通関士の独学

まずは初めに結論を。一口で言うと。まとめ。要旨。

 通関士の独学合格のキーワードは、「通関実務・通関実務・通関実務」と「通関士ポータル」の2つ。最優先する科目は「通関実務」で、試験情報は「通関士ポータル」で収集という次第で、2点に留意していれば、独学合格の可能性は跳ね上がります。以下、重要度順に、通関士試験の独学方法を述べていきます。

通関業法・関税法は、がんばらなくてよい

 通関士試験を一口で言うと、『通関実務』の試験です。つまり、通関士とは、『通関実務』の出来で、天国と地獄が決まるという次第です。

 通関実務が、「大事」や「重要」ではないのです。通関実務はそれ以上の存在で、合否は通関実務で「決まる」んです。

 1も2にも3にも勉強しなくてはいけないのが通関実務で、そこそこでも通るのが通関業法や関税法その他です。


 実質1科目。


 ですから、試験勉強の最大目的は、「通関実務で、合格基準の6割を確保すること」になります。

 つねに、「通関実務」を頭の隅に置いて、日々テキストや過去問に向かいましょう。

 正直、通関士ほど、科目差のある試験も、そうないと思います。

 通関業法や関税法の勉強がうまく進んでいるからといって、「通関士試験ってこんなものか」などと、油断してはいけません。両法と通関実務とは、中ボスとラスボス、しょう油と灯油くらいの差があります。

 大概の不合格者は、通関実務の“足切り”で落ちています。わたしも、通関実務で落ちました。

平成29年度の法改正について

 通関士試験は、例年、法改正事項がよく問われます。

 さて、本年度(平成29年度・2017年試験)なのですが、今年は、例年にない大きな法改正が控えています。

 定番改正の税計算はもとより、税関書類の提出先(条件さえ整えば、どの税関長でも可)など、試験が大きく変わる予兆があります。

 ですから、出版社のWEBサイトをチェックして、教材元が発行する「法改正情報」を、必ず目を通しておいてください。

 本年度の試験は、本当に「法改正」が目玉なので、先手を打って、後手後手にならないようにしてください。

使用教材

 通関士の独学向け教材は以下の通りです。

 テキストは、「通関士教科書 通関士完全攻略ガイド」を、

 過去問は、「通関士教科書 通関士過去問題集」を、

 通関実務対策には、「通関士教科書 「通関実務」集中対策問題集」と、

 「通関士試験 ゼロからの申告書」を合せて使います。

 数の少ない通関士の市販教材のなかで、最適の組み合わせかと思います。ま、詳細については、「教材レビュー」まで。

通関実務を最優先

 通関実務が厳しいのは、出題が極めて難化しているためです。物凄く、点数が取り難くなっています。

 従来では出なかった貿易用語(インターコムズ)が多用されたり、テキストで触れられてない計算がバンバン出題されたり、実務的なこと・時事的なトピックが“深く”問われたりと、かなりの難化傾向にあります。

 計算問題の増加も、それに輪をかけています。

 その上、テキストや過去問にはない新手の計算問題が出題されたりと、踏んだり蹴ったりです。

 申告書問題となると、理解と記憶と計算がトータルで求められるので、表面的な理解しかしていないと、まず点が取れません。

 通関実務は、付け焼刃な勉強では、全く歯が立ちません。

 通関実務には、練習とトレーニングの期間が絶対的に必要であり、合格レベルに達するには、時間がかかることを頭の片隅に置いて、勉強を始めなくてはいけません。

 加えて、「合格基準」の存在があります。

 通関士試験には、科目ごとに『合格基準』が設定されており(要は足切り点)、例年で6割(救済時には5割)の正解が、“科目ごと”に求められています。

 つまり、通関業法や関税法等でいくら点数が取っても、通関実務ができていなければ意味がないのが通関士という試験なのです。

 「全体で6割取れば合格」ではないのです。科目“ごと”に、です。この点を、肝に銘じてください。知らないでいると、通関実務を始めたときに、点数の取りにくさに、肝を潰すことになります。

 1限目の《1.通関業法》や2限目の《2.関税法、関税定率法その他》は、基本は、暗記と記憶です。

 後述するように、こつこつとやっていけば合格基準点に到達しますし、短期間で合格レベルに達することができます。

 しかし、通関実務の『やばさ』に比べたら、通関業法や関税法等は、物の数ではありません。

 「通関実務」は、他の試験科目と比べて、その手強さに『ホームラン級の大差』があり、通関実務こそ通関士試験のかなめです。

 通関士ほど、科目差のある試験も、そうないと思います。

最初から通関実務

 通関業法・関税法その他と通関実務とは、基礎と応用の関係ではない点に注意してください。

 通関業法や関税法がわからないと、通関実務が一切解けないというわけではないのです。両法をほとんど知らなくても、解答の手順や要領はおさえることができます。

 だって、計算手順や、資料の数字やデータの着目点や、定率表の見方などの、通関実務の主要な作業については、前2科目で一切触れられないからです。

 通関業法や関税法の学習が進んでいたら、通関実務がバリバリ解けるわけではなく、多少マシになる程度で、頭をウンウン捻る事態はまったく変わりません。

 ですから、いきなり初っ端から、通関実務に“なじんでいく”ことも可能なのです。

 本格的に点数を取る本腰の勉強は、中盤以降になりますが、「全く手付かず」は絶対に避けるべきです。

 つまり、通関業法や関税法等が終わってから、通関実務に着手するといったような、平凡なやり方はやめましょう、という次第です。

 一部の問題は、関税法や関税定率法を知っていないと解けないのもありますが、飛ばせばいいだけ。

 最初は、見様見真似でいいですし、ざっと目を通すだけでいいです。

 最初は、全然わからなくて結構です。解説の言うがままに、計算過程をなぞるだけでいいです。

 「通関実務で、どういうことをするのか」を先取りしてから、通関業法や関税法等の勉強に入ると、通関実務と“直につながる”ので、非常に効率がよくなります。苦労を先取りする甲斐は大であります!

通関実務の進め方

 一口で言うとは、「通関実務は、問題演習の『量』で、合否が決まる」です。

 択一式は、テキストが重要です。何度も何度も読んでは問題を解いて、知識の定着を図ってください。

 計算問題や申告書問題は、テキストをざっと読んて基本的なことを押えたら、果敢に過去問題集や通関実務用問題集に着手してください。うだうだテキストを読むより、実際に問題を解く方が圧倒的に上達は早いです。

 通関実務のキーワードは、『最低3回・目標10回』です。

 手順としては、以下の通りです。

 まず、過去問題集の通関実務を「3回」やります。

 ある程度わかってくるので、舞台を通関実務用問題集に移します。

 当該通関実務用問題集は、「3回」繰り返します。

 で、後述する「通関士ポータル」の10年分の過去問のうち、通関実務を「3回」解きます。

 要は、過去問題集と通関実務用の問題集と通関士ポータルの過去問を「3回」は解くという塩梅です。

 しかし、「3回」とは、最低の数字です。最低限、3回は解いておかないと、合格の席すら争えないと考えておきましょう。

 「3回」済んだら、以降は、「苦手な問題」や「詰まってしまう問題」「頻繁に間違えた問題」の復習を中心に、問題演習を続けます。こうした問題は、最高で『10回』くらい解いておきます。

 ま、要は、自信がつくまで、できるまで繰り返せという塩梅で、対して、まあできる問題は、3回5回でもいい、という次第です。

 通関実務の傾向は、新手の出題が多く、過去問演習の比重は以前と比べて、低くなっているのは事実です。

 しかしとはいえ、過去問演習は、実力維持に最適な問題演習ですし、「過去に問われた問題」が形を変えて再出題される可能性は極めて高いです。

 1点を争うからこそ、過去問レベルの問題が出題されたときは、確実に取れるようになっておかねばなりません。

 過去問題集の問題だけは、「反射」のレベルにまで達しておきましょう。そして、できると思っていても、解き続けます。ピアニストが、弾ける曲でも毎日練習を欠かさないのと同じです。身体に憶え込ませてナンボです。

 わたしの受験当時ですら、通関実務は『10回』でした。難化にある今では、このくらいをやっておいて、不足はありません。(正確に言うと、3回しか解いてない1回目の受験では落ち、2回目は10回解いて臨んで合格でした。)

 『10回』やれば、木鶏なみの不動心となるので、難問や奇問が出題されても、冷静に部分点を稼いだり、得点可能性を上げたりすることができます。

 「1問に対する粘り」が違います。『10回』を目標にすることを推奨します。

 ところで、『10回』と聞くとすげえメンドクサク感じますが、通関実務の1科目だけですし、何回もやっていると、1問1問の時間がかなり短くなるので思ったほどではありません。心が麻痺しているとも言います。

 なお、通関実務では、基本的な法律用語を押えていないと、条文や規則の正確な読解ができず、問題の意図を解答に反映できずで、必ず詰まります。「法律用語のコツ」を必ず目を通しておいてください。(お気に入りに入れておくことを推薦します。)

 とりわけ、「及び」と「並びに」は、必読です。

しんどいのは最初だけ‐通関業法、関税法他の進め方

 1限目と2限目の通関業法、関税法他は、最初だけがしんどいです。

 というのも、「通関」の言葉に慣れていないので、ピンと来ないためです。

 このため、“できないかも”と不安に思うかもしれませんが、杞憂です。

 というのも、本試験の出題は、基本的にオーソドックスで、過去問題集を繰り返しておれば、十分に、合格基準を満たすことができるからです。

 通関業法や関税法他が超苦手という人は、少数でしょう。

 きちんと勉強すれば、合格基準に入れるので、がんばるだけです。

 また、当該2科目の特徴は、基本、暗記問題なので、「追い込みが効く」ところです。

 試験直前の1~2ヶ月の土日祝日に、一気呵成に勉強すれば、合格基準ギリギリくらいの実力は身に付けることができる、という寸法です。つまり、多少遅れていても、後で取り戻すことができるわけです。(この点、通関実務は、絶対に追いつきません。)

 油断や手抜きは厳禁ですが、テキストを「3回」読んで、過去問題集を「3回」解いておけば、必要かつ十分でしょう。

 なお、通関実務はパスしたのに、これら2科目で引っかかって落ちるのは、通関士試験でもっとも不幸な落ち方です。

 次年度の通関実務が、どう“難化”するかわかりません。

 「自力でできること」には万全の手を尽くし、1点の遺漏ない状態に到達しているよう、1度不合格になった者から助言しておきます。

 なお、選択式と択一式に分かれますが、同時にやった方がテキストの理解度が違ってくるので、バラバラにせず、一緒くたにやっていくのがコツです。

 また、通関業法や関税法その他でも、法律用語が多用されています。それらの用法を押えていないと理解に手間取るので、「法律用語のコツ」に目を通しておいてください。(お気に入りに入れておくことを推薦します。)

 先の「及び」と「並びに」以外にも、「適用」と「準用」「または」と「もしくは」「科料」と「過料」の違いは、知っておきましょう。理解不足や用語の混同は、挫折の元です。

法改正が大事

 通関士試験で問われる各法律は、毎年どこかが改正されています。

 法改正事項は、通関士では超頻出問題です。

 たとえば、です。税率が変わったのに旧税率で計算していたら、過不足含めて、事務員ですら恥です。プロなら憤死です。こんなミスをする痛感な部下がいたら、あなたはどうしますか?

 たとえば、添付書類が変わったのに、いちいち“今は要らなくなった書類”を発行・請求していたら、どれほどの手間とコストでしょうか?

 我が身で考えてみてください。住民票ですらめんどくさいのに、貿易関係の書類・証明書となれば、手間も費用も跳ね上がります。「住民票(発行手数料500円)の写しを持ってきてください」→「すいません、要りませんでした」と言われたら、どれだけむかつくでしょう。通関も同じことです。

 実務においても「法改正」は、優先順位が高いので、応じて、通関士試験でも重視されています。

 法改正情報は、「教材レビュー」で紹介している教材の出版社や専門学校、税関などで入手できます。法改正対策は、必須作業です。

官が民を駆逐した、通関士ポータル

 通関士試験で一番変わったのは、難化した本試験ではなくて、「市販されている教材の激減」だと、わたしは思ってます。

 かつて、わたしが受験したときは、複数の出版社から通関士の教材が売られていて、本屋の棚の半分くらいは、通関士の教材が並んでいたものです。

 しかし今や、通関士の教材を取り扱っているのは2~3の出版社で、本屋では30センチくらいの売り場になってしまいました。大手のジュンク堂でこうなのですから、一般の本屋となれば、かたつむりの角先くらいでしょう。

 こういう現状になったのは、「通関士ポータル」という、通関士向けWebサイトが出現したからです。

 端的に結論を言うと、通関士に必要な情報は、通関士ポータルでほとんどを賄えます。非常に精度の高い情報でいっぱいです。

 試験の合格率や受験者数はいうまでもなく、試験の傾向から、試験科目の個々の勉強方法まで、通関士ポータルを読めばわかります。通関士でも困ったら、まず、通関士ポータルに行きましょう。

 加えて、通関士ポータルの存在が大きいのは、過去10年分の過去問が全問公開されており、しかも、その全問に、解説付きの解答が公開されているところです。

 はっきり言うと、『商売にならない』のです。こういう質のよい情報をインターネットで公開されると。

 これが、通関士ポータルの過去問が、「1問目:3、2問目:5、3問目:1…」といったような、解答番号の羅列であれば、ここまで、教材が少なくなることもなかったのです。

 しかし、羅列どころか解説付きで、その解説の質も高いときて、その上に『無料』で見れるのです。企業が過去問を作ったとして、売れるでしょうか?

 もちろん、売れないわけで、こんな次第で、以前いた出版社は撤退したのだと考えます。

 運営団体が、関税協会という公的団体なのも、大きいです。いい加減なことも言わないという信用もあるのですから、『さらに商売にならない』と言わざるをえません。

 まとめます。

 「既存の出版社が手を引く品質」が、「通関士ポータル」にはあります。必ず、ブックマークに入れておきましょう。

 Webでの試験情報集めは、通関士ポータルで賄えます。徹底して利用してください。

 なお、個人的に指摘をするなら、「関税定率表97類の分類問題」は、できることならやっておいて、合否の天王山となる通関実務の得点可能性を1点でも増やしておきたい、と考えます。

 だって、手間は凄いけど、「自力でできる」ところだからです。

 参考:通関士ポータル

気楽にならないまとめ

 通関士の試験勉強とは、条文の用語や語句、制度の決まりや規則といった細々としたものを、地道に憶えていく作業です。

 通関実務の計算問題であっても、計算手順を憶えないとどうにもならないです。

 凄くめんどくさく感じる人が多いと思いますが、こういう方に、プレゼントがあります。

 かつての通関士試験には、記述式という出題形式がありました。

 

 記述式は、空欄に当てはまる語句を、実際に解答用紙に書かせる問題です。

 ですから、試験勉強では、テキストの赤文字や太文字の1字1句を、漢字で正確に書けるようになっておかねばならず、精神的にかなりこたえました。

 こういう出題が存在したのは、“通関”という作業自体に、細かい作業が求められるからだと思っています。

 衣類なんかは、織り方1つで・染色の有無で税率が変わります。

 犬猫鳥魚といった生物の輸出入には、書類が大量に要ります。とりわけ、鳥は、鳥インフルエンザのこともあり、検疫関係の書類が大変です。

 食べ物にしても、瓶詰めかパック詰めかで、通関手続きは変わります。

 千差万別な手続きを行う「通関」という作業は、常に細かいところに神経を配り続ける仕事、といえないでしょうか?

 記述式は廃止され選択式となりましたが、「通関士試験」というものの本質は、連綿として“見えないところ”で続いていると思います。

 そう、試験の形式が変わっても、たくさんの細々としたことを憶えないといけない、細かい注釈まで意を払わないといけない、条文や法令の文言語句をおざなりにできない、という次第です。

 膨大な暗記事項がありますが、実際の仕事に必要な“資質”を鍛えているんだ、“職業訓練”なのだ、“昔”からそうなんだと、“上手に自分をだまして”試験勉強を乗り越えてください。

通関士のこまごましたもの

 通関士に関するこまごましたことは、「通関士:ブログ記事」をばご参考ください。

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