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『業際』という士業の壁-FP技能士の試験勉強が「広く浅く薄く」になる理由

まずは初めに結論を。一口で言うと。まとめ。要旨。

FP技能士はカンタンだと言われている。試験勉強も広く浅く薄くが基本方針だが、それには、「業際」という背景があるからである。

3級でもそうですし、2級でも、そして、1級ですら、FP技能士の試験勉強は、「広く浅く薄く」が原則です。

反対を言えば、「深くやってはいけないし、専門的にやっても仕方ないし、手厚くやっても甲斐がない」という次第です。

「業際」が存在するからです。

FP技能士にできることは、1級2級3級のどの級であろうと、弁護士や税理士や社労士等の士業が絡む事柄については、具体的な手続きは当然のこと、「一般的な説明のみ」しかできないのです。

反対に言うと、個別具体的な、「業際」に関わる話は、有償無償を問わず「アウト」になる塩梅です。

たとえば、税金の相談です。一般的な話はOKです。「確定申告の何たら控除はこれこれこういう内容です」は大丈夫ですが、「○○さんは、今年、災害に遭われたのでその分についてはこういう届出をすると雑損控除…」となるとアウトでしょう。個別具体的な税金相談になるからです。

まだまだあります。たとえば、民法の成年後見人制度です。一般的な説明として、「後見人‐保佐人‐補助人という制度があります」云々はよくても、個別具体的な相談はもとより、戸籍を取り寄せるなどの事務手続きをすると、弁護士法や行政書士法に抵触します。

社会保険についても、注意が必要です。「一般的に、○年○月○日から×年×月×日生まれの人は、64歳から特別支給の老齢厚生年金が受給できます」と言うことはできます。

しかし、「年金定期便を見せてください。○○さんの生年月日からすると、63歳が支給開始ですね。この用紙に記入すれば年金がもらえます」云々、裁定手続きまで踏み込むことをすれば、社労士法に抵触します。

年金相談も、“今のところ”、やかましく言われていませんが、無資格者の年金相談が横行し、年金の無断請求や横領などが社会問題化したら、年金相談も有資格者のみとなって、『業際化』する可能性は大です。(年金系の新資格ができるかもしれない。)

年金相談は、今のところは大丈夫ですが、日本年金機構のコールセンターの求人でも、社労士有資格者が求められていたり、金融機関では、コンプライアンスからか、有資格者を年金の相談員に置いたりしている昨今、有資格者以外が、個人情報が絡んだ個別具体的な年金相談にのるのは、次第にアウトになっていくでしょう。

まとめると、FP技能士の試験勉強は、無資格であれば、深く、専門的に、しっかり勉強しても仕方がないところが“多過ぎる”て、「深くやってもいけないし、専門的にやっても仕方ないし、手厚くやっても甲斐がない」のです。

反対に言うと、出題者側が、深く、専門的に、しっかり勉強させるような問題にしてしまうと、法令違反に抵触しかねないことはもとより、他の士業団体に喧嘩を売っていることになりかねないのです。

極端な言い方ですが、「やっちゃダメ」とさえ釘を刺しておけば、改造銃の作り方を無差別に広めてもよいのか?というと、そうではありません。

「深く、専門的で、手厚い試験勉強をさせる」と、どうしたって、業際を無視して業務を行うFP技能士は出てきます。「知っていることは使いたい」からです。そうなると、『責任』の一端が、主催者に被ってくるのは明白です。

だから、突っ込んだ深くて専門的な出題はなく、たとえば、固定資産税だと、税率や課税標準額の特例の数字くらいを憶えるだけで、実際のこういうケースだとどうなのかとか、どういった手続きを取ればいいのか?などの、具体的な手続きや実務・実際的なことは勉強できず、となります。

「広く浅く薄く」しか、問題を出せないのがFP技能士の実情で、ゆえに、「カンタン」に、そして、「テキストを読んで、過去問を解く」くらいが試験勉強の関の山、専門書や実務書を読む必要はなく、最終的に「羅列されている語句や用語、数字を憶えるだけの、中・高校生の公民の作業」となるのでした。

このあたりの実情をもとに、受験等を考えた方がよいでしょう。

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