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簿記3級の自己受為替手形と自己宛為替手形は、読み替えると混乱しない

簿記3級の中で異色のメンドクサさを誇るのが「為替手形」ですが、特殊な為替手形である「自己受為替手形」と「自己宛為替手形」も、なかなかに骨が折れる論点です。

当該2つの攻略法はただ1つです。

それは、為替手形の仕組みと語句を、完全に理解しておくこと、です。

つまり、為替手形とはどういう取引であり、そして、為替手形にまつわる「振出人」「名宛人」「指図人」のそれぞれの区別と言い換えとが完全に頭に入っているかどうかが攻略の鍵ってな次第です。

反対に言うと、為替手形の先の語句がシッカリ理解できていないなら、自己受為替手形と自己宛為替手形はやる必要はありません。

元々のところがわかっていない状態で、これら2つの為替手形の勉強をしても、輪をかけてわからなくなるばかりです。

SNSやメールで質問する前に、まずはきっちりと「為替手形」のテキストを読み直しましょう。

自己受為替手形と自己宛為替手形の勉強は、まず元々の為替手形がキッチリ理解できてから、です。

さて、「為替手形が頭に入っている」方は、以下のように、“読み替えつつ”2つの為替手形を理解しましょう。

まず、大前提ですが、「自分は振出人」として、考えていきます。

自己受為替手形の攻略

自己受為替手形は、以下のように読み替えて理解します。

繰り返しますが、大前提は「自分は振出人」です。

①「自己受」の「自己」を「自分」と読み替えて、

②「自己受」の「受」は「受取人」の意味ですから、

③「振出人である自分」は「受取人である」と読み直します。

自己受為替手形とは、「振出人である自分が、受取人でもある為替手形」と読み替える次第です。

そう、自己受為替手形は、「振出人と受取人」が同一の為替手形なわけですが、「振出人=自分=自己=受取人」てな感じで“繋げながら”憶えることで、混乱を少なくできる手合いです。

「自分は振出人だが、受取人」ですから、仕訳はそっくりそのまま「受取人」のを拝借して…、

『受取手形 ○○/売掛金 ○○』

…との仕訳を切ることになります。

為替手形においては、基本的に、振出人は手形を振り出した時点で、手形の権利義務関係から外れますから、切る仕訳は、「受取人」のみでいい、ってな感じで憶えます。

蛇足ですが、自己受為替手形の支払人(名宛人)は、通常の為替手形と同じ仕訳『買掛金/支払手形』です。

自己宛為替手形の攻略

要領は先と同じです。

もう一度言いますが、大前提は「自分は振出人」です。

①「自己宛」の「自己」を「自分」と読み替えて、

②「自己宛」の「宛」は「名宛人」の意味ですから、

③「振出人である自分」は「名宛人である」と読み直します。

自己宛為替手形とは、「振出人である自分が、名宛人でもある為替手形」と読み替える次第です。

自己宛為替手形は、「振出人」と「名宛人」が同一な為替手形なわけですが、「振出人=自分=自己=名宛人」てな感じで繋げて憶えていくことで、スムーズに整理が付くってな寸法です。

「自分は振出人だが、名宛人(=支払人)」ですから、仕訳はそっくりそのまま「名宛人(=支払人)」のを拝借して…、

『買掛金 ○○/支払手形 ○○』

…との仕訳を切ることになります。

先述しましたが、振出人は基本的に、手形を振り出した時点で、手形の権利義務関係から外れます。ですから、切る仕訳は、「名宛人(=支払人)」のみでいい、ってな感じで憶えます。

なお、残る「受取人(=指図人)」の仕訳は、通常の為替手形と同じで、『受取手形/売掛金』です。

こんな風に、主語を「自分」にして、「自分」を「振出人」として固定して考えていくと、為替手形の言葉がグチャグチャにならず、整理して当該2つの特殊な為替手形:自己受為替手形と自己宛為替手形とを、憶えられるかと思います。

もっというと、為替手形って、『語彙』の問題なんです。

為替手形の勉強方法‐最優先は振出人で他は後回し

簿記3級の為替手形の簡便な勉強方法は、以下の通りです。

まず、優先順位ですが、一番狙われる「振出人の仕訳」を、一番先に憶えます。

「振出人の仕訳」は、「買掛金 ×× 売掛金 ××」(※)です。

名宛人や指図人の仕訳は、その後でいいです。

なぜ、振出人の仕訳の優先順位が高いのかと言うと、問題文は「“為替”手形を振り出した」なのに、「手形を振り出した」と誤読して…、

『買掛金 ×× 支払手形 ××』

という仕訳を、反射的に切る受験生が、たくさんいるからです。

本当に気持ちがいいくらいに、「振り出した」に条件反射する受験生は多数です。

言うなれば、簿記3級の為替手形は、『一種のひっかけ問題』と考えておいて支障はありません。

そう、シッカリ勉強していても、本試験時に時間に押されて焦っていたりすると、「振り出した」だけに反応して、「買掛金○○/支払手形○○!!」とやりかねないのです。

普段から「為替手形=ひっかけ問題の1つ」と意識しつつ、問題文の文言に意を払うようにしましょう。

そして、です。

振出人の仕訳は、勉強不足のてきとー受験生を振り落とすのに最適な出題となっています。

てきとー受験生は、為替手形の意味など少しも押さえていませんから、問題文中の「売掛金」の存在に気付くことなく、バンバンと失点してくれます。

こんな次第で、効率よく受験生を落とせるのが、「振出人の仕訳」となっており、出題者からすれば「魅力のある論点」です。

ですから、為替手形を勉強する際は、まず第一に、「振出人の仕訳」である「買掛金 ××/売掛金 ××」を、キッチリ憶えるという次第です。

なお、振出人は、この時点で、為替手形にからむ処理は終了です。振り出したら、振出人の為替手形処理は終わりです。

このことは、頭の片隅に置いていてください。

為替手形の決済が済んだなんて連絡があっても、「振出人に絡んだ処理は既に終了」なので、何かしらの仕訳を切る必要はありません。

ここも、出題者の「ひっかけ」的作為を入れやすいので、要注意です。

※上記仕訳では、便宜上「買掛金」としていますが、問題文の指定によっては、ごく稀に「仕入」になります。きちんと問題文を読んでから仕訳を切ってください。まあでも、ほとんどは売掛金の決済なので、「買掛金 ××/売掛金 ××」です。

名宛人の仕訳

後回しにされた名宛人や指図人の処理ですが、問題分の文言を読めば、“何となく”仕訳を切れるので、ぶっちゃけ簡単です。

名宛人は、要は、為替手形を引き受ける人ですから、仕訳も単純です。

買掛金を支払手形に振り替える的な処理と踏んでおけばいいでしょう。

『買掛金か仕入 ××  /  支払手形 ××』

…となります。

強いて注意点をあげるとすれば、問題文の指定です。

買掛金か仕入のどちらの処理になっているかを、丁寧に読み取ってください。

手形の決済時も、極めて普通な処理なので、問題文を読めばわかるでしょう。

指図人の仕訳

指図人は、要は、受け取る人なのでさらに単純です。

売掛金を受取手形に振り替える処理と踏んでおけば、解答上問題はないでしょう。

『受取手形 ××  /  売掛金か売上 ××』

…となります。

注意点を強いてあげるとすれば、問題文の指定です。

売掛か売上のうち、どっちの処理を求めているかを、丁寧に読み取ってください。

手形の決済も、極めて普通な処理なので、問題文を読めばわかります。

振出人名宛人指図人受取人支払人引受人

為替手形には、語句が氾濫します。

混乱してませんか?

為替手形の憶え方」をご一読ください。

また、使っているテキストを何回読んでも、為替手形がよくわからないときは、「教材レビュー」で挙げている本格教材に切り替えた方が無難です。

為替手形の「振出人」「指図人」「名宛人」の憶え方-簿記3級の難所攻略

簿記3級の難所で、初心者キラーとして定評のある、為替手形の憶え方です。参考にしてみてください。

為替手形の関係図-振出人・名宛人・指図人

答えから言うと、振出人(自分)『○○さん!!××さんに払ってね』です。

為替手形が難しいのは、まつわる語句がゴチャゴチャしているからです。

参考:為替手形が難しい理由

ですから、以下のようにイメージして語句を整理しておくと、今後、ド混乱することはありません。

まず、「振出人」である「あなた」が、【名宛人】である【○○さん】と話している場面をイメージします。

最初に「振出人」を「あなた」に、つまり「自分」とするのは、関係を固定するためです。

為替手形は、取引の主体が入り組むので、「とりあえず、自分が振出人」にして、3者の関係を見ていくという次第です。

で、あなたが、[指図人]である[××さん]を指さしながら、先のセリフ『○○さん!!××さんに払ってね』と言っている情景をイメージします。

わざわざ「指差し」と限定しているのは、後々で、必ず指図人と名宛人の混同が生じるからです。

正直、日本語がよくないのです。

「宛」なんて字が入ってますので、(あれ、なになに宛という意味で、名宛人に対してお金が動くんだっけ?)なんていう混同が生まれます。

ですから、「指差し」を頭に描いて、指を指されている人が[指図人]という風に憶えるって塩梅です。

で、3つを3つ憶えるよりも、まず、2つを押さえて、残りが「なんたら」と言う風に憶えると、後々混同が生じません。

つまり、「わたし」が「振出人」で、指を指されている人が[指図人]ですから、残った人が残る【名宛人】と相なります。

もう一度、関係図をよく見ておいてください。

為替手形の関係図-振出人・名宛人・指図人

言い替えをマスターする

次に、為替手形を最強に混乱させている「言い換え」ですが、まず、言い換え語句が全部で「6個」あることを憶えます。

①まず、振出人には、言い換えがありません。

振出人は振出人のままです。これで1つ終了です。残り5つです。

②指図人は受取人

再度、振出人『○○さん!!××さんに払ってね』を思い浮かべます。

為替手形の関係図-振出人・名宛人・指図人

指図人からすると、自分に払ってあげてと、“指を指されながら言われている”ので、当該指さされ人である自分が、お金を受け取ることになります。

ですから、「受取人」となります。

指図人は受取人で、これで2つ終了です。残るは3つです。

③「払ってね」と言われている人が、「名宛人」で「支払人」で「引受人」

再度、振出人『○○さん!!××さんに払ってね』を思い浮かべます。

為替手形の関係図-振出人・名宛人・指図人

「払ってね」と言われているのですから、そのまま「支払人」となります。

「払ってね」とのお願いを引き受けるので「引受人」です。(正確に言うと、為替手形という約束事を引き受けます。)

で、まとめると、「名宛人」は「支払人」で「引受人」となるって寸法です。

これで3つ終了で、6個全部が済んだという塩梅です。

少し乱暴な憶え方ですが、このように憶えると、名宛人が何で引受人が何で支払人がどれ?なんてことがなくなると思います。

簿記3級の初心者殺しである為替手形。

無事、虎口を脱出できるようお祈りいたします。