宅地建物取引士(宅建)試験の平成30年度(2018年度)の各種数字や特徴、各科目ごとへのコメント。最後に、次年度の試験について、過去10年のデータから、“個人的な推測”を併せて述べる。
平成30年度(2018年度)の宅建試験ですが、申込者数が「265,444人」、受験者数が「213,993人」で、合格者が「33,360人」と相なりました。
そして、合格率は「15.6%」で、合格基準点(一般受験者)は、「37点」となっています。
ちなみに、前年度の平成29年度(2017年度)では、申込者数が「258,511人」、受験者数が「209,354人」で、合格者が「32,644人」で、合格率は「15.6%」、合格基準点は、「35点」となっています。
申込者数・受験者数・合格者数ともに、前年比で増加しており、宅建の人気のほどが窺われます。
合格率は、昨年と変わらない「15.6%」でした。数字だけなら、過去の平均とそう変わらないといえます。
ただ、H30では、合格基準点に変化がみられます。
合格基準点は、例年35点以下が続いていましたが、H30では「37点」と、前年比で、2ポイントほど増加しています。
当該「37点」という数字は、過去10年では、「最高値」となっていて、H23の「36点」を1ポイント超過したものとなっています。
その原因は、後述しますが、「解ける問題」が多かったからです。
参考:平成30年度(2018年度)宅建の過去問+解説インデックス
H30試験の特徴は「解ける・解けないが明白」だったことです。
難問は、一目見て難問でした。
たとえば、「5問:事務管理」などは、過去ほとんど出題実績がなく、宅建業や宅建実務とも関係が薄いため、「無防備」だった論点で、確答できた受験生は、稀だったことでしょう。
たとえば、「6問:法定地上権」や「7問:債権譲渡」は、問題丸ごとがガチンコの判例問題であり、これまた、スラスラと解答した受験生は、皆無だったことでしょう。
しかし、です。
それ以外の問題は、テキストを精読して、過去問演習を繰り返した受験生なら、「ふつう」に解ける問題・選択肢が多かったのです。
たとえば、「いくつあるか?」問題です。
選択肢のすべてに正しい判別ができないと、1点とならない受験生泣かせの出題形式ですが、H30では、猛威が収まっています。
例年は、枝葉末節の選択肢が含まれていて、実に点が取りずらかったのですが、H30では、普通に点の取れる問題に仕上がっており、きちんと勉強した人なら、大丈夫な難易度でした。
もちろん、受験生を悩ませる問題もありましたが、それでも、選択肢の半分は基礎事項で、「50%」の確率で正解できるくらい、選択肢を絞れる問題が多かったです。
H30の試験は、こういった次第で、「解ける」問題・選択肢を確実に正解できれば、穏当に、合格できた、といった次第です。
H30試験も、宅建試験の原則に適った出題でした。
つまり、「テキストを精読し、過去問演習を繰り返す」ことで、穏当に合格できたといった塩梅です。
各論点の理解と把握に努め、憶えることは憶え、定番論点はシッカリ消化し、そして、推奨10年分・3回転の過去問演習で選択肢の「使い回し」に備えておけば、「解ける」問題を取りこぼすことが、かなり防げます。
宅建試験では、点数を取ることより、点数を落とさないことの方が大事です。
難しい問題は、解けなくていいのです。
定番の問題、頻出の問題、やさしい問題を、いかに落とさないか、反対にいえば、これら、取れる問題を確実に取ることが、合格の要諦です。
1問目から解く人は、「民法」の難しさに、目を奪われないようにしてください。
第5~7問に「難問」が、連続しています。
そのため、3問連続して、解けない・失点することも、大いにあります。(わたしは、3問とも落としました。)
アドバイスですが、試験問題の最初の方で、動揺しないでください。
失点以上に、精神的な動揺の方が怖いです。後々の解答に、“大きく”影響するからです。
上述していますが、これら「難問」以外は、何気に、すんなり解けるのです。
宅建には、科目ごとの足切り点がありません。
んなもんで、最悪、民法が3~5点しか取れなくても、他の問題でカバーできていれば、合格できます。
出題者は、意図的に、試験問題の序盤に難問を設置し、受験生の動揺を狙っている感があります。
試験は、トータルで点が取れたらいいのです。一部の問題に、影響され過ぎないでください。
くれぐれも、数問連続して落としたからといって、気落ちしないようにしてください。
「がっくりきた」「やる気が消えた」「不安になった」・・・それこそ、配偶者のように陰険な出題者の『意図』なのです。向こうの手の平で、踊らされないようにしましょう。
受験生を悩ませる科目の「法令上の制限」ですが、H30は、解ける問題が目立ちました。
難問はあまりなく、テキスト記載事項や、基礎・基本的な出題が多かったです。
例年、「法令上の制限」は、難問・やや難問が多く、受験生泣かせでしたが、H30年度のように、「解ける」問題が集中することもあります。
ときおり、「法令上の制限」のうち、いくつかの法令を「捨て問」にする人がいますが、そういう人は、当該年度のような試験では、致命的な失点を負ったはずです。
「法令上の制限」の各法令は、いうほど、難しくありません。
テキストレベルのこと、過去問レベルのことは、解けるようになっておきましょう。
H30の宅建業法は、基礎・基本レベルの出題が多かったです。
メイン科目の宅建業法ですが、先述したように、難問が少なく、「解ける」問題が多かったので、順調に解答できたように思われます。
「逆」を言えば、このレベルの問題は、スラスラ解けないとダメです。
もちろん、難問・やや難問に苦しむはずですが、選択肢が絞れるので、正解率は、例年に比べれば、高かったはずです。
テキストの精読と、過去問演習の徹底で、今後の試験も凌いでください。
例年通りの構成と難易度です。
「統計」は、「捨て問」でもいいでしょうが、他の問題は、極力取れるようになっておきましょう。
特に、「土地」「建物」は、取りやすいので、失点は厳禁です。
ところで、過去10年の合格者数の平均は、「31,666人」です。
H30試験ですが、合格者数は、先に見たように「33,360人」でした。
んで、H29試験ですが、合格者数は、「32,644人」でした。
要は、2年連続して、10年平均を超過している、といった塩梅です。
過年度の数字を見ると、「合格者が増えると(難しくして)減らす。合格者が減ったら(易しくして)増やす。」といった傾向が見られます。
近年、合格者が増加傾向にあることから、令和元年(2019年度)の試験では、合格者数は、減ることが予想されます。下手をすれば、3万人を切る可能性もあります。
そのため、次回の本試験では、「難問」や「やや難問」の比重を増やしたり、見たことも聞いたこともない問題で、点数の調整を図ることが予想されます。
しかし、そうであっても、定番問題や頻出問題も、それ相応にあるはずです。
「難問」や「やや難問」には、惑わされず、「取れる問題・解ける選択肢」を落とさないよう、勉強して行きましょう。
2019年6月6日 4:09 PM
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