液中に移行した有効成分によって、好ましくない作用(副作用)を生じることがある。」

② 内服以外の用法における粘膜からの吸収

 「内服以外の用法で使用される医薬品には、適用部位から有効成分を吸収させて、全身作用を発揮させることを目的とするものがある。」

 「坐剤はその代表的な例である。」

 「肛門から医薬品を挿入することにより、直腸内で溶解させ、薄い直腸内壁の粘膜から有効成分を吸収させるものである。」

 「直腸の粘膜下には静脈が豊富に分布して通っており、有効成分は容易に循環血液中に入るため、内服の場合よりも全身作用が速やかに現れる。」

 「また、口に含むため内服と混同されやすいが、抗狭心症薬のニトログリセリン(舌下錠、スプレー)や禁煙補助薬のニコチン(咀嚼剤)のように、有効成分が口腔粘膜から吸収されて全身作用を現すものもある。」

 「これらの部位を通っている静脈血は肝臓を経由せずに心臓に至るため、吸収されて循環血液中に入った成分は、初めに肝臓で代謝を受けることなく全身に分布)する。」

 「ただ、医薬品によっては、適用部位の粘膜に刺激等の局所的な副作用を生じることがある。」

 「したがって、そのような副作用を回避するため、また、その有効成分の急激な吸収による全身性の副作用を回避するため、粘膜に障害があるときは使用を避けるべきである。」

 「鼻腔の粘膜に医薬品を適用する場合も、その成分は循環血液中に入るが、一般用医薬品には全身作用を目的とした点鼻薬はなく、いずれの医薬品も、鼻腔粘膜への局所作用を目的として用いられている。」

 「しかし、鼻腔粘膜の下には毛細血管が豊富なため、点鼻薬の成分は循環血液中に移行しやすく、また、坐剤等の場合と同様に、初めに肝臓で代謝を受けることなく全身に分布するため、全身性の副作用を生じることがある※1)。」

 「眼の粘膜に適用する点眼薬は、鼻涙管を通って鼻粘膜から吸収されることがある。」

 「従って、眼以外の部位に到達して副作用を起こすことがあるため、場合によっては点眼する際には目頭の鼻涙管の部分を押さえ、有効成分が鼻に流れるのを防ぐ必要がある。」

 「咽頭の粘膜に適用する含嗽薬(うがい薬)等の場合は、その多くが唾液や粘液によって食道へ流れてしまうため、咽頭粘膜からの吸収が原因で全身的な副作用が起こることは少ない。」

 「ただし、アレルギー反応は微量の抗原でも生じるため、点眼薬や含嗽薬(うがい薬)等でもショック(アナフィラキシー)等のアレルギー性副作用を生じることがある。」

③ 皮膚吸収

 「皮膚に適用する医薬品(塗り薬、貼り薬等)は、適用部位に対する局所的な効果を目的とするものがほとんどである。」

 「殺菌消毒薬等のように、有効成分が皮膚の表面で作用するものもあるが、有効成分が皮膚から浸透して体内の組織で作用する医薬品の場合は、浸透する量は皮膚の状態(※2)、傷の有無やその程度などによって影響を受ける。」

 「通常は、皮膚表面から循環血液中へ移行する量は比較的少ないが、粘膜吸収の場合と同様に、血液中に移行した有効成分は、肝臓で代謝を受ける前に血流に乗って全身に分布するため、」

 「適用部位の面積(使用量)や使用回数、その頻度などによっては、全身作用が現れることがある。また、アレルギー性の副作用は、適用部位以外にも現れることがある。」

注記‐※1

 「坐剤であっても、直腸上部から有効成分が吸収されると、肝臓で代謝を受け、全身へ分布する有効成分の量が少なくなってしまう」

注記‐※2

 「加齢等により皮膚のみずみずしさが低下すると、有効成分が浸潤・拡散しにくくなる。」

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