登録販売者 第2章:人体

第1節:人体の構造と働き

第4項:脳や神経系の働き 全記述

脳や神経系の働き 全記述

 「4 脳や神経系の働き

 「体内の情報伝達の大半を担う組織として、神経細胞が連なった神経系がある。神経細胞の細胞体から伸びる細長い突起(軸索)を神経線維という。」

 「身体の個々の組織は刺激によって反射的に動くことが出来るが、実際の人間の身体は個々の部位が単独で動いているものではなく総合的に制御されており、このような制御する部分を中枢といい、一方、中枢によって制御される部分を末梢と呼ぶ。」

 「中枢は末梢からの刺激を受け取って統合し、それらに反応して興奮を起こし、末梢へ刺激を送り出すことで、末梢での動きを発生させ、人間の身体を制御している。」

 「したがって、神経系もその働きにより、中枢神経系と末梢神経系とに大別される。」

1)中枢神経系

 「中枢神経系は脳と脊髄から構成される。」

 「脳は、頭の上部から下後方部にあり、知覚、運動、記憶、情動、意思決定等の働きを行っている。」

 「脳の下部には、自律神経系、ホルモン分泌等の様々な調節機能を担っている部位(視床下部など)がある。」

 「脳における細胞同士の複雑かつ活発な働きのため、脳において、血液の循環量は心拍出量の約15%、酸素の消費量は全身の約20%、ブドウ糖の消費量は全身の約25%と多い。」

 「脳内には多くの血管が通っているが、脳の血管は末梢に比べて物質の透過に関する選択性が高く、タンパク質などの大分子や小分子でもイオン化した物質は血液中から脳の組織へ移行しにくい。」

 「このように、脳の毛細血管が中枢神経の間質液環境を血液内の組成変動から保護するように働く機能を血液脳関門という。

 「小児では、血液脳関門が未発達であるため、循環血液中に移行した医薬品の成分が脳の組織に達しやすい。」

 「脳は脊髄と、延髄(後頭部と頸部の境目あたりに位置する)でつながっている。」

 「延髄には、心拍数を調節する心臓中枢、呼吸を調節する呼吸中枢等がある。延髄は多くの生体の機能を制御する部位であるが、複雑な機能の場合はさらに上位の脳の働きによって制御されている。」

 「脊髄は脊椎の中にあり、脳と末梢の間で刺激を伝えるほか、末梢からの刺激の一部に対して脳を介さずに刺激を返す場合があり、これを脊髄反射と呼ぶ。」

2)末梢神経系

 「脳や脊髄から体の各部へと伸びている末梢神経系は、その機能に着目して、随意運動、知覚等を担う体性神経系と、消化管の運動や血液の循環等のように生命や身体機能の維持のため無意識に働いている機能を担う自律神経系に分類される。」

 【自律神経系の働き】

 「自律神経系は、交感神経系と副交感神経系からなる。」

 「概ね、交感神経系は体が闘争や恐怖等の緊張状態に対応した態勢をとるように働き、副交感神経系は体が食事や休憩等の安息状態となるように働く。」

 「効果を及ぼす各臓器・器官(効果器)に対して、交感神経系と副交感神経系の二つの神経系が支配している(自律神経系の二重支配)。」

 「通常、交感神経系と副交感神経系は、互いに拮抗して働き、一方が活発になっているときには他方は活動を抑制して、効果器を制御している。」

 「効果器に伸びる自律神経は、節前線維と節後線維からできている。」

 「交感神経と副交感神経は、効果器でそれぞれの神経線維の末端から神経伝達物質と呼ばれる生体物質を放出し、効果器を作動させている。」

 「交感神経の節後線維の末端から放出される神経伝達物質はノルアドレナリンであり、副交感神経の節後線維の末端から放出される神経伝達物質はアセチルコリンである。」

 「ただし、汗腺を支配する交感神経線維の末端では、例外的にアセチルコリンが伝達物質として放出される(※1)。」

 「医薬品の成分が体内で薬効又は副作用をもたらす際も、自律神経系への作用や影響が重要である。効果器に対してアドレナリン様の作用を有する成分をアドレナリン作動成分、アセチルコリン様の作用を有する成分をコリン作動成分という。」

 「それらと逆に、神経伝達物質であるアドレナリンの働きを抑える作用(抗アドレナリン作用)を有する成分を抗アドレナリン成分、アセチルコリンの働きを抑える作用(抗コリン作用)を有する成分を抗コリン成分という。」

 

注記‐※1

 「全身に広く分布するエクリン腺を支配する交感神経線維の末端ではアセチルコリンが神経伝達物質として放出されるが、局所(腋窩等)に分布するアポクリン腺を支配する交感神経線維の末端ではノルアドレナリンが神経伝達物質として放出される。」

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