独学でススメ-読むだけで独学合格できるかもしれない、適当なヒントとTips

簿記の独学とは?‐自営業者、フリーランス、中小規模の経営者向け

結論から言うと、自営業者、フリーランス、中小規模の企業経営者が、帳簿のやり方や会計処理といった「簿記的なことを身に付けたい」のなら、「簿記3級」を取るほうが、市販本を買って読むよりも、早い、という次第です。

昔から、簿記本や経理本は、犬も食いません。今風に言うとMRE(※)です。

簿記3級を勉強する前に知っておきたい3つのこと」でも述べていますが、市販本を読んでも今ひとつ、簿記が腑に落ちないのは、「簿記」とは「帳簿記帳」の略であり、当該「帳簿記帳」とは、「水泳」と同じ、動詞だからです。

「水に泳ぐ」のが「水泳」で…。

「帳簿に記帳する」のが「帳“簿記”帳」で、略して「簿記」です。

賢明な皆さんならおわかりでしょうが、言うなれば、経理本を読んで簿記を身に付けようとするのは、要は、「畳の上の水練」で、「泳ぎ方マニュアル」を読んで、一度も水に入らずに、泳げるようになろうとしている、といった次第です。

「簿記」とは動詞であり動作なので、「身体を動かさない限り、身に付かない」のであります。

簿記3級の受験を勧めるのは、自分の「手」と「頭」を使わざるを得ないからです。

やらないと“絶対に”わからない簿記

簿記がわかりにくいのは、簿記とは、「仕訳」という「決められごと」で成立する体系だからです。

当該「仕訳」は、簿記固有・独自の“理屈”であり、「他の知識や経験」を応用したり類推したりできないのです。

ですから、当該ルールに習熟しない限り、理解ができない、といった塩梅です。役がわからないとマージャンができないのといっしょです。

わたしも最初は経理的なことはチンプンカンプンでしたが、「仕訳」の切り方を憶えるにつれて、ようやく経理的なことがわかってきたという塩梅です。

だからこそ、「実際に勉強するしかない」という次第です。

しかし、です。

「やらないとわからない」簿記ですが、「やれば誰でもわかる」のも簿記なのです。

当該「仕訳」の理屈は「4つ(資産・負債・資本・費用収益)」しかないので、少し辛抱すれば、誰でも習得できます。だから、毎年、何万人も合格しているわけです。

言うなれば、「簿記」の「仕訳」の理屈は、最初はとっつきにくいけれども、やりさえすれば数万人がわかる程度の理屈、ってな寸法です。

「簿記3級の勉強をしたほうが早い」といったのも、本を読んで自得するより、試験勉強を通じて仕訳のトレーニングを積んだほうが“時間的に早い”からです。

簿記3級を甘く見てはいけない

ところで、合格率だけで、「質」を判断してはいけません。

確かに、簿記3級の合格率は「40~50%」と高合格率で、難関試験ではありません。

しかし、昨今の簿記3級は、試験方針が「実務重視路線」に切り替わっており、かつてのそれとは、一線を画しているほど、難易度は上がっています。

かつては、「三日で取れる」と揶揄されていた「3級」ですが、今では、仕訳を切って、電卓を叩いて、真剣に過去問に臨まないない限り、“絶対に受からない試験”に変貌しています。

だからこそ、「いい勉強」になるという次第で、毎日、仕訳を切って電卓を叩いていくうちに、「帳簿」の意味や付け方が、脳に染みこんでいく、という次第です。

なあんだ、いまさら簿記3級かよ、と思った方。

実際の試験勉強では、ホント、予想以上に勉強させられます。

参考:独学の簿記3級:商業簿記

3級の要時間と要お金

「簿記3級」に要する時間は「1~3ヶ月」くらいです。

相性が悪くても、「6ヶ月」もあれば、合格できます。

かかる費用は、テキスト・問題集・過去問と、受験料、そして、本試験日の交通費と弁当代で、総計「1万円」といったところです。

参考:簿記3級の教材レビュー

結構、お金と時間を食うな、とお考えの方。そうではありません。

これだけのコストと時間の投下で、今後、ずっと使える知識が身に付くならば、時間の費用対効果は、圧倒的に高いです。

簿記3級があれば、経理的なことへの苦手意識はかなり減ります。年度末にレシートと領収書と請求書の山と格闘することも、少なくなります。税務書類の前で気を失わなくなります。

これからもずっと「経理的なことが苦手」のままでいるか、今、ここで踏ん切りをつけるか、です。

簿記2級は要らない

「製造業」を営んでいるのなら、「簿記2級」はありですが、そうでないなら、無理して簿記2級を取る必要はありません。

簿記2級は、「商業簿記」と「工業簿記・原価計算」の2科目で構成されています。

製造業等なら、後者の「工業簿記・原価計算」は資するものもありますが、そうでない人・業種なら、「工業簿記・原価計算」は単なる「頭の組体操」にしかならないので、パスするのが賢明です。

損益分岐点分析は役に立つなどと、苦しい言い訳をする人もいますが、なら、それだけ、やればいいだけです。

いい大人が意味の薄いことに、資源を割いてはいけません。

「工業簿記・原価計算」のテキストを開くくらいなら、得意先を回るか、人脈・つてを暖めたり、配偶者のメンテナンスをする方がいいでしょう。

「小規模」の事業者なら、「簿記3級」が最も費用対効果が高いです。

反対に言うと、「簿記3級」の知識では、間に合わなくなってきたら、2級取得を考えるよりも、いっそのこと顧問税理士を探し始めるのが良いでしょう。

個人的には、財政状態や経営成績をつかむためにも、「日々」「週々」「月々」の記帳を行い、んで、とりわけメンドクサイ税務申告だけは、プロに頼むのが、費用的にも経営的にもいいかなと思います。

通期の記帳は指導を受けるか、または、県や市や納税協会で、無料税務相談があるので、そのときに、「どう処理すればいいか?」とか「これでいいのか?」等を、尋ねるのが賢明です。

こういう次第で、自営業者、フリーランス、中小規模の経営者は、経営的にも勉強的にも、無理して2級を取らなくてもよい、ってな塩梅です。

まとめ

商売をやっていると、発作的に「経理的な知識が欲しい」と思うことがあるはずです。

波に乗った繁忙期なら無理して3級を勉強する必要はないですが、幸か不幸か、ド暇なときがやってくるはずです。

こういうときに、「簿記3級の独学」に挑戦してみてください。3級が取れたら、今の100倍は経理本や財務本が読めるし、事業や会社の数字が見えてくるようになります。

簿記は『耳学問』が効かんです。試験勉強は、下手なセミナーより、はるかに有意義です。

なお、先の「MRE」とは、Meal, Ready-to-Eatの略ですが、あまりのまずさに…、

Meals, Rarely Edible (とても食べられたものじゃない食べ物)、

Meals Rejected by the Enemy (敵から拒否された食べ物)、

Meals Rejected by Everyone (誰もが拒否した食べ物)、

Materials Resembling Edibles (食べ物に似た何か)、

…等々、まさに「犬も食わない」の暗喩であります。

参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/MRE

簿記2級の歴史的背景‐エア合格者

ご存知のように、簿記2級の試験方針は、「実務重視」路線になっています。

こうなった背景を、以下に述べるので、暇な時間にお目汚しください。

さて、かつての簿記2級試験は、「パターン学習で、でるところだけやっときゃ、すぐ受かった試験」でした。

一発合格者はもとより、2~3週間で受かる人はごろごろしていました。

というのも、たとえば、仕訳問題では、“ふつうの、建物の減価償却”が出ていましたし、総合問題では、毎度毎度、ふつうの貸倒引当金が問われて“配点”されていたのです。

しかし、こういう試験を続けたため、「試験に出ないところは、全く知らない合格者=エア合格者」を量産してしまったのです。

たとえば、今では、絶対に手の抜けない論点の「帳簿組織」ですが、かつては、“誰も勉強する人はいなかった”のです。

ですから、簿記2級に受かっても「総勘定元帳??」とか「試算表…??」となる『エア合格者』が多々でてきたのでした。

このため、簿記2級を持っているのに、実力的に全く使えないという次第となり、こういう『エア合格者』を何とかしろという『お叱り』が実業界・産業界からあって、試験方針が現在の「実務重視路線」となった次第です。

エア合格者の増加は就職難

ぶっちゃけ言うと、昔は、簿記の資格なんて、犬も食いませんでした。

「簿記」は、今や人気資格の一角で、本屋では1棚まるまる簿記で埋まっていますが、今と昔では隔世の感があります。

エア合格者がたむろし始めた背景は、一口で言えば、「就職難」で、「簿記」の資格さえあれば職に就けると、人が殺到したのが要因です。

そもそも、「簿記」なんて、商業高校とかビジネス系専門学校とか商学部とか、経理の実職の人しか受けなかったのです。

言うなれば、往時は、受験生の多くは、「試験外」で実務を勉強できる環境・カリキュラムがあったわけで、だからこそ、「簿記試験」は「定番ばかり」で構成しても、問題はなかったという寸法です。

しかし、先も言ったように、「資格があれば職がある」で、「簿記」と関係のない人が簿記試験に殺到したため、試験外のことはよく知らない「エア合格者」が増え、こいつはまずいという塩梅で「実務重視」路線に切り替わった、という次第です。

ひとくち試験方針

試験勉強等は「簿記2級の独学」に述べていますが、読むのが面倒な人は…、

捨て問は厳禁。満遍なく勉強しておく。苦手論点は作らない。」は憶えておきましょう。

出題者は、「受験生の手薄なところを突いてくる」からです。

出題者は、試験のたびに、「受験生が苦手とするところや、理解の薄いところ」を調べ上げ、以降の試験に採用しているように見受けられます。

あなたが、難しいから・面倒だからと「捨て問」にしたところは、得てして、多くの他の受験生もそうです。故に、出題者に狙い打ちされてドンピシャ出題されて、轟撃沈してしまうといった次第です。

100回練習しても「ダメ」なら「捨て問」も仕方ありませんが、そうでないなら、「苦手論点」すら消化して、「捨て問ゼロ」で試験に臨むのがセオリーです。

簿記2級は、かつては、カンタンな試験でした。しかし、今は、全くそうではなく、別個の試験です。

古い合格者の言うことを鵜呑みにせず、しっかり勉強してください。

簿記2級の救済試験と一発合格について

試験方針が「実務重視」に切り替わったため、予断を許さない「簿記2級」ですが、基本的には、「あきらめなければ受かる」といった次第です。

簿記2級は、過去のデータからすると、ときおり「40~50%」もの高合格率の試験が行われています。

直近では、「第136回(H26.2.23)」が40%超の合格率でした。

参考:合格率と挫折率

わたしは、これら高合格率の試験を、たまりに溜まった不合格者を一掃する、「救済」だと考えています。

簿記2級は、言ってしまえば、検定試験であり、取得したからといって何かしらの法的特権が付与されるものではありません。

言ってしまえば、どれだけライセンスを発行しようが、社会経済上、そう支障はないってな次第で、ゆえに、“どんっ”と合格者を輩出する試験が設けられているように思います。

こうした「救済試験」が、簿記試験では、行われる可能性が高いです。

言うなれば、試験に落ちても、腐らず勉強していれば、救済試験で「合格だけはできる」という塩梅です。

ちなみにわたしも、救済試験で受かった口で、わたしが合格したときは40%強の合格率でした。

高合格率は期待しない

さて、「救済試験」ですが、『昔のように、4割~5割が受かる救済試験』は、今後、まずないでしょう。

最近は合格率自体が大きく下がり、「10%台」が珍しくなく、「25%」もあれば、「高い方」となっています。

んなもんで、救済試験があっても、「25~30%台」の合格率が関の山かと思います。

先に述べたように、簿記の試験方針が「実務重視」である以上、ある程度の素養のない受験生は、容赦なく落とされます。

ですから、“猫も杓子も通すような試験”は、もうないはずで、あくまで、「きちんと勉強している受験生」が試験の前提です。

今の簿記2級は、「きちんと勉強しない限り、受からない試験」となっています。

救済試験のその日まで、ぼんやり受け続けても、試験には通らないので、この点は、注意してください。やらない限り、受かりません。

一発合格について

かつての簿記2級は、「一発合格」が少しも珍しくありませんでした。

というのも、試験問題は定番ばかり、出るところだけやっておけば、合格だけはできたのでした。

しかし、最近の試験は、ほとんどすべての論点・単元から“万遍なく”出題されており、「出るとこだけやる」勉強は、実にリスクが高くて、まず通らないやり方になっています。

たとえば、昔は「帳簿組織」や「記帳」など出たことがなかったのですが、最近の試験では、「絶対に押さえておかないといけない重要論点」となっています。

わたしの実感ですが、「出題者は、受験生が手薄なところを狙い撃ちしている」ように見受けます。

加えて、問題の使いまわしも減少しており、手ごわい試験と変貌しています。

ですから、「1発合格」は、結構、運が絡むことを指摘しておきます。

反対に言うと、「2~3回」の受験を想定しておく方が、「精神衛生上、健全」という塩梅です。

また、簿記2級は、急激に試験問題が難しくなることがあります。

このように、昨今の簿記2級は、「1発合格」を狙えなくはないが、「運頼み」の要素も大きいです。現状でやることをやっても、試験の傾向が激変する回に当たってしまえば、パーです。

簿記2級の試験事情はこんな次第なので、「2~3回」受験するのを想定しておくほうが、精神衛生上、いいでしょう。個人的には、「2回目で合格する人が多い」という感があります。