一般用医薬品は、一般の生活者がその選択や使用を判断する主体であり、生活者が自らの健康上の問題等について一般用医薬品を利用して改善を図ろうとすること、すなわち生活者のセルフメディケーションに対して、
登録販売者は、第二類医薬品及び第三類医薬品の販売、情報提供等を担う観点から、支援していくという姿勢で臨むことが基本となる。
医薬品の適正な使用のため必要な情報は、基本的に添付文書や製品表示に記載されているが、それらの記載は一般的・網羅的な内容となっているため、
個々の購入者や使用者にとって、どの記載内容が当てはまり、どの注意書きに特に留意すべきなのか等について適切に理解することは必ずしも容易でなく、十分に目を通さずに医薬品が使用されるおそれもある。
また、購入者等があらかじめ購入する医薬品を決めていることも多いが、使う人の体質や症状等にあった製品を事前に調べて選択しているのではなく、宣伝広告や販売価格等に基づいて漠然と選択していることも少なくない。
医薬品の販売に従事する専門家においては、購入者等が、自分自身や家族の健康に対する責任感を持ち、適切な医薬品を選択して、適正に使用するよう、働きかけていくことが重要である。
専門家からの情報提供は、単に専門用語を分かりやすい平易な表現で説明するだけでなく、説明した内容が購入者等にどう理解され、行動に反映されているか、などの実情を把握しながら行うことにより、その実効性が高まるものである。
購入者等が適切な医薬品を選択し、実際にその医薬品を使用する人が必要な注意を払って適正に使用していくためには、医薬品の販売に従事する専門家が、可能な限り、購入者等の個々の状況の把握に努めることが重要となる。
一般用医薬品の場合、必ずしも情報提供を受けた当人が医薬品を使用するとは限らないことを踏まえ、販売時のコミュニケーションを考える必要がある。
医薬品の販売等に従事する専門家が購入者等から確認しておきたい基本的なポイントとしては、次のような事項が挙げられる。
① 何のためにその医薬品を購入しようとしているか(購入者等のニーズ、購入の動機)
② その医薬品を使用するのは情報提供を受けている当人か、又はその家族等が想定されるか
③ その医薬品を使用する人として、小児や高齢者、妊婦等が想定されるか
④ その医薬品を使用する人が医療機関で治療を受けていないか
⑤ その医薬品を使用する人が過去にアレルギーや医薬品による副作用等の経験があるか
⑥ その医薬品を使用する人が相互作用や飲み合わせで問題を生じるおそれのある他の医薬品の使用や食品の摂取をしていないか
なお、第一類医薬品を販売する場合は、③~⑤の事項を販売する薬剤師が確認しなければならず、
第二類医薬品を販売する場合は、③~⑤の事項を販売する薬剤師又は登録販売者が確認するよう努めなければならない。
さらに、一般用医薬品は、すぐに使用する必要に迫られて購入されるとは限らず、家庭における常備薬として購入されることも多いことから、その販売等に従事する専門家においては、以下の点に関して把握に努めることが望ましい。
⑦ その医薬品がすぐに使用される状況にあるか(※1)(その医薬品によって対処しようとする症状等が現にあるか)
⑧ 症状等がある場合、それはいつ頃からか、その原因や患部等の特定はなされているか
こうした購入者側の状況を把握するには、医薬品の販売等に従事する専門家から購入者等に尋ねることが少なくないが、会話しやすい雰囲気づくりに努め、購入者等が健康への高い関心を有する生活者として参加意識を持って、医薬品を使用する状況等について自らの意志で伝えてもらえるよう促していくことが重要である。
しかし、購入者自身、何を期待して医薬品を購入するのか漠然としている場合もあり、また、購入者側に情報提供を受けようとする意識が乏しく、コミュニケーションが成立しがたい場合もある。
医薬品の販売等に従事する専門家は、そうした場合であっても、購入者側から医薬品の使用状況に係る情報をできる限り引き出し、可能な情報提供を行っていくためのコミュニケーション技術を身につけるべきである。
例えば、情報提供を受ける購入者等が医薬品を使用する本人で、かつ、現に症状等がある場合には、言葉によるコミュニケーションから得られる情報のほか、その人の状態や様子全般から得られる情報も、状況把握につながる重要な手がかりとなる。
また、購入者等が医薬品を使用する状況は随時変化する可能性があるため、販売数量は一時期に使用する必要量とする等、販売時のコミュニケーションの機会が継続的に確保されるよう配慮することも重要である。
(※1)
「すぐに医薬品を使用する状況にない場合には、購入者等に対して、実際に使用する際に、販売時になされた情報提供の内容を思い起こしながら、改めて添付文書等に目を通すよう促すことが重要である。」
「販売時のコミュニケーション」は、以上で「おしまい」です。お疲れさまでした。
「薬害の歴史」に続きます。
本項のコメント入りは…、
…です。
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