簿記3級の第1問の仕訳問題で頻出なのが「資本の引き出し」。当該仕訳についての“狙われる理由”と注意事項を最低限に述べる。出される理由は「手薄だから」。当該論点は3級固有の特殊な論点であり、2級等では出番がないが、だから、狙われやすい。きちんと処理の仕方を頭に入れておく。
「資本の引き出し」が狙われるのは、「資本が絡む取引は、そう数がないため、受験生が手薄だから」です。
当該論点は、「そういうもの」として、マルッと憶えておけばいいです。
なお、「資本の引き出し」とは、個人事業者本人の『自家消費』なり『個人流用』のことです。
どうしてこんなことが起きるかというと、八百屋などの個人事業者は、自分の家で商売しているからです。
電気や水道を、“別々に引く”こともできませんから、「商売の用途」と「個人の用途」が一緒になっています。
ですから、商用と私用の区別の意味で、こういう処理も生じる、という次第です。
また、時折、自分とこで仕入れた商品を「食べたり呑んだり」することもある(たとえば、売れ残りのトマトをケチャップにするなど)ので、こういった『個人流用』も、「資本の引き出し」で処理する、ってな塩梅です。
まあ、こんな仕訳を切る事業者はいませんが、「処理」としてあることを憶えておきましょう。
である「資本の引き出し」は、2パターンあります。
当該金額は、「資本金」か「引出金」の、どちらかで処理します。
よくある問題文としては…、
「光熱費20,000円が引き落とされた。このうち、事業用途分は12,000円で、残額は店主個人が負担する。」
…となっています。
で、続いて、問題文では指示があって…、
「資本金で処理する」か…、
「引出金で処理する」の、どちらかが『指定される』はずです。
まあ、指定がない場合も考えられるので、「資本の引出」=『自家消費』なり『個人流用』の出題があれば、「勘定科目は資本金か引出金」を使う、と憶えておきましょう。
答えは以下。
「資本金」指示の場合は…、
「引出金」指示の場合は…、
ぶっちゃけ言うと、「資本の引出」のような取引は、“よくない”ものです。
商売用の金や物を、「1個人」で使っている、ってな塩梅ですから、会計という意味では、“推奨される”ものではないです。
居酒屋の主人が、自分の店の酒を飲んでいるのは、個人的には好きですが、『商売』や『経理』『会計』という点から見ると、ダメダメです。
では、なぜ、こうした“非推奨”の取引が出題されるのかというと、先述したように「資本絡みは手薄だから」です。
「資本」が関係する取引なり処理は、主として、「開業時」か「増資時」か「決算時」くらいしか出番がないので、ほとんど姿を現しません。
ボリュームもほとんどありませんから、受験生も、得てして、サラッとしか見ないといった次第です。
だからこそ、受験生を狩るのに血眼の出題者が、当該論点を狙ってくる、という次第です。
底の浅い受験生だと、自家消費や個人流用の処理について、全くわからないはずで、???のまま、白紙解答することでしょう。ニヤつく出題者の顔が目に浮かびます。
「資本の引き出し」の成り立ちや意味・目的は少々難ですが、処理はカンタンです。
自家消費や個人流用の分を、「資本金」か「引出金」に充てるだけです。
もう一度、正解の仕訳を挙げておきます。
貸借の差額を、当該2つの勘定科目のうち、どちらかで埋めたらいい、ってな塩梅です。
ちょっと手が込んでくると、「指定」がなく、ただ、指定勘定科目群に“ぽつん”と、資本金だけを、または、引出金だけを置いている、ってなことが考えられます。
んなもんで、当該論点では、「資本金」と「引出金」を使うということを、しっかり頭に入れておけば、事は済みます。
勘定科目の「引出金」には、よくよく、漢字に注意してください。
よく似た勘定科目に、「引“当”金」があるからです。
そう、お馴染みの「貸倒引当金」です。
文言が実によく似ているので、本当に無意識で、「引出金」と書いたはずなのに、ついつい「引当金」と書いてしまいます。
ほとんど書く機会のないので、実に間違いやすいです。
「引“出”金」なので、今一度、漢字を頭に刻んでおきましょう。
「資本の引き出し」が出るのは、受験生が資本が絡む取引に疎いからです。
故に、受験生ハンターの出題者が狙ってきます。
しかし、要領や処理は、カンタンです。
『心の軍師』に、『敵は当方の弱い部分を狙ってきておりますな。しかし、ご安心くだされ。勘定科目だけを憶えておけば、怖いものではありません』と、助言してもらってください。
ところで、当該「資本の引き出し」は、簿記3級の固有の論点です。2級ではまず出ないので、深入りする必要は全くありません
また、当該論点には、「商品の自家消費」という出し方もあるので、併せて見ておいてください。
なお、仕訳がうまく切れないという人は、「取引の8要素」が頭に刻まれていないからです。
「独学の簿記3級:商業簿記」を参考してください。当該8要素が頭に入ってないなら、無理して問題を解かなくていいです。
また、独学向け教材については「簿記3級の教材レビュー」を一読ください。
2016年10月14日 11:09 AM
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