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その他有価証券の時価評価と洗換法は、「ベンチャー株だから」‐簿記2級ノート

その他有価証券のイメージは「ベンチャー株」」でも述べましたが、「その他有価証券」とは、おおむね「ベンチャー株」と捉えておくと理解が早まります。

で、その他有価証券の論点である「時価評価」と「洗換法」も、「ベンチャー株だから」と考えると、整理がつきます。

危ないから、時価

「その他有価証券」を、「ベンチャー株」という括り方をしたのは、「時価評価」の『時価』意義を明白にしたかったからです。

ご存知のように、その他有価証券は、期末で時価評価を行ないます。

どうして「時価評価」なのかというと、ベンチャー株は、ハズレの多い投資だからです。

おおむね紙くずになるのがベンチャー株。

実質紙くずのベンチャー株が、取得原価で計上されていると、当該B/Sは企業の実態を反映していないことになります。

ですから、決算日に「時価評価」をして、「費やしたお金が焦げ付いていないか」を確かめる、ってな次第です。

投資だから評価

頭が痛くなる話ですが、「その他有価証券」は、「投資その他の資産」のところに、表示されます。

「その他有価証券」は、「投資」なわけです。

「その他有価証券」を、決算の際に「時価評価」するのは、「投資活動」も、その企業の「活動の一環」だからです。

ヤクルトは乳飲料メーカーですが、かつて、デリバティブという本業以外の投資活動で数千億の損失を出しました。

株(投資活動)で、クソ赤字を出した企業は枚挙に暇がありません。

ベンチャー株の購入も、際どい投資だと、言わざるを得ません。

出資者や債権者からすれば、営業活動も投資活動も、『同じゼニを費やしている活動』に他なりません。

企業の投資活動が「収益」を生んでいるか「損失」が出ていないかを調べるために、「その他有価証券」を「時価評価」する、ってな塩梅です。

ベンチャー株だから洗換法で、元に戻す

期末の時価評価時に計上される「その他有価証券評価差額金」は、翌期首に『洗換法』で再振替されます。

いうなれば「元通り」になるのですが、どうして「洗換法」なのかというと、「その他有価証券」の評価とは、“超一時的なもの”だからです。

ベンチャー株は、新興企業の株であり、「今後どうなるか」、その評価は固まっていません。

新興企業の業績は、どーんと当たることもあれば、ずーんと下がることがあります。

言うなれば、「その他有価証券」は、今はダメでも先に良くなることもあり、また、今は良くても先にダメになるってのが実情です。

財務諸表は、当該企業の永遠たる評価ではなく、「当該決算日その日の評価でしかない」のです。

会計期間が「4/1から3/31」なら、「3/31」の実情であって、今後のそれではないのです。

評価の固まっていないものを、“とりあえず”数字に現してみました、というのが「その他有価証券」の評価であり、故に、期末:時価評価→期首:元に戻す、という手間をかけるのであります。

反対に言うと、評価の固まっていないものを、無理から財務諸表に反映させる(洗い換えしない)のも、これはこれで、「企業の実体」を覆い隠してしまいます。

んなわけで、「“とりあえず”評価はしましたので、元に戻しておきますね」が、洗換法の次第ってな塩梅です。

まとめ的なもの

以上、その他有価証券の主要な論点‐時価評価と洗換法‐について、見てきました。

厳密に言うと間違いだらけですが、「その他有価証券」を「ベンチャー株」に模して、その処理を見ていけば、どうしてそうするのか、わかるように思います。

その他有価証券が登場する「有価証券」は、第3問のみならず、第2問にも登場する可能性が大きい論点です。

総合問題なら、処理する有価証券は5~6個でしょうが、個別問題なら、10個以上出てもおかしくありません。

各論点をてんこ盛りで出題しそうなので、「有価証券」は「どうしてそうするのか」まで捉えておいた方が無難かと思います。

なお、勉強方法等は「簿記2級の独学」を…、

独学向け教材については、「簿記2級の教材レビュー」を一読ください。

その他有価証券のイメージは「ベンチャー株」‐簿記2級ノート

いまいちイメージのつかめない「その他有価証券」ですが、間違いを恐れずに言うと、「ベンチャー株≒その他有価証券」と考えておくと、その一連の処理が憶えやすくなります。

言うなれば、学生時代の友人が会社を立ち上げた、この際に、“少し”出資してくれといわれ、対価として受け取った「株」が、その他有価証券だ、という塩梅です。

「小」は上記のようなケースで、「大」は、たとえば、アリババに出資したソフトバンクの手合いです。

なお、「≒」は、「ニア イコール」で「それに近い」的な意味です。

ベンチャー株だから

「その他有価証券」は、先述したように、「売買目的有価証券」「満期保有目的債券」「子会社株式」「関連会社株式」以外の有価証券です。

そこで、その他有価証券をベンチャー株と見立てて、考えてみよう、ってな次第です。

売り買いできないベンチャー株

ベンチャー株は、「売りもしないし買いもしない」ものです。

なぜなら、売買の機会は極めて限定的だからです。

皆さんは、これまで、ベンチャー株を買ったり売ったりする機会があったでしょうか?

ない、はずです。

いきなりあなた、たとえば、PTAで仲良くなった人や会社の人から、「ベンチャーのIT株買わない?」と言われてたら引くでしょ。

振って湧いたような「株買わない?」は、大概、投資詐欺です。

ベンチャー株の売買の機会は、極めて限定的で、ほぼありません。少なくとも、上場企業ほどに売り買いされるものではありません。

だから、ベンチャー株(≒その他有価証券)は、「売買目的有価証券」ではない、といった次第です。

満期のないベンチャー株

ベンチャー株は、「株式」ですから、「満期」という概念がありません。

従って、ベンチャー株(≒その他有価証券)は、「満期保有目的債券」ではありません。

小口出資

もし、あなたの配偶者が、先行き不透明なベンチャー株に、多額のお金を払い込もうとしたらどうしますか?

物置にしまうはずです。

ベンチャー株など、危なくて、よほど余力のある人しか買いません。

加えて、ベンチャー株の大株主は、おおむね創業者か強・利害関係者で、上場益を見込める「虎の子」を、大量に売ることはないです。

こんな次第で、ベンチャー株は、「子会社株式」や「関連会社株式」になるほど、売られもしないし、そして、危ないので買われもしない、という次第です。

ゆえに、ベンチャー株(≒その他有価証券)は、「子会社株式」や「関連会社株式」には当たらない、ってな次第です。

まとめ‐会計学は後回し

こんな風に、「その他有価証券」は「ベンチャー株」と捉えておけば、おおむね間尺に合う、ってな次第です。

しかし、「イコール」ではないので、注意です。

「満期保有目的債券」以外の「債券」も、言うなれば、売買目的で買った債券も、「その他有価証券」に分類されます。

また、出題はまずないでしょうが、今後、投資銀行や証券会社から発行される新型金融商品で、先に挙げた勘定科目に該当しないものも、当該「その他有価証券」に分類されるはずです。

こんな次第で、会計学その他から厳密に言えば、「その他有価証券≠ベンチャー株」ですが、会計学は犬も食わないので、人間であるわたしたちも気にしなくていいでしょう。

「その他有価証券≒ベンチャー株」と考えておけば、問題を解く分には支障がないはずです。

まあ、万が一、変わった有価証券が登場するにしても、資料中に指示があるはずなので、厳密に考えなくていいです。

子会社株式と関連会社株式は「%」まで狙われる‐簿記2級ノート

子会社株式と関連会社株式の論点の第一は、「どういう株式が、それに当たるかどうか」です。

問題の資料には、おおむね、取得した株式の「発行済み株式総数」が記されているはずです。

その際に、自社の取得割合を計算して、判別する、ってなところが頻出論点です。

発行済み株式総数の「50%超」を保有しているなら「子会社株式」で…、

「20%以上50%以下」なら「関連会社株式」となる次第です。

資料にて、たとえば、『A株式:子会社株式なんたらかんたら』などと、有価証券の分類について、明記されていることもありますが、今後、難化が続けば一切、示されないはずです。

そう、受験生に計算させて、当該株式が、何株式に当たるかを判別させる、ってな塩梅です。

たとえば、『A株式 備考:当期にA株式を150株取得した。A社の発行済み株式総数は300株である』とだけ明記して、あとは知らんぷりといった次第です。

この場合、「150÷300」と電卓をたたいて、「0.5」の「50%」を保有していることを、計算しなくてはなりません。

パーセンテージのしきいも注意

当該論点では、「パーセンテージのしきい」は、注意点です。

とりわけ、慎重に見ておかねばならないのは、「50%超」と「50%以下」のところです。

「50%超」が「子会社株式」ですが、これは、便宜的に「51%」と憶えなおしておきます。(※)

「50%以下」は「関連会社株式」ですが、これは「50%」と憶えておきます。

出題者は、絶妙にこのあたりの「しきい」の部分を狙ってくるからです。

先の例で、「たとえば、A株式を150株取得した。A社の発行済み株式総数は300株である」という例が最たるものです。

保有割合は「50%」です。

この場合に、おっちょこちょいな受験生だと「子会社株式」で処理しかねないのです。

子会社株式は、50%“超”なので、50%を含みません。従って、「50%保有」は子会社株式になりません。

対して、関連会社株式は、50%“以下”なので、50%を含みます。従って、「50%保有」は関連会社株式となります。

このあたりの「超」と「以下」の使い分けは、ついウッカリしていると取り違えてしまいます。

「法律用語のコツ:以下・以上・未満・超える」を参考に、その使い分けをキッチリ押えておきましょう。

(※)正確に言うと、50%超=51%~ではありません。50.0000001%保有でも50%超だからです。でもまあ、こんな卑劣な比率は出さないでしょう。おおむね51%に割り切れる数字を、問題に使用するかと思われます。

おまけ

子会社株式と関連会社株式は、ぜんぜん違います。

「50%超」つまり「51%~」と「50%」は、1%の差ですが、天と地ほど、結婚1年目と3年目のおかずの質くらいに違います。

経営(株主総会)は、多数決で決まるからです。

51%あれば、その保有者は、その意思のすべて行使できます。49%が反対しようと、です。

しかし、50%しかない保有者は、多数決で完勝できないので、他の保有者の意向を伺わなくてはいけないのです。

昔、FMWというプロレス団体があったのですが、事業譲渡の際、新経営陣は、創業者から「50%」しか株を取得しなかったため、つぶれた会社があるのです。

いったん経営から手を引いた旧経営陣ですが、後々、株をかき集め(他の株主の委任状なり意向を得た)、「50%」保有になったのです。

このため、新経営陣はその声を無視できなくなり、結果、会社は分裂・倒産と相なった次第です。

もし、新経営陣が「51%」取得していたなら、事態は全く違っていたでしょう。ちなみに新経営陣の社長は、私財をつぎ込んだ結果、自らの生涯を閉じています。

こんな次第で、たった「1%」の違いですが、50%と51%の実態は全く違うってな塩梅なので、試験勉強でも明白に意識しておきましょう。そこには、ある1私人の生涯を、分けたものがあるのです。