独学資格ガイド

通関士

(つうかんし)

資格評価:3つ星

独学可否:独学合格可能。管理人取得済み。


ガイドさくいん

通関士とは?通関士の仕事文系技術職合格率試験勉強期間勉強について必置資格ではあるが…まとめ資格メモ‐試験日程・費用など


通関士とは?

 通関士とは、求人数が平均で80件前後と、一定の求人数が確保されている資格である。

 求人は、ほぼ通関業者からのものである。稀に貿易事務絡みで、製造業やメーカーからの求人が見られるも、ほぼ通関業に就くと思って間違いない。

 通関士の有資格者には、資格手当が付く。

 5,000円から1万円が相場といわれているが、熟達するとそれ以上の額(20,000円前後)を支払う会社もある。

 また、女性の通関士も多い。

 ハローワーク平均求人数:90人(2018年8月調査)

 当該資格の最新データは、「ハローワーク資格別求人数データ」にあります。

 ところで、ハロワ登録資格の求人数1位~200位は…、

 H30 資格求人数 TOP100

 H30 資格求人数 TOP101-200

 …を、参考ください。


通関士の仕事とは?

 通関士の仕事は、通関手続きの際に提出する申告書を代理作成して、税関長からの許可を得ることである。

 一口で言うと、「通関士は、税関の代わりに仕事をする」資格である。

 かつて輸出入の申告書に関する事務手続きは、“行政機関”である税関が行っていた。

 しかし、空前絶後に貿易量が増え、さらに、通関実務が非常に煩雑になったため、税関だけでは、対応が難しくなった。

 このため、「通関士」という資格制度が新設され、輸出入にまつわる申告書の事務作業を、“民間”の通関業者に委ねるようになった、という次第である。

 もっと言うと、通関書類の最終責任者が通関士であり、この書類には間違いがないと保証する役目が通関士である。

 税関側から言えば、輸出・輸入の申告書の作成を、通関業者の責任の下、通関士に行わせている、といった寸法である。

 ところで、通関士は、通関業の会社に勤める「1従業員」である。

 通関士という文言には、士業の「士」の字がついているが、独立・開業できる資格ではない。つまり、「○山×男 通関士事務所」といった事務所は存在しない、という次第である。

 同じ「士」が付くといえども、通関士と、弁護士や税理士といった士業職とは、別ものである。

 まあ、通関士という資格があれば、通関業の会社を作って“通関業者”として独立・開業できなくはないが、個人の資本で通関業を立ち上げる人は、そういないだろう。


文系技術職

 端的に言うと、通関実務は、煩雑の極みである。

 輸出入に際しては、申告書のみならず、インボイスや原産地証明書等々の多岐にわたる添付書類が必要となる。

 とりわけ、毒物や保護動物の輸出入では、それぞれ固有の書類や許可が必要となるので、関係法令に精通しておかないとスムーズな通関ができなくなる。

 関税の処理にしても、同様に煩雑である。

 たとえば、衣類はポケットのあるなしで関税の額は変わるし、縦糸で編んだか横糸で編んだか、染めているかいないかでも税額は変わる。

 イカ等の海産物もそうである。冷凍か生ものか干物かで税額は変わる。

 機械部品や半導体などとなれば、技術的・専門的な基準で税額が変わってくるので、さらに難解である。

 このように、通関実務は煩雑であり、熟練を要する業務となっている。個々の『物』に応じた通関書類を正確に作成しないと、誤って高い税率を適用したりで、直に顧客の損害となってしまう。

 このため、通関士の仕事は、文系の『技術職』ともいうべき、“代わりが効かない”存在となっている。

 経理の仕事と比べてみる。経理は代わりが効く。製造業の経理が、サービス業の経理職に転職しても、そう支障はないだろう。

 しかし、通関士の通関実務は、ある物のベテランが他の物に手を出したとしても、勝手が違うために、かなり梃子摺ることになる。

 このように、1分野なり1カテゴリの通関実務には高度な熟練と経験を要するため、簡単に代行要員が見つからない。故に、技術者の如く、長くその仕事に就くことができる。


合格率

 合格率は、おおむね10%台を推移している。

 が、試験の傾向が変わって1割を切ることもあるので、油断できない試験となっている。

 また、試験の難易度が高まったためか、年々、受験者数は減少している。

 だからこそ、狙い目である。


試験勉強期間について

 端的に言うと、通関士試験は、「暗記」で合否が決まる。

 試験問題は「憶えていないとどうにもならない」ものが多数で、試験勉強のほとんどの作業は、「憶える」である。

 このため、暗記や記憶が苦手な人は、試験勉強の期間を、半年以上を見ておく方が賢明である。

 なお、一番難しい試験科目は「通関実務」なので、他の科目ができるようになったからといって、絶対に油断してはいけない。

 詳しくは「通関士の独学」まで。


試験勉強について

 通関士試験は、実務色の強い試験である。

 このため、最初は、通関や輸出入に関する専門用語に慣れていないため、苦労することになる。

 が、試験で問われることは、基本的な事柄が多いので、語彙が増えてくる中盤以降は多少楽になる。

 難関の申告書の作成も、最初は戸惑うが(当たり前だが)、何度も過去問を解くなり、問題集を解くなりすれば、作成できるようになる。

 詳しくは「通関士の独学」まで。


必置資格ではあるが…

 通関士の「資格としての価値」は、高くはないが、低くもないというのが正直な感想である。

 確かに、通関士は必置資格であるので、全く無価値なわけではない。

 しかし、である。

 通関士は、たとえば、宅建のように、従業員何人につき1人を置くべし、という設置基準ではないため、そう通関士の有資格者の『数』は要らないのである。

 現在では、単に、通関業者の1事業所ごとに、有資格者を1人以上を置けばよい、ということになっている。

 加えて、通関業自体の有効需要が多くない。通関業者の数が、今後飛躍的に増えるというのは想像し難い。

 通関士ポータルで昨今の通関業の増減状況がグラフ化されているが、「微増」である。

 ちなみに、2000年で通関業者は1,185社、営業所が1,919所、通関士数5,527人となっていた。

 1991年で、通関業者数906社、営業所数1,341人、通関士数4,293人だったので、10年で年平均3%の微増だったことになる。

 こんな次第で、①通関士自体、1事業所に1人いればいいので人数は要らないし、②通関業者もそう増えないしで、通関士は充足しているのが現状である。

 こうした背景があるため、「通関士」の資格は、就職や転職の決め手にはならない。

 そう、資格があるからといって、絶大に有利になるわけではないのである。

 必要なのは、経験である。言うなれば、貿易の全くのド素人の有資格者より、資格はないがメーカー等で貿易事務をしてきた人の方が、就職・転職は有利であろう。

 一口で言うと、『通関士あれば優遇』なだけであり、『通関士必須』ではない。

 と、きつめの口調で述べたが、通関士の求人には、トライアル雇用や未経験可の経験不問採用が結構多い(3~4割)ので、資格だけでも十分に、PRにはなるように思われる。

 加えて、通関業の管理職や幹部候補にとって、通関士資格は“必須の雰囲気”のようなので、取っておいて損はない。


まとめ

 通関士は、Bクラスの資格とした。

 世界的な潮流として、貿易の自由化が加速されている昨今、通関そのものの立ち位置は相対的に小さくなっていくことが予想される。それに従って、通関実務を担う通関士の地位の低下も、ないことではない。

 しかし、国家に主権がある以上は、通関制度自体がなくなることはない。であるから、今後も通関士の役割は存続するように思われる。

 先だって、通関業者と通関士の現状は「微増」と述べたが、言うなれば、「減っていない」ということであり、昨今の激動する社会経済状態において、安定性は高いと言わざるをえない。

 個人的な感想を言うと、通関士は、「事務職」として最上かと思っている。

 先述したように、通関士の仕事は文系技術職であり、そうそう代替が効かないので一般事務職のような人員整理にかかりにくく、また、熟練を要するので長く勤め上げることができ、加えて、『貿易がなくならない』以上、通関そのものが消滅することも考え難いからである。

 事務職として、他の総務職や経理職、営業事務と比較して、格段かつ格別に安定しており、お給料の方も高い。

 もちろんのことだが、一般の事務職に比べると、煩雑で手間のかかる仕事であるので、当然といえば当然である。蛇足だが、英語力も必要である。

 個人的に、通関士は、高く評価している資格である。

 ずっと派遣社員で貿易事務に従事してきた方が、「通関士」を取った途端、勤め先の見る目が変わってビックリし、また、派遣会社に行くと始めて担当者からお茶を出されたという女性の通関士合格エピソードが忘れられない。

 こうした実例からも、通関士は、威力のある資格であるかと思われる。

 しかしながら、老若男女が取得してすぐさま役立つかというと、決してそうではないので、Bクラスとした次第である。

通関士の資格メモ

 通関士に関する、一般的事柄や試験日程・日時、取得に要する費用等を、以下にまとめました。

通関士の一般事項

 通関士は、「国家資格」であり、取得者には一定の評価がある。

 通関士は「必置資格」であり、やや法的需要がある。(参考:必置資格とは?

 通関士は、一般には知られていないが、業界ではメジャーな資格である。

 通関士には、受験資格はない。誰でも受験できる。

通関士の試験日程・日時

 通関士試験は、おおむね「10月の第1日曜日」に行われる。

 受験の申込は、おおむね「7月下旬の月曜日から、8月上旬の月曜日まで」受け付けている。

 2週間ほどしかないので、注意が必要である。

 気付いたら終わっていた!なんてことのないように。

 なお、申し込みは、直に税関で行うが、郵送でもネット(NACCS)でも申し込みは可能である。

 ちなみに、わたしは、大阪南港の税関まで願書を持っていって、海遊館で遊んできた次第である。

 なお、本ページの作成時では、「税関(財務省)」が試験主催ですが、一度は公式を見て、試験情報を確認しておいてください。

通関士のめやす取得費用

 一口で言うと、「2万円前後」かかる。

 適当かつ曖昧な内訳は、以下。

 テキストは、おおむね4,000円前後。

 過去問題集は、おおむね3,500円前後。

 通関実務のテキストが、おおむね3,000円前後。

 通関実務の問題集が、おおむね4,000円前後。

 受験料は、3,000円(例年価格)。

 交通費や切手代などの雑費が2,000円。

 総計で、「2万円前後」となる。

 使用教材の詳細については、「教材レビュー」を参考にしてください。

通関士の勉強時間および難易度

 通関士の勉強時間は、通関実務の難解さから、「6ヶ月」を推奨している。

 わたし自身、通関実務で1回落ちたので、多くの受験生には慎重さを求めたい。

 とはいえ、要領のいい人・記憶力のいい人なら、「2~3ヶ月」で合格できているのも事実である。

 まあ、通関士試験は、科目ごとの難易度に大差があるので、時間の余裕を見ておくのが無難の1字である。

 詳しくは「通関士の独学」まで。

補足コンテンツ/関連リンク

 使用教材は、「教材レビュー」を参考にしてみてください。勉強法とかも併記しています。

 通関士に関するこまごましたことは、ブログにも投稿しています。興味のある方は、「通関士:ブログ記事」をばご参考ください。

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