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役務原価は前中後の処理と仕掛品‐簿記2級新論点ノート

「役務原価」ですが、まず、勘定科目の名前に、少しだけ注意します。

役務原価は、役務“収益”と相対する勘定ですが、役務“収益”の収益という文字に引きずられて、役務原価を、「役務“費用”」と、間違えて憶えている可能性があります。

営業収益-営業費用とか、収益費用対応の原則とか、収益という用語は費用とセットのため、役務原価においても、役務費用と憶えかねないのです。

役務“原価”です。ちゃんと正しい漢字で憶えているかどうかを確認です。

役務原価は前中後

大上段から言うと、役務原価はてんこもりの論点です。

役務原価をめぐる一連の取引では、前中後の3つに注意しなければならず、また、それぞれが独特なので、要領をきちんと押えておかないと問題が解けないです。

以下、役務原価の“やばさ”を見ていきましょう。

役務原価の前‐当期の費用

公式のサンプル問題は、以下の通りです。

「建築物の設計・監理を請け負っている株式会社 中央設計事務所は、給料¥300,000および出張旅費 ¥160,000を現金にて支払った。」

で、解答の仕訳は以下の通りです。

…いたってシンプルな仕訳に見えますが、素で出ると困惑してしまいます。

問題文の“請け負っている”に引っかかって、「請負→役務原価!」と脳髄反射しかねないからです。

当該仕訳のポイントは、役務収益と対応できない役務原価は、いったん「通常の費用」として計上する、という次第です。

役務原価の中‐仕掛品

役務原価の最大の山場は、「仕掛品」で処理するところです。

当該「仕掛品」を使う仕訳は、商業簿記ではそうないはずなので、役務原価では仕掛品勘定を使うことを知っていないと、“絶対に解けない”です。

要領としては以下の通りです。公式のサンプル問題文は…、

「顧客から依頼のあった案件について建物設計を行なったが、先の計上したもののうち給料¥ 100,000および出張旅費¥30,000が当該案件のために直接費やされたことが明らかになったのでこれを仕掛品勘定に振り替えた」

で、仕訳は以下の通りです。

問題文はサンプルですから、「仕掛品」勘定を用いるように指示がありますが、もしこれが、「…明らかになったので、該当する勘定に振り替えた…」であれば、難易度は格段に上がるはずです。

また、当該役務原価と仕掛品は、決算整理でも狙われそうです。

いったん計上された費用、先のサンプルで言えば、旅費や給料について、「旅費のうち○○円は、請負作業に費やされたが当該作業はまだ完成していない」などと指示され、旅費を仕掛品に振り返る作業の当否を問う、ってな塩梅です。

このように、役務原価には、仕掛品を用いた処理があるので、注意が必要です。知らないとまず解けないはずです。

なお、公式のコメントでは、当該仕掛品について、「役務収益と役務原価の認識にタイムラグがある場合には、仕掛品を使うのが望ましい」とのことです。

ですから、「お金を渡してすぐサービス享受」なら、仕掛品に振り返る必要はない、ってな次第です。

役務原価の後‐収益・費用の認識

役務原価は、役務収益が認識されるまでは、仕掛品として計上します。

で、役務収益が認識されたら、それに対応した役務原価の仕訳を切る、ってな次第です。

公式の問題文は以下。

「上記の案件について、 設計図が完成したので、これを顧客に提出し、対価として¥250,000が当座預金口 が当座預金口座に振り込まれた。役務収益の発生伴い、対応する原価を計上する」

で、公式の仕訳は以下。

…ってな感じで、役務収益を計上し、先に計上した仕掛品を役務原価に振り返る、ってな塩梅です。

当該仕訳を切るには、当該取引の前に、費やされた費用が仕掛品に計上されていることを“知っておかねば”、できないので、要注意論点です。

役務原価まとめ

このように役務原価は…、

費用の詳細が判明する前は、いったん期間損益に計上する。

判明したら「仕掛品」。

収益認識の指示があれば、役務収益の計上と、仕掛品を役務原価に振り替え。

…と、3つも処理があるという塩梅で、結構てんこもりの論点となっています。

第1問の仕訳問題でも、第2問の個別論点でも、第3問の総合問題でも、非常に出しやすい(使いやすい)論点なので、一度時間を取って、キッチリ見ておくほうがいいでしょう。

役務収益は前受金とセットで憶える‐簿記2級新論点ノート

役務収益・役務原価の注意点は、「収益・費用の認識」の前に、ごちゃごちゃしている点です。

当該役務収益・役務原価の論点は、『前後に罠がある』ことを頭に入れておくのがポイントかと思われます。

役務収益では、前に「前受金」が、場合によっては、後に「役務原価」が噛んできます。

役務収益は前受金が絡む

単に、「A社に清掃サービスを提供し、現金で○○円得た」のなら、仕訳は簡単です。

「現金 ○○ / 役務収益 ○○」

…と、これまで勉強したことで解答が可能です。

しかし、公式では、「対価が、前もって支払われた場合」が想定されています。

以下、公式が発表した仕訳例では…、

「資格試験の受験学校を経営している日学商園は、7月20日、8月開講予定の簿記講座(期間1年)の受講料¥900,000を現金で受け取った」

この場合は、『前受金』で処理するよう指定されおり、公式では…、

「現金 900,000 / 前受金 900,000」

…の仕訳が例示されています。

次は、当該取引の認識時の仕訳ですが、公式の例は以下。

「決算にあたり、先の収益を計上する。決算日現在、先の講座は、3分の2が終了している」

で、仕訳は…、

「前受金 600,000 / 役務収益 600,000」

・・・となっています。

このように、「前受金」で処理しておいて、決算日に提供したサービスの分だけ、収益として認識する、といった次第です。

「役務収益は前受金が絡む」と、まずは、憶えます。

狙われるのはここです。

仕訳問題で出た場合に、「仮受金」など、紛らわしい語句が勘定語群に入っているはずなので、注意してください。

で、次に、「期間損益計算」で収益が認識される、と押えておきます。

役務原価も絡んでくる

役務収益の仕訳には、役務原価が絡んできます。

公式発表の問題と仕訳は以下の通り。

「旅行業のAツーリストは、企画したツアーの申し込みに、代金¥600,000を現金で受け取った。」

「先に企画したツアーを提供し、添乗員の報酬などのもろもろの費用¥400,000を小切手で支払った」

最初の仕訳は…、

「現金 600,000 / 前受金 600,000」

・・・で、おなじみ「前受金」勘定を使います。

で、次の仕訳は…、

「役務収益 600,000 / 前受金 600,000」

「役務原価 400,000 / 当座預金 400,000」

…となっています。

役務(サービス)の提供時に「収益を認識」し、当該収益の認識時に、相対する「費用を認識」する、という塩梅です。

まとめ

役務収益は、「知らないとできない」です。

一連の要領を知らないと、先の仕訳の「前受金」を「売上」で処理しそうですし、ついうっかり、「仮受金」で仕訳を切りそうになります。下手をすれば「売掛金」で処理しそうですw。

こんな次第で、役務収益の論点は、「複雑ではないが、知っていないと、正解は難しい」です。

役務収益は、第1問の仕訳問題で採用されそうなので、一連の処理をしっかり見ておきましょう。

そこそこに落とし穴があるので、見かけのカンタンさに目を奪われてはいけません。

銀行勘定調整表の勉強‐両者区分調整法・企業残高基準法・銀行残高基準法は「×(ばってん)」‐簿記2級ノート

結論から言うと、銀行勘定調整表の処理は、「両者区分調整法」のやり方だけを憶えます。

残る「企業残高基準法」と「銀行残高基準法」は、「×(ばってん)」の1語で済ませてしまいます。

まずは両者区分調整法

銀行勘定調整表が出題されたら、まず、下のように、テキストでお馴染みの「図」を書きます。

で、調整項目を地味に記入していきます。

ここでのポイントは、「企業残高基準法」と「銀行残高基準法」での処理が指定されていても、まず、下書き用紙に「両者区分調整法」の図を書く、という塩梅です。

クソややこしくて脳が焼ける

端的に言うと、「企業残高基準法」と「銀行残高基準法」は、「両者区分調整法」の図さえ書ければ、すぐに処理できます。

これを、「企業残高基準法」では、「銀行上の加算項目を、企業上の減算に」とか、「銀行上の減算を、企業上の加算に」などと、「頭」で考えると、クソややこしくて、面倒くさいことこの上ありません。

「企業残高基準法」や「銀行残高基準法」から処理しようとすると、脳細胞がちりちりと焼け始めます。

ですから、まず、「両者区分調整法」で処理して、後は、それぞれの方法に加工する、ってな次第です。

当該加工法が、先述した「×(ばってん)」です。

「×(ばってん)」は超カンタン

先に述べたように、まず、「両者区分調整法」で処理してしまいます。

で、次は、下の図のように、「×(ばってん)」してしまいます。

これだけです。

上の画像で「企業残高基準法」、下の画像は「銀行残高基準法」です。

補足ですが、「企業残高基準法」とは、「企業側の当座預金」から「始まる」ので、そう名づけられています。

「銀行残高基準法」も同趣旨で、「銀行の残高証明書」から「始まる」ので、当該名称となっています。

「基準=スタート地点」なわけです。名前が悪いです。「企業残高スタート法」とかの方がはるかに理解しやすいですね。

考えず、機械的に転記

上の画像のように処理できたら、矢印の方向に対して、それぞれの調整事項と数字を転記する、ってな塩梅です。

ここでのポイントは、頭の中で、「減算が加算云々」は考えない、ということです。

考えはじめると、頭の回路が焼け付いて、焦げ臭くなります。何も考えず、(ここはここ)(ここはここ)と、単純明快に処理してください。考えるとダメです。

「×(ばってん)」を通して転記すれば、「両者区分調整法」から、「企業残高基準法」なり「銀行残高基準法」なりの処理になった、という次第です。

まとめ

「銀行勘定調整表」の処理は、「両者区分調整法」からの「×(ばってん)」で、「企業残高基準法」なり「銀行残高基準法」に対応させるってな次第です。

シンプルな処理なので、試験問題を前にして懊悩することもなくなります。

言うまでもありませんが、当該「×(ばってん)」方式は、大元の調整項目がきちんと正確に処理できてこその解き方です。

まずは、調整項目を、正確に処理してください。ここが間違っていると、青菜にシュガーです。

なお、勉強方法等は「簿記2級の独学」を…、

独学向け教材については、「簿記2級の教材レビュー」を一読ください。