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簿記2級出題区分の改定ポイント2-なくなる論点(特殊商品売買・社債・繰延資産・本支店会計)

ごぞんじのように、簿記2級の出題区分の改定がなされます。

平成28年度以降の試験で、出題されなくなる主要な論点は、以下の4つです。

念のために言っておきますが、平成27年度の試験(2015年11月の本試験、2016年2月の本試験)では、そうではないのでご注意ください。

特殊商品売買

これまでの簿記2級では、割賦販売を代表とする特殊商品売買は、メジャーな論点でよく出題されていました。

ですから、皆が皆、よく勉強していました。

が、実務的に、一部の特殊商品売買は、もはや行われていないために、簿記2級では削除と相なりました。

28年度以降は、割賦販売のあのメンドクサイ表や割賦販売契約といったヤヤコシイ勘定科目を憶えなくて済みます。

勉強した者からすると、少しさびしいものがあります。

社債

主として、簿記2級とは、中小企業の会計・経理担当者向けに設計されている試験です。

ちなみに、簿記3級は個人事業者向けで、簿記1級は大企業の経理担当者向けです。

で、当該社債ですが、社債を発行して引き受け手がいるような、信用のある企業は、一口で言うと、『大企業』くらいにしか存在しません。

つまり、中小企業が社債を発行するケースはごく少数なので、簿記2級の試験対象者とはそぐわないといった塩梅で、簿記2級からは削除と相なりました。

繰延資産

繰延資産は、税法の改正で多くが即時償却=その期の費用にすることが認められていたり、償却額が大きくなったりで、あんまり、計上されなくなっています。

そら、企業からしたら、1円でも税金が安くなるなら当期の費用にしますよ。誰が費用を繰り延べるか、ってな塩梅です。

このため、相対的に重要性が低くなったので、2級からは削除、1級に移行という寸法です。

本支店会計

なくなって一番うれしい論点ではないでしょうか?

今後の簿記2級からは、本支店会計のうち、「未達事項の整理」「内部利益の除去」「本支店財務諸表の合併」といった主要な論点がなくなり、「本支店間取引の処理」のみとなります。

そもそも、昨今では、未達事項が出ないような経理システムにしています。ですから、未達事項そのものがあまり“ない”状況です。

内部利益についても、以前のように振替価格を設けると、手間ばかり食うし内部処理も複雑になるしで、設定しないほうが主流となっています。

こうした理由から、本支店会計の大半の論点が削除と相なりました。

そのほか、細かい削除事項はありますが、大きいものは以上です。

シチメンドクサイ論点がなくなるので、今回の出題区分の改訂は、そう悪いものではありません。(外貨建取引のように細かくてウザイ論点も増えますが…。)

簿記2級出題区分の改定ポイント1-カンタンな勘定科目言い換え系

ご存知のように、簿記2級は平成28年度から試験範囲が改定されます。

当該改定のうち、簡単な部類に入るのが、以下の勘定科目言い換え系です。

それぞれ新しく追加される勘定科目なのですが、内実は、「言い換え」だけなので、カンタンです。

「勘定科目が頭に入っていればいいだけ」なので、しっかり得点源にしておきましょう。

クレジット売掛金

普通の小売店でも、クレジットカードによる決済が増えているのを背景に導入された勘定科目です。

クレジット払いの売上の際に用い、通常の売掛金と区別するのが、勘定科目のねらいです。

商工会議所の配布している資料によると、普通に売掛金の処理と同じで…、

・クレジット売掛金  99/売上  100
  支払手数料     1

…とするだけです。まさに、勘定科目の言い換えでしかありません。

電子記録債権・電子記録債務

電子記録債権・電子記録債務もまた、勘定科目の言い換えです。

実務的なことを言うと、領収書等を作ると印紙税を払わなくてはいけないために、新たな決済方法として「電子記録債権・電子記録債務」が急速に普及しています。

この背景を受けて、今回、簿記2級に登場という寸法です。

一口で言えば、「売掛金」と「買掛金」を、今風に言い直したものと考えておけば、学習上、支障はありません。

商工会議所の配布している資料によると…、

・仕入時:仕入 ○○/買掛金 ○○

・発生記録の請求を行った:買掛金 ○○/電子記録債務 ○○

・支払期限が到来した:電子記録債務 ○○/現金 ○○

・売上時:売掛金 ○○/売上 ○○

・発生記録の請求を行った:電子記録債権 ○○/売掛金 ○○

・債権の一部を譲渡した:現金 ○○/電子記録債権 ××
                    電子記録債権売却損 △△

…となっています。本当に目新しいものはないですね。

言い換え系は、これら「クレジット売掛金」と「電子記録債権・電子記録債務」しかありません。

改定項目なので、絶妙に総合問題の1部で問われる可能性があります。

内容は簡単ですので、そう不安はありません。

役務収益・役務費用

経済のサービス化を受けて、「役務収益・役務費用」という勘定科目が追加されます。

資料の例では、専門学校の講座が掲載されていて…、

・○○講座(1年)の料金を受け取った:現金 200/前受金 200

・決算日。講座の6割は終了している:前受金 120/役務収益 120

…ってな仕訳が例として挙げられています。

まあ、シンプルな処理ですが、決算整理仕訳の1部として出題しやすいので、こういうものがあるとだけは記憶しておくべきでしょう。

以上、今回の改訂にて、目新しい勘定科目でした。

平成28年度以降の簿記2級には、予想問題集を追加する

結論から言うと、大きく変わる簿記2級ですが、良質なテキストと問題集、過去問で、しっかりと問題演習を重ねるという勉強方法は、あんまり変わらない、といった次第です。

ただし、変わるところもあります。

従来と変えないといけないことは、「予想問題集」を必ず追加して、新論点の問題演習をすることです。

ご存知のように、簿記2級の出題区分は、平成28年から29年、30年と3年かけて、出題区分に大きな変更が加えられます。

しかし、簿記2級に新たに加わる論点の多くは、簿記1級で出題済みの論点ですので、それらの焼き直しか、または、ダウングレードになる公算が大です。

出す方も出される方も、簿記1級での出題ノウハウがありますから、そう大きな混乱はないように思われます。

出題者側は、簿記1級の試験問題からホームラン級に逸脱する問題を、わざわざ手間をかけて新たに作製しないだろうし…、

専門学校等の試験機関も、わざわざ簿記1級の出題内容や諸データを無視して、新たに簿記2級用の問題なり指導方法を編み出さないだろう…ってな寸法です。

また、試験制度的・難易度的に考えても、簿記2級の問題が、簿記1級より高度かつ難しくなるというのは、おかしな話です。

こんな次第で、おそらくは、出題者側も穏当な出題をするでしょうし、各出版社・専門学校も試験範囲の改定に対応できている教材を出版するでしょうから、それらをこなしていけばいい、ってな寸法です。

ただ、先述したように、わたしたち受験生にとっては、「予想問題集」を追加しなくてはいけません。

これまでは、良質なテキストと問題集で実力を付け、過去問で合格レベルにまで仕上げるというのが鉄板の勉強方法でした。

しかし、当たり前ですが、新しい論点には、「過去問」がありません。

ですから、予想問題集にて、新論点の問題演習の数を稼いでおかねばならないのです。

予想問題集は、過去問に比べると、問題の質や精度は落ちます。

しかし、「問題演習が不足している状態よりかは、絶対的にマシ」です。

たとえ、予想問題集の出題が本試験とズレていても、『問題演習の数』があると、何とかウンウン考えられて、正解に肉薄できるものなのです。

なにもしていないに比べたら、部分点の確保率は雲泥の差で、絶対的に合格率は上がります。

改定が済んで本試験が落ち着くまでは、従来のテキスト・問題集・過去問に、予想問題集を付け加えた試験勉強としてください。

それか、新論点だけに絞った軽めの問題集の販売も予想されますので、順次、導入していきましょう。

ゆめ、かつての「テキスト・問題集・過去問で十分」というやり方は踏襲しないようにしてください。

なお、「過去問の代わりに予想問題集」ではないので、注意してください。

あくまで、「テキスト・問題集・過去問」に、プラス「予想問題集」です。

過去問は過去問で、超絶に重要です。予想問題集をするんだから、過去問は省略していいやなんて考えませんように。

受験生の実質的な変化は、“このくらい”かと思います。

あと、大事なことですが、今回の出題範囲の変更は、「商業簿記」だけです。

つまり、もう1科目の「工業簿記・原価計算」には、変更がないのです。(現時点で、工業簿記・原価計算も改訂するというアナウンスはありません。)

そう、合格の生命線は、『工業簿記・原価計算で、どれだけ点数を確保するか』にかかっていることは、新旧ともども、変わりはない、という寸法です。

大変化に見舞われる商業簿記だけに目を奪われることなく、従来型出題の工業簿記・原価計算をおろそかにしませんように。

わたしなら、大変化に見舞われる商業簿記は遠巻きにして、変化のない工業簿記・原価計算をシッカリ勉強して、得点源+点数の上乗せを図ります。