第32回 理論問題 過去問(令和5年3月実施)

まずは初めに結論を。一口で言うと。まとめ。要旨。

 本問は『完成工事原価報告書』の問題。払い出しの計算は、「先入先出法」で、難しくありません。予定配賦率と配賦差異も、普通のレベルです。テキストと過去問を繰り返しておけば、まず、取れます。

第4問 設問2

 ◇問題◇

 

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解説

 結論から言うと、「答えはこちら」です。

 本問のレベルは「ふつう」です。

 過去問の定番問題です。

ポイント

 第4問の計算問題は、解答用紙を最初に目を通すようにしてください。

 「どういう計算・処理が求められるか」は、解答用紙を見た方が、イメージが湧きやすいです。

 本問では、「完成工事原価報告書」の計算で、材料費等が載っているので、これらを集計しそう、くらいの見当がつくかと思います。

処理1‐把握

 問題文には、「20X2 年9月の工事原価に関する次の<資料>に基づいて、当月(9月)の完成工事原価報告書を完成しなさい」とあります。

 んなもんで、「9月」に竣工した工事の集計をするな、と判断がつきます。

 資料1を見ると、9月竣工なのは、「No.701」と「No.801」と「No.901」なことがわかります。当該3つが完成工事原価報告書の計算対象です。

 対して、「No.902」の工事は、「12月竣工予定」とあるので、これは、完成工事原価報告書の対象外なことがわかります。

 資料1のところか、計算用紙の端っこに、「No.902 対象外」くらいに“大きく”メモして、一目でわかるようにしておきましょう。

 意外に、“勢い”で集計することがよくあるからです。

 計算ミスをすることを前提に、対策を練っておきましょう。

 なお、「竣工」とは、「建物などの完成」といった意味です。

処理2‐未成工事支出金

 資料の2の(1)未成工事支出金のところを見ます。

 「No.701」と「No.801」の未成工事支出金ですが、最後の集計に使いそうなので、各項目を集計しておきましょう。

 電卓をたたくだけですが…、

 材料費:「218,000+171,000」で「389,000」。

 労務費:「482,000+591,000」で「1,073,000」。

 外注費:「790,000+621,000」で「1,411,000」。

 経費:「192,000+132,000」で「324,000」。

 …となります。

 資料2には、(2)の配賦差異がありますが、これは、「後回し」としましょう。

処理3‐材料費計算

 資料3には、「当月における材料の棚卸・受払に関するデータ(材料消費単価の決定方法は“先入先出法”による)」があります。

 資料4の「当月に発生した工事直接費」の「材料費」には、「各自計算」とあるので、資料3で計算することになります。

 計算方法は、問題文にあるように、「先入先出法」です。

 当該は、ご存じのように、先にあるもの(在庫)を、先に払い出していきます。

 難しくないと思いますが、数字を挙げると…、

 「No.701」・・・「600*250」の合計「150,000」。

 「No.801」・・・「400*220」の「88,000」。

 「No.901」・・・「400*220」の「88,000」と、「800*250」の「200,000」と、「200*250」の「50,000」と、「200*180」の「36000」とで、合計「374,000」。

 「No.902」・・・「500*180」の「90,000」。

 …となります。

処理4‐甲部門費 間接費計算

 次に、資料5の工事間接費の配賦を行います。

 まずは、「甲部門費」から見ていきましょう。

 資料には、「1 甲部門の配賦基準は直接材料費基準であり、当会計期間の予定配賦率は3% である」とあります。

 んなもんで、甲部門の工事間接費は、個々の工事の材料費に、配賦率の3%を掛けたらよいとわかります。

 単純な掛け算ですが、電卓をたたくと…、

 「No.701」・・・「150,000*0.03」で「4,500」。

 「No.801」・・・「88,000*0.03」で「2,640」。

 「No.901」・・・「374,000*0.03」で「11,220」。

 「No.902」・・・「90,000*0.03」で「2,700」。

 …と相なります。

 なお、電卓に「定数計算」の機能があると、ラクです。

 カシオだと、「0.03**」と入力した後、「150000=」と打つと「4,500」が、そして、「88,000=」と打つと「2,640」以下が計算できるはずです。

 参考:計算機の小技-定数計算

 さて、後々で、配賦差異の計算をするので、集計しましょう。

 「4,500+2,640+11,220+2,700」で「21,060」が甲部門費の合計となります。

 なお、この集計ですが、先の定数計算をした後に、「GT」キーを押すと、するっと計算できます。

 参考:感動!GT(グランド・トータルキー)

処理5‐乙部門費 間接費計算

 乙部門費の間接費を計算します。

 資料には、「乙部門の配賦基準は直接作業時間基準であり、当会計期間の予定配賦率は時間当たり¥2,200 である」とあります。

 資料の作業時間に配賦率の\2,200を掛ければよいとわかります。

 要は、資料の「当月の工事別直接作業時間」を見ながら、電卓をたたくだけです。

 計算すると…、

 「No.701」・・・「15*2,200」で「33,000」。

 「No.801」・・・「32*2,200」で「70,400」。

 「No.901」・・・「124*2,200」で「272,800」。

 「No.902」・・・「29*2,200」で「63,800」。

 …となります。

 ここも、先に見た電卓の定数計算機能を使えばラクです。「2200**」です。

 集計します。

 「33,000+70,400+272,800+63,800」で「440,000」が乙部門費の合計です。

処理6‐配賦差異の計算 甲部門費

 配賦差異の計算です。

 当方は、自己流のやり方でやっています。

 興味のある人は、「配賦差異の機械的作業‐建設業経理士2級の勉強」を一読願います。

 まずもって、「甲部門費」の配賦額は、「21,060」です。

 資料には、「工事間接費の当月実際発生額 甲部門 ¥20,000」とあります。

 T字勘定で表すと…、

 

 …となります。

 差額は、「21060-20000」で「1,060」です。

 甲部門費の「借方」が「1,060」増える仕訳を切ると…、

 借方:甲部門費 1,060

 貸方:甲部門配賦差異 1,060

 …となります。

 んで、資料2の(2)には、「工事間接費配賦差異 甲部門 ¥5,600 (借方残高) 乙部門 ¥2,300 (貸方残高)」とあります。

 先の仕訳を、甲部門配賦差異のT字勘定に転記すると…、

 

 …となります。

 よって、甲部門費は、「借方」の残高は、「5,600-1,060」で「4,540」となります。

処理7‐配賦差異の計算 乙部門費

 同様に、乙部門費の配賦差異を計算します。

 乙部門費の配賦額は、「440,000」です。

 資料には、「工事間接費の当月実際発生額 乙部門 ¥441,000」とあります。

 差額は、「441,000-440,000」で「1,000」です。

 T字勘定で表すと…、

 

 …となります。

 「乙部門費」の「貸方」が「1,000」増える仕訳を切ると…、

 借方:乙部門配賦差異 1,000

 貸方:乙部門費 1,000

 …となります。

 んで、資料2の(2)には、「工事間接費配賦差異 甲部門 ¥5,600 (借方残高) 乙部門 ¥2,300 (貸方残高)」とあります。

 先の仕訳を、乙部門配賦差異のT字勘定に転記すると…、

 

 …となります。

 乙部門費は、「2,300-1,000」の「1,300」となり、「貸方」残高となります。

処理8‐工事間接費配賦差異月末残高

 解答用紙を見ると「工事間接費配賦差異月末残高」としかないので、甲と乙の部門費を合体することがわかります。

 先に見たように…、

 甲部門費は、「借方」の残高が「4,540」となります。

 乙部門費は、「貸方」の残高が「1,300」となります。

 相殺すれば、「4540-1300」の「3,240」で、「借方」残なので「A」と、相なります。

 これで1つ終わりました。

処理9‐完成工事原価報告書

 残るは、完成工事原価報告書の集計です。

 ひとまず、ここで深呼吸して、何を集計したらいいか(何が計算対象なのか)、もう一度確認しましょう。

 9月に完成した工事は、「No.701」と「No.801」と「No.901」です。これらの個々を集計します。

 一度、資料や計算用紙に当たってみて、どこを計算するか、丸なりチェックなりを入れていってください。こうする方が間違いません。(未成工事支出金の存在を忘れないでください。そして、No902は、計算しちゃダメです。)

 さて、集計していくと…、

 材料費:「389,000+150,000+88,000+374,000」で「1,001,000」。

 労務費:「1,073,000+450,000+513,000+819,000」で「2,855,000」。

 外注費:「1,411,000+1,120,000+2,321,000+1,523,000」で「6,375,000」。

 …となります。

 なお、経費ですが、資料5の(4)には、「工事間接費は経費として処理している」とあります。

 直接経費は、「324,000+290,000+385,000+302,000」で「1,301,000」。

 甲間接費:「4,500+2,640+11,120」で「18,360」。

 乙間接費:「33,000+70,400+272,800」で「376,200」。

 んなもんで、経費は、「1,301,000+18,360+376,200」の「1,695,560」となります。

 原価の合計額は、「1,001,000+2,855,000+6,375,000+1,695,560」で「11,926,560」となります。

 後は、落ち着いて、各数字を解答用紙に記入するだけです。

まとめとこたえ

 答えは…、

 

 …です。

 >>> 次の問題へ。


第32回

 インデックス

第1問:仕訳

 1問:減資

 2問:法人税の納付

 3問:固定資産の交換

 4問:貸倒債権の取立て

 5問:完成工事進行基準

第2問:文章問題

 1問:未払賃金

 2問:銀行勘定調整表

 3問:固定資産の除去

 4問:火災保険

第3問 個別問題

 1問:工事間接費

第4問 理論+計算

 理論問題

 完成工事原価報告書

第5問 総合問題

 精算表:インデックス・ポイント

 精算表:設問1

 精算表:設問2

 精算表:設問3

 精算表:設問4

 精算表:設問5

 精算表:設問6

 精算表:設問7

 精算表:設問8

 精算表:設問9

 精算表:設問10

 精算表:設問11

PDF過去問の閲覧

 結論から言うと、PDF形式の過去問でイライラしている人は、「タブレット」で閲覧する、といった次第です。

 

 当方、PDF過去問の閲覧には、12インチのタブレットを使いますが、「紙」の過去問と遜色なく、問題演習に集中できています。

 公式のPDF過去問は、スマホだと画面が小さくて問題文が読み難く、PCだとキーボードやマウス、配線等が邪魔で、かなりイライラします。

 本格的な“問題演習”には、「タブレット」が最も勝手がよく、ストレスが少ないというのが実感とするところです。

 PDFタイプの過去問演習でイライラしている方は、「タブレット」の活用を勧めます。押入れから出してみてください。

 なお、手許に「タブレット」がない人は、最もコスパの高い、アマゾンの「Fire HD」を推薦します。

 アンドロイド製のタブレットと性能が遜色ないくせに、値段は数割安く、もちろん、PDFの閲覧も可能で、コストパフォーマンスが秀逸です。

 とりわけ、スマホしか持ってない方に勧めます。小さい画面での問題演習は、倍疲れます。

 受験が終わっても、アレコレ使えますし、安価なサブ機としても使えます。これを機に「Fire HD」を買っても、損はないです。

独学向け教材

 教材の詳細は「教材レビュー」で述べていますが、読むのが面倒な方は…、

 簿記2級持ちの方は、ネットスクールの「建設業経理士 過去問題集&テキスト 2級 出題パターンと解き方」1冊で事が足ります。

 簿記3級持ちの方は、テキストと問題集は、TACの「スッキリわかる 建設業経理士2級」と「スッキリとける問題集 建設業経理士2級」を…、

 過去問には、「合格するための過去問題集 建設業経理士2級 」を使えばよいでしょう。

 建設業経理士2級は、市販されている教材が少ないので、大概、こうなるかと思います。試験会場でも、多くの人が同じような教材を手にしていました。

 ところで、電卓です。

 100円ショップで売ってるような、ぺらぺら計算機は計算ミスの元です。

 高品質な電卓を使っていない方は、「簿記検定試験の計算機(電卓)選び」や「売れ筋の電卓は、結局なに?」を参考に、買い換えてください。

 簿記2級では必須の高品質電卓と避けるべきペラペラ計算機

 左のがぺらぺらで、中と右が高品質の計算機です。絶対的に高品質の方が打ちやすいです。

 高品質な計算機

 考えるのが面倒な人は、わたしが愛用している「DF-120GT」にすればよいでしょう。これで支障ありません。建設業経理士もこれで受験しました。

建設業経理士2級のこまごましたもの

 建設業経理士に関するこまごましたことは、ブログに投稿しています。

 「建設業経理士の投稿記事」をばご参考ください。

 合格体験記は「建設業経理士2級の合格体験記」で、合格証書は「建設業経理士2級の合格証書」です。

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