簿記3級の第1問の仕訳問題で頻出なのが「固定資産の期中売却」。当該仕訳についての“狙われる理由”と注意事項を最低限に述べる。過年度の減価償却累計額を出すなど、抜群に手間がかかる処理のため、計算ミスを犯しやすい。突出して面倒なので、当該論点の手ごわさを肌で知っておく。
固定資産の期中売却は、仕訳問題で頻出です。
狙われる理由は、「減価償却が絡んでくるため、計算が複雑になるから」です。
先によくある仕訳を挙げておくと…、
「×18年の4月に購入した機械(取得原価1,000,000円、残存価額10%、耐用年数10年、定額法)を、×23年の10月31日に100,000円で売却した。代金は後日受け取る。当期は×23年で、会計期間は1/1から12/31である」ってな塩梅です。
はい、まず、この問題文の長さに“辟易”します。
一度に読むと眩暈がするので、大きな意味をまず把握しましょう。
要は、機械を売っただけで、その機械の売り時をごちゃごちゃしているだけなので、ウルセーウルセーテメェガヤレヨバカと毒付きながら、処理していくまでです。
当該取引の仕訳を切るには、
①過年度の減価償却累計額を計算し…、
②当期(今年)の減価償却費を計算し…、
③算出した額から、売却損益を計算する…、
…こんな次第で、計算の量が複雑で、量も多いため、受験生は往々にしてミスする、従って、陰険な出題者が殊更に狙ってくる、という次第です。
答えの仕訳は以下。
原価償却に絡んだ問題は、必ず、「線の上」で、年月日を記入した上で考えます。
頭で考えると、必ず計算ミスをするからです。
こんな感じに、まず、線の上に、年月日を書き出します。
繰り返しますが、「線上」で考えます。簿記3級なら頭の計算で可能ですが、どのみち2級ともなれば、複雑な問題になるので、「線」を引くことになります。今、線上で処理した方が練習になります。
さて、×18年の減価償却費は、「9か月分」です。(4、5、6・・・と、指折り計算しましょう!)
「100,000×0.9÷10年」に「9/12」をかけた「67,500」が、購入した年度の償却費です。
次に、×19年、×20年、×21年、×22年です。
それぞれ通期ですから4年分を計上することになります。
「100,000×0.9÷10年」の「×4」で「360,000」が、当該4年間の減価償却費です。
ようやく、過年度の「減価償却累計額」が計算できます。
「67,500+360,000」の「427,500」が、「減価償却累計額」です。
…この時点で、多くの受験生が、計算ミスを犯していそうです。
次に、当期の減価償却費を計算します。
大事なことを言いますが、固定資産の期中売却は、「当期の減価償却費」を忘れないことです。
ここが最も大事な論点です。
最初に述べたように、「固定資産の期中売却」が頻出なのは、「当期の減価償却費」を忘れがちだからです。
そう、過年度の減価償却費の計算で、一安心したためか、多くの受験生が「当期の減価償却費」を、ころっと忘れてしまうのです。
売却した固定資産は、当期も使ったのですから、その分を費用化して、税金を安くしなくてはいけません。
問題文では「10月31日」に売っています。
会計期間は「1/1から12/31」までなので、1月から指折り計算して、「10ヶ月」分の減価償却費を計上することになります。
なお、減価償却の計算は「月割」です。
で、当期分を計算すると、「100,000×0.9÷10年」に「10/12」の「75,000」が、購入した年度の償却費です。
やっと、役者がそろいました。
売れた金額は「100,000」です。
減価償却累計額は「427,500」です。
当期の減価償却費は「75,000」です。
合計「602,500」です。
売った機械の元値は「1,000,000」ですから、差額「397,500」が「売却損」だと、“ようやく”判明しました。
まだまだ、ほっとしてはいけません。
邪悪な出題者は、もうひとつ、罠を仕掛けています。
問題文をよく読んでください。
「…100,000円で売却した。代金は後日受け取る。…」となっています。
この問題文の場合だと、「未収入金」で、売却代金の100,000を処理しなくてはいけません。
よくある「現金で受け取った」や「当座預金に入金した」につられないでください。
ついつい、現金や当座預金で処理しかねません。
『営業以外で、未だ受け取っていない金銭は、未収入金』という、未収入金の論点も同時に出題しているという塩梅で、非常に手が込んでいます。
なお、「未収入金」の反対は「未払金」です。
固定資産の期中売却が、どうして、頻出論点になるのか、肌でお分かりでしょう。
まず、過年度の減価償却累計額の計算が煩雑です。
例では、「定額法」でしたが、問題の難易度が上がると、「定率法」で攻めてきます。
繰り返しですが、当該累計額の計算は、必ず「線上」で年月日を展開した上で計算しましょう。頭でやるとド混乱します。
次に、「当期の減価償却費」を忘れがちなので、要注意です。
減価償却累計額を計算したら、脳が「はい、償却終わり~」てな感じになるので、意識的に、「期中売却には当期分あり」などと、「釘を刺しておく」ことが必要です。
次に、「売却の損益計算」です。
おおむね「売却損」ですが、ごくまれに「売却益」のときがあるので、処理に戸惑わないでください。
最後に、売却代金の処理です。
おおむね「当座預金」か「現金」なのですが、「未収入金」で攻めてくることもあるので、最後の最後まで、気を抜いてはいけません。
まず、『固定資産の期中売却は、他の論点とは違って、手ごわい』ことを、頭に刻んでおきましょう。
当該論点が、他の論点とは違って、かなり「やばい」ことに鼻が利くだけで、格段に間違わないようになります。
仕訳問題以外に、第3問でも問われる公算があります。本試験で遭遇したら「…来たな」くらいの心持で解答してください。
なお、仕訳がうまく切れないという人は、「取引の8要素」が頭に刻まれていないからです。
「独学の簿記3級:商業簿記」を参考にしてください。当該8要素が頭に入ってないなら、無理して問題を解かなくていいです。まずはここからです。
また、独学向け教材については「簿記3級の教材レビュー」を一読ください。
2016年10月3日 2:03 PM
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