大学生向けの資格ガイド。大学生なら、司法試験や公認会計士といった『大型資格』をまずは考える。大学生時代の取得が最も効率が良い。税理士等の独立開業系資格はよく考えてから。教員試験、司書、学芸員なども視野に。宅建、簿記は鉄板。通関士は英語と相性がよい。最後にぜんぶをひっくり返す。
まず、憶えておくべきは、「資格に、プラチナなし」です。
市販の履歴書を眺めてみてください。「資格・免許」欄なんて、全体の『6分の1』くらいしかありません。
言うなれば、「人」を「現す」のに、資格・免許は、『よくて15~16%くらいの効能』しかない、といった次第です。
言うほど、資格は物を言いません。法的需要の高い必置資格(たとえば、電験3種)や、医師・薬剤師なら別ですが、「資格なんて、よくて15%」と割り切ってください。
参考:必置資格とは?
大学生で「資格」を考える場合、まず、司法試験や公認会計士など、『大型資格』を考えてみることを勧めます。
というのも、『大型資格』の勉強時間が確保できて、“記憶力が残っている”のは、大学生のときだからです。そして、最も“報われやすい”のが「大学生」だからです。
反対に言うと、多くの資格は、大学を卒業してからでも取れるので、わざわざ「大学生」のときに取らなくてもよい、といった寸法です。
大型資格は「リスク」が大きく、尻込みする気持ちもわかります。
しかし、「リスク」を言うなら、「大学生時代」の試験勉強が最もリスクが少ないのです。
多くの勉強時間が必要な『大型資格』は、忙しい社会人となると時間の確保が困難になるうえ、切実な理由として、社会人で取っても“厳しい雇用状況”にあります。
一口で言うと、「ライバルは、現役入学・在学合格・四年卒業のぴちぴち22歳」なのです。
三十路前おっさん・おばさんになって、“運よく”大型資格が取れたとして、さて、「求人側」は、先の22歳の活きのいい大学生とあなたと、どちらを雇うでしょうか?
言うまでもなく、「若い方でしょ」という塩梅です。
たとえば、29歳で司法試験や公認会計士を取ったとしても、よほどに頭が切れるとか、上場企業の内部監査をしていたとか、中国の会社法に精通しているとか、シンガポールの税制に詳しいとか、株式上場業務経験あるといった、何らかの+αがないと、“食いついてくれない”のです。
有資格者が少ない時代なら、多少、薹が立っても職に困らなかったのですが、今では「だぶつき」が顕著であり、よほどの人脈があるとか、人柄がよくない限りは、「卒業後の資格取得は、苦戦する=取得リスクは高い」と考えておくべきです。
反対に言うと、大学時取得なら、資格さえあれば、全くの「未経験」でも採用してくれるわけで、「取った後のリスクが、格段に少ない」のであります。
こんな次第で、「大型資格」は大学生のときくらいという次第で、まずは、「大型資格」の当否を考えるのは、全く損ではありません。
人生の1つの岐路(選択)です。
独立開業系の国家資格とは、たとえば、周りでも挑戦している人が多いでしょうが、「司法書士」、「税理士」、「社会保険労務士」、「行政書士」、「中小企業診断士」といった資格です。
一口で言うと、「独立開業系の国家資格はそう評価されない」と考えておくのが無難です。
というのも、一般企業では、業務に“直接”関係する資格以外は、「あまり評価しない」からです。
一般の企業は、そう頻繁に不動産の登記をしないので、社内で「司法書士」を抱える利点がありません。税務書類の提出だって、ベテランの経理がいるので、「税理士」も要りません。社会保険事務も、総務の仕事です。
確かに、先の難関資格を取れれば、取得者の「能力評価」になりますが、言うなれば、「単にそれだけ」です。
また、独立系国家資格は、実務経験があって何ぼのものなので、単なる「有資格」は、相手にされません。
この先、法改正があって、税理士なり社労士の有資格者を雇っていれば、税金や社会保険料の割引きがあるなど、確定的な「実利」がない限りは、実社会で高く評価されることはないでしょう。
独立開業系の資格を取って、就職や転職で「功」を奏すのは、それぞれの士業事務所や資格法人くらいです。とはいえ、こうした親和性がある事業所でも、「経験の壁」は大きく、「実務経験あり・無資格」の方が、「未経験・有資格」よりも採用される“きらい”があります。
独立開業系国家資格は、まさに、「独立・開業」するためのものなので、就職や転職において、過信しない方がいいでしょう。
確かな人生設計に基づいて、時間のある今のうちに取る!というような、韓信なみの深謀遠慮があるのならよいのですが、「就職活動」目当てはよした方が賢明です。
大学時代では、就職活動のために、一応は英語を勉強しておく、という人も多いかと思います。
しかし、「英語バカ」は、どこでも嫌われます。
「英語バカ」の行き着く先は、「語学業界」です。当該業界に勤めたいなら、英語だけ勉強すればいいでしょうが、そうじゃないなら、英語以外の、専門なり見識なりを養う方が賢明です。
結論から言うと、「英語」が最も評価されるのは、「就職活動」のときくらいです。
実社会に出れば、よほどに「英語」が必要となる業種・業界以外では、“ああ、そうね”くらいの扱いであり、言うなれば、「履歴書の飾り」にしかなりません。
「ハローワーク・インターネット検索」で、求人票の内容チェックしてみてください。
検索の際に入力する資格コードは、「TOEIC730点~は、3322」で「TOEIC600点~は、3323」、「TOEIC470点~は、3324」です。
ついでに、英検のは、「実用英語検定1級が、3307」で、「実用英語検定準1級は、3308」で、「実用英語検定2級は、3309」です。
求人票を見ればお分かりでしょうが、言うほど、高賃金ではありません。そして、「英語が必要となる求人」は、語学力以上のものが求められている、たとえば、ある特定分野の語彙・スキル、知識や経験が求められているのが分かるかと思います。
単なる「英語力」が評価されるのは、先に述べたように、「就職活動」のときだけで、それ以降は、「点数」以上のものが必要となる、ってな次第です。ゆえに、過信が危険なのです。
結論から言うと、中途半端な英語力は、実社会で評価されません。
もっと言えば、英語の資格は、人生の保証や保険になりません。。
将来は外交官や外資系、商社などに勤めたいなどの、強い動機・理由があるのなら、徹底した英語の勉強が必要ですが、“とりあえず”なら、『英語の勉強』ばかりに慢心するのはやめましょう。リスクが大きすぎます。
個人的には、たとえば、TOEIC600点強の“世に言うこんなもんでいいじゃない”レベルに到達したら、たとえば、ソローとかディケンズとかの古典に挑戦したり、小説の原書を手にしてみたり、興味のある業界・企業のアニュアルレポートを読み漁ったりするほうが、よほどに就職活動等で「力」となるはずです。それが「個性」だからです。
先に述べたように、「プラチナ資格はない」のです。「語学系資格」も例外ではなく、汎用性は、実質「低い」のです。
ハロワの求人を見ても、「TOEIC730点~」と「TOEIC600点~」の求人数・求人内容に、極端な差はありません。実社会一般では、英語力などその程度のものなのです。好きだから勉強するのは結構ですが、評価は度外視しておかないと、内外の評価差に苦しむことになります。
参考:ハローワーク求人数データ
先も言ったように、一般企業では、業務に関係する資格以外は、評価されません。
ですから、履歴書に、エントリーシートに、自己紹介書に、どんだけ資格をつらつら書いても、単なる「資格の人」になるだけです。
逆に、資格を書きすぎると、「突っ込む対象を与える」という、致命的な失策になりかねません。
「なんで取ったの?」→「求人が多かったんで」→「あーそうですか」で、質問も終わりで、面接も終わりです。面接官の関心は、次の人の書類に行っています。
言うなれば、面接官の「どうしてこの資格を取ったの?」という質問に対し、「説得力と話題に富んだもの」を「自分の言葉」で提供できない限り、“資格欄に書いちゃダメ”という塩梅です。
また、面接官や試験官の「嫉妬」もあるので、資格を「武器」にするには、熟慮が必要です。
一番ダメなのは「書いただけ」で、それは単なる「墓穴を掘った」だけでしかなく、面接へ行く時間と交通費の無駄です。
こうした次第なので、書く資格は、最高「5つ」までに留めて置くのが賢明です。
まあ、資格のうち1つは「車の免許」なので、実質「4つ」までです。
大学生の「大型資格」以外での資格事情は、「普通免許(車)」は必須、「簿記系資格」で教養、「英語」は取り合えず、「宅建」や「登録販売者」、「通関士」などの必置資格狙いといった塩梅です。
先述したように、「プラチナ資格はない」ので、資格を持っていても、いうほど就職活動には貢献しません。
採用担当者は、あなたの前に何百もの有資格者を見ているでしょうし、大きな会社なら、有資格者が何百何十といます。
ですから、大学生時代は、「資格」は、知識・教養を得る手段と考えて、深追いしないのが賢明です。
以下、大学生が「資格を取る過程で勉強になる」、または、「取っておいても損のない」ものは、以下の如しです。
まず、車の免許(中型免許。世に言う普通免許)は取っておくことです。ATでもMTでも最近は大差がないので、好きな方でいいでしょう。
普通免許は、会計事務所から介護事業者まで、ほとんどあらゆる業界で求められる資格で、全資格中、No.1の汎用性です。
30~40歳となると格段に反射神経が鈍くなるし、自動車学校の通学に時間が取られるので、大学生時代に取るのがベストです。
教養として、「簿記」はかなり有力です。
会社人として、会社の数字がわからないと、結構、恥をかきます。
また、会計・経理の知識があると、いろいろなおいしい話(儲かる話あるんだけど~的なお誘い)に、“数字的にありえない”とか“納税とかどうしてんの?”的に、格段に騙され難くなります。
経理・財務知識が得られる資格は…、
「簿記2級」
「簿記3級」
「建設業経理士1級」の「財務諸表」「財務分析」
…があります。
「簿記3級」は難易度も比較的低く、時間もお金もかからないし、ホント、基礎の基礎なので、「簿記3級」から着手するのが定石です。
「簿記2級」は年々難化していますが、連結会計やキャッシュフロー会計という、必須知識の勉強ができます。
しかし、「脳の組体操」にしかならない、工業簿記・原価計算があるので、悩むところです。
工業簿記・原価計算は、IT化し尽くされており、業務は数字の入力だけになっています。んなもんで、即、役立つものではなくなっています。一口で言うと、「無駄」です。
最後に、「建設業経理士1級」の「財務諸表」「財務分析」ですが、試験内容が実に基本的なことなので、勉強しやすいです。
犬も食わない会計本を読むのに比べたら、建設業経理士1級の試験勉強で接する方が、圧倒的に多くのことが身に付くでしょう。
参考:簿記3級の独学
参考:簿記2級の独学
非法学部の人は、「宅建:独学資格ガイド」でも述べていますが、「宅建(宅地建物取引士)」を、積極的に狙うと良いでしょう。
法律の基本的な素養が身に付くからで、宅建が取れたら3流私大の法学部卒くらいになります。
若いうちに、「民法」の基礎を押さえておくと、「お金のトラブル」を避けることができます。おいしい話に引っかからなくなりますし、取引全般に慎重になります。
試験勉強を通して身近な法律の勉強になる宅建は、挑戦する価値のある資格です。
なお、宅建の有資格者は腐るほどいるので、不動産業界以外ではPRになりません。
参考:宅建の独学
先の「宅建」は、事務系の資格です。
で、「登録販売者」は、販売・営業系の資格となっています。
当該登録販売者は、薬を売るために必要な資格なのですが、求人数が多く、また、日本全国で職があるので、かなり、安定感が増す資格となっており、「人生の保証・保険」となる数少ない資格の1つです。
2~4ヶ月あれば取れるので、取得資格の候補にしておくとよいでしょう。
参考:登録販売者の独学
参考:登録販売者 資格ガイド
「通関士」は、知名度は低いけれど、個人的に評価の高い資格です。
「通関士:独学資格ガイド」でも述べていますが、「通関業務」は、数少ない『文系技術職』です。
通関業務は、『超・個別具体的なもの』で、経験がモノを言う業務です。たとえば、機械製品では、ねじ穴が「-」か「+」かで納税額が変る可能性があります。衣類では、シャツのポケットの有無で取扱いが変わるほど、通関業務は、個別的なものとなっています。
このため、「人員の代わりが効かない」ので、実務経験を積めば、末永く勤めることができます。
また、就職や転職に有利な場合が多く、商社・メーカー勤務後、通関業者に転職とか、その逆もありといった体で、“実務経験”があれば、キャリア的にはかなり安定します。
「通関士」が一番効くのは「通関業者」ですが、商社やメーカーでも、「通関士」の有資格者なら、履歴書に目を通してくれるはずです。
なお、通関書類はほぼ英語です。英語を勉強している学生にも、有力な選択肢になるはずです。
参考:通関士の独学
大学生に密接な資格には、「教員免許」と「司書」があります。
これらは、卒業後に取れないこともないが“格段に手間がかかる”のです。在学中での取得候補に見ておくと良いでしょう。
また、「学芸員」の資格も、卒業後だと1手間なので、関係する単位を在学中に取得して、興味があるならとっておくのも「一手」です。
まず、「基本情報技術者」などの情報処理の資格ですが、いうほど、就職や転職に効果がないので、過信は禁物です。
システムエンジニア等の世界は、「資格の有無」以上に、実績と経験の世界です。
情報系資格の取得は、「勉強にはなる」のですが、就職・転職時には、「一瞥されたら御の字」くらいに考えます。
ところで、プログラムの勉強が可能なのは、頭の柔らかい20代前半までです。30近くなると頭が本当に動かなくなります。
文系の人を含めて、“プログラム的なこと”に興味があるなら、大学時代に挑戦するのも「あり」です。
わたしは、20代ぎりぎりのときに、基本情報技術者を取りました。30代では挫折したでしょう。今は、“業界”の人ではありませんが、それでも“プログラム的なこと”を勉強しておいてよかったな、と思っています。
次いで、ワードやエクセルなどのパソコン系の資格ですが、「昔ほどは求められない」ように感じています。
大学生ならほぼワードやエクセルを使うでしょうし、専門の勉強でもPCはまず使うので、「使える?」「ある程度は」と口頭で伝えれば、システムエンジニアなどでない限り、大丈夫です。
しかし、政治学科や哲学科の人のように、「全く触れたことがない」のなら、学校なり講座等で「資格の取得を通じてPCの練習」しておく必要があります。さすがに「触ったことがない」は、まずいです。
まあでも、必要性があって学ぶものだし、操作の分からないところは「ググったらほぼ解決」なので、それほど気に病む必要はないでしょう。
理系の方は、“時間があるなら”、電験3種を考えておくべきです。
電験3種は「必置資格」で、数少ない「物を言う」資格なので、取っておくと、この先、飢えることはないでしょう。
指導教官とそりが合わないなど、「大学に残れそうにない」なら、電験3種で活路を見出しましょう。(まあ、これまでやってきたことを捨てる勇気と覚悟が要りますが。)
先の基本情報技術者等の情報系資格に比べたら、「電験3種」のほうが5倍は仕事があるので、こちらを狙いましょう。
大学生が資格を考えるなら、まず、司法試験や公認会計士といった『大型資格』を考えます。今その「大学生」ときが最もリスクが少ないからです。
その他の資格は、おおむね「宅建」「登録販売者」「簿記」といったところが鉄板で、ハズレがありません。
対して、「司法書士」、「税理士」、「社会保険労務士」、「行政書士」といった独立開業系国家資格は、まさに「開業・独立」するためのもので、いうほどPRになりません。
これらの資格は、持っておいて損はないし、勉強にもなりますが、卒業後でも取れるので、よく考えた方が賢明です。将来的に確固たる『計画』があるなら大丈夫ですが、やることがないからといって飛びつくのは、危険です。
さて、そのほかの資格、とりわけ、知名度の低い資格は、無理して狙う必要はありません。
ぶっちゃけ、就職活動狙いで、知名度の低い資格を取るのは危険です。なぜなら、面接時の突っ込みの備えて、「相応の理由」と「自己PR」とを練り上げないといけないためです。
知名度の低い資格は、まずその資格の「説明」から入るため、無関心の面接官の興味を沸き立たせる高度な話術が必要となり、「資格を取る以上にそっちの方が困難」です。
ほとんどの人間は、資格に興味がありません。資格談義は、互いに不毛な時間となるだけです。
次に、猫も杓子の「FP技能士」ですが、取っても取らなくてもいい資格の筆頭です。
わたしは1級FP技能士の有資格者ですが、“法的需要のない”FP技能士の勉強をするくらいなら、まだ、社労士などの資格を狙うべきと助言しています。
もっというと、FP技能士に時間を割くくらいなら、パンの焼いたり味噌を自作したり、料理のレシピを増やしたり、戦車や大砲の本を読んだりする方が、人生を豊かにすると断言します。
余程に暇なら挑戦するのならいいでしょう。が、部屋を掃除したり、手紙を書いたり、新しい靴下を買いに行く方がいいでしょう。
ホント、役に立たない資格はごまんとありま・・・というより、7割の資格には求人がないので、先も言ったように、資格を色眼鏡で見ないようにしましょう。
繰り返しますが、プラチナ資格などないのです。
最後に、ぶっちゃけ言えば、若いうちは失敗するものだし、若いうちに勉強したことは、今後、どこかで、予想もしないところで芽が出るので、「勉強したことが損」になることはないです。
先に「大型資格も考えてみるべし」といったのも、たとえ、合格できなくても、そこで学んだことは、どこぞで活きるからです。挫折は人を育てます。
十年一昔(じゅうねんひとむかし)で、かつてダメだった短所が、時間が経てば長所に、それも、それで「飯が食える」ほどになっていることがあります。
当然、その反対もあり、自分の「売り」が、10年も経てば通用しなくなって、逆に自分の首を絞めたりします。
福禍はあざなえる縄の如しで、ここが人生の難しいところです。長所で討ち取られ、短所で救われるってなことは、ざらにあるのです。
大学生なんて、まだまだ尻の青いガキです。
人生では、失敗しないことの方がリスクです。どうしようかと迷っているくらいなら、まずやってみることです。「ダメ」なことは、即わかります。「ダメ」だと心底わかっただけ、一歩進んだのです。「ダメ」でもいいのです。かのエジソンなら、「ダメなことが1つ判明したね」と、褒めてくれるはずです。
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