独学でススメ-読むだけで独学合格できるかもしれない、適当なヒントとTips

管理業務主任者は、教材選択が一番難しい

はじめて法律的な勉強をする人や、はじめて資格の勉強する人への、管理業務主任者の注意点を述べます。

管理業務主任者の独学で、第1に知っておくべきことは、「教材の選択が一番難しい」ということです。

「管理業務主任者には、法律初学者向けの教材が少ない」ことが、まず、挙げられます。

この背景には、『宅建の存在』があります。

管理業務主任者は、試験科目が宅建と被るために、宅建の合格者だとけっこう楽になります。

このため、多数の宅建合格者が受験しています。(わたしも宅建の口です。)

そこそこ知っている人にとって、法律の初歩的なレクチャーなど、邪魔で冗長なだけです。

宅建合格者という、法律的な素養を持った人が多数、管理業務主任者を受けるために、法律の勉強をしたことのない、全くのド素人向けの教材が少なくなってしまうのです。

そして、受験者数という「パイ」の大小が、管理業務主任者の初心者向け教材が少ない傾向に拍手をかけます。

宅建だと、法律初心者向けの教材が、すごく多いのです。

というのも、宅建は年に20万人も受験するため、初心者教材の需要がとても旺盛です。量も裁けてよく売れるので、各社こぞって初心本を出版します。

対して、管理業務主任者は2万人規模の試験です。一定割合の初心者がいるとしても、管理業務主任者の方が圧倒的に「パイ」は少ないために、出版社も初心者向け教材を出すのに二の足を踏む、といった塩梅です。

管理業務主任者の教材には、法律初学者にとっては、キツイのが多々あるので注意してください。

次の注意事項は、「マンション管理士」との合本が多い点です。

マンション管理士と管理業務主任者は、試験科目はよく似ていても、別個の資格です。私鉄とJRくらい違います。

マンション管理士の方がはるかに試験の難易度が高いのに、資格の価値は管理業務主任者の方が高いというヘンテコリンな状況で、当然、試験の傾向もかなり食い違っています。

それなのに、「マンション管理士+管理業務主任者」と銘された、両資格が合わさった教材が売られており、管理業務主任者のみの受験生に要らざる混沌を生んでいます。

管理業務主任者は、マンション管理士の勉強をしなくても、受かります。

もっと言えば、マンション管理士の勉強は、管理業務主任者にとって、余計でムダなことも多く、無用の時間と手間を利用者に強いかねません。

管理業務主任者のみの合格を考えているなら、合本タイプの教材は使ってはいけません。

教材選択を間違えると、独学は超絶に難航します。教材は慎重に、自分に合った物を選んでください。

FP技能士ほど、受験生に大差のある資格もない

FP技能士は、けっこう錯綜した試験です。

FP技能士は、「カンタン」という評価が定説ですが、それはおそらく、宅建などの有資格者の発言だと考えられます。

FP技能士は、受験生の“バックグラウンド”で、勉強量や難易度が“極端に変わる”試験となっていることを、頭の片隅においておきましょう。

具体的に言うと、宅建や管理業務主任者やマンション管理士、社会保険労務士や行政書士、税理士や簿記といった資格を持っていると、FP技能士の試験勉強は、格段に楽に、激烈に勉強時間が少なくなります。ほとんどやらなくていい科目が出てくるためです。

税理士があれば、税金関係はやることがありません。計算問題も屁の河童です。

社労士があると、年金関係の問題は“やる前から”済んでいます。

宅建があると、民法関連(成年後見人など)、相続、不動産にまつわる試験問題は絶大に有利で、あっという間に済みます。

管理業務主任者やマンション管理士があると、区分所有法の問題が朝飯前になります。民法関連もそこそこ取れます。

行政書士は、宅建同様に、相続などの民法関連に有利です。

簿記があると、計算問題に有利です。正確に言うと、簿記の方が計算が複雑なために、簿記の合格者にとっては、FP技能士の計算など、欠伸が出るくらいの“強度”です。

知識・経験も同様です。株式投資の経験があれば、投資関連の問題では、常識的なものばかりとなります。

このような「他資格ホルダー等」には、「過去の遺産」があるのです。だから、FP技能士の試験勉強は、「自分の知らないことを追加する」だけなので、「カンタン」になってしまうのです。

しかし、何にも知らないド素人状態からだと、細々とした知識をゼロから憶えていくという、メンドクサイ作業がさんざんに待っているので、手間も取られて骨も折れ、相応に勉強しなくてはならなくなります。「過去の遺産」がないんですから、それが普通です。

初っ端のスタート地点で、遺産の有無という「大差」のあることをしっかり認識してください。

受験生には大差があり、それぞれがバラバラのスタートを切っています。スタートはぜんぜん違います。ゴール直前の人もいるのです。

ド素人なのに、「1ヶ月で合格したー」なんて情報を鵜呑みにすると、絶対間に合いません。単純に、その人にとっては「カンタン」だったのです。

とりわけ、勉強時間の計算だけは、冷静に計ることを推奨します。「15日間で合格!」なんて広告を見て唖然としました。よほど特殊な人間しか受からんぞ、と。

底の浅い意見に惑わされず、目の前のテキストと過去問題集を消化していってください。

反対に言うと、FP技能士の合格者に、他の資格の保有者が多いのは、“ひたすら受かりやすい”からです。

『業際』という士業の壁-FP技能士の試験勉強が「広く浅く薄く」になる理由

3級でもそうですし、2級でも、そして、1級ですら、FP技能士の試験勉強は、「広く浅く薄く」が原則です。

反対を言えば、「深くやってはいけないし、専門的にやっても仕方ないし、手厚くやっても甲斐がない」という次第です。

「業際」が存在するからです。

FP技能士にできることは、1級2級3級のどの級であろうと、弁護士や税理士や社労士等の士業が絡む事柄については、具体的な手続きは当然のこと、「一般的な説明のみ」しかできないのです。

反対に言うと、個別具体的な、「業際」に関わる話は、有償無償を問わず「アウト」になる塩梅です。

たとえば、税金の相談です。一般的な話はOKです。「確定申告の何たら控除はこれこれこういう内容です」は大丈夫ですが、「○○さんは、今年、災害に遭われたのでその分についてはこういう届出をすると雑損控除…」となるとアウトでしょう。個別具体的な税金相談になるからです。

まだまだあります。たとえば、民法の成年後見人制度です。一般的な説明として、「後見人‐保佐人‐補助人という制度があります」云々はよくても、個別具体的な相談はもとより、戸籍を取り寄せるなどの事務手続きをすると、弁護士法や行政書士法に抵触します。

社会保険についても、注意が必要です。「一般的に、○年○月○日から×年×月×日生まれの人は、64歳から特別支給の老齢厚生年金が受給できます」と言うことはできます。

しかし、「年金定期便を見せてください。○○さんの生年月日からすると、63歳が支給開始ですね。この用紙に記入すれば年金がもらえます」云々、裁定手続きまで踏み込むことをすれば、社労士法に抵触します。

年金相談も、“今のところ”、やかましく言われていませんが、無資格者の年金相談が横行し、年金の無断請求や横領などが社会問題化したら、年金相談も有資格者のみとなって、『業際化』する可能性は大です。(年金系の新資格ができるかもしれない。)

年金相談は、今のところは大丈夫ですが、日本年金機構のコールセンターの求人でも、社労士有資格者が求められていたり、金融機関では、コンプライアンスからか、有資格者を年金の相談員に置いたりしている昨今、有資格者以外が、個人情報が絡んだ個別具体的な年金相談にのるのは、次第にアウトになっていくでしょう。

まとめると、FP技能士の試験勉強は、無資格であれば、深く、専門的に、しっかり勉強しても仕方がないところが“多過ぎる”て、「深くやってもいけないし、専門的にやっても仕方ないし、手厚くやっても甲斐がない」のです。

反対に言うと、出題者側が、深く、専門的に、しっかり勉強させるような問題にしてしまうと、法令違反に抵触しかねないことはもとより、他の士業団体に喧嘩を売っていることになりかねないのです。

極端な言い方ですが、「やっちゃダメ」とさえ釘を刺しておけば、改造銃の作り方を無差別に広めてもよいのか?というと、そうではありません。

「深く、専門的で、手厚い試験勉強をさせる」と、どうしたって、業際を無視して業務を行うFP技能士は出てきます。「知っていることは使いたい」からです。そうなると、『責任』の一端が、主催者に被ってくるのは明白です。

だから、突っ込んだ深くて専門的な出題はなく、たとえば、固定資産税だと、税率や課税標準額の特例の数字くらいを憶えるだけで、実際のこういうケースだとどうなのかとか、どういった手続きを取ればいいのか?などの、具体的な手続きや実務・実際的なことは勉強できず、となります。

「広く浅く薄く」しか、問題を出せないのがFP技能士の実情で、ゆえに、「カンタン」に、そして、「テキストを読んで、過去問を解く」くらいが試験勉強の関の山、専門書や実務書を読む必要はなく、最終的に「羅列されている語句や用語、数字を憶えるだけの、中・高校生の公民の作業」となるのでした。

このあたりの実情をもとに、受験等を考えた方がよいでしょう。