簿記3級の第1問の仕訳問題で頻出なのが「売上」。当該仕訳についての“狙われる理由”と注意事項を最低限に述べる。出される理由は「いくらでも難しくできる」から。現状、普通の仕訳は問題には出ない。あれもこれもが付け加わった、応用的な問題が出るので、1つ1つを正確に処理していく。
昨今では、普通の仕訳は出題されず、応用的な問題が大半です。
「売上」の仕訳も、あの手この手で論点が付け加えられて、格段に“複雑化”されているので、「慣れ」が必要です。
ま、1つ1つの論点は手に負えるので、慎重に解答すれば1点取れます。
よくある問題文としては…、
「商品5,000,000円を売り上げた。代金のうち、3,000,000円は手付金と相殺し、1,000,000円は他店振り出しの約束手形の裏書譲渡を受け、残る1,000,000円のうち、800,000円は同店振り出しの約束手形で、200,000円は掛とした。また、運賃50,000円を現金で支払ったが、当方負担は25000円で残りは先方負担である。」
…となっています。
答えの仕訳を先に挙げておきます。
受験生ハンターである出題者の1本目の矢が、「3,000,000円は手付金と相殺し」部分の「手付金と相殺」です。
「手付金」は、何の勘定科目で処理されるかを、問うているわけです。
手付金は、ごぞんじ、「前受金」で処理されたはずです。
念のため、仕訳を挙げておくと、商品代金の手付金を受け取ったときの仕訳は…、
現金 3,000,000 / 前受金 3,000,000
…という仕訳が切られているわけです。
ですから、ここでは、貸方に計上されている「前受金」を減らす処理となります。
受験生狩り中の出題者の2本目の矢が、「1,000,000円は他店振り出しの約束手形の裏書譲渡を受け」部分です。
「手形の裏書譲渡」の意味と目的とを、問うているわけです。
ご存知のように、「受取手形」が増加する仕訳と相なります。
息を潜めて獲物を狙っている出題者の3本目の矢が、「800,000円は同店振り出しの約束手形」部分です。
実に、イヤらしい出題です。
当該処理は、普通の「受取手形」の処理です。
しかし、殊更にイヤらしいのは、先に「手形の裏書譲渡による、受取手形」の処理があるところです。
底の浅い受験生は、(???…アレアレ、受取手形が2つもある…)ってな塩梅で、混乱するはずです。
しかし、通常通りに「受取手形」を増やす仕訳を切るまでです。
美味しんぼの受け売りばかりの出題者は、このような、「普通の仕訳」を入れてきて、受験生を混乱させることがあるので、基礎・基本の仕訳も、しっかり見ておいてください。
わざと苦しいところを狙う出題者の4本目の矢が、「200,000円は掛」です。
単に「売掛金 / 売上」の仕訳を切るだけなのですが、ここまで複雑化していると、この仕訳を切るのに、不安な心持になります。
(…これ、売掛金だよなー。なんか別の処理があったけ?)などと、思い悩んではいけません。
そういう疑心暗鬼こそ、出題者の罠(意図)だからです。
また、当該「売掛金」には、後述するように、もう1つ、「罠」が仕掛けられています。
血まみれのブラディ出題者の5本目の矢が、「運賃50,000円を現金で支払ったが、当方負担は25000円で残るは先方負担」です。
ここは慎重に考えなくてはいけません。
当方負担の運賃は、「発送費(※)」で処理して…、
先方負担の運賃は、「立替金」で処理します。
受験生が混乱するのは、「仕入の場合だと、付随費用は仕入に含める」ことが頭に残っているときです。
(売上げ時の付随費用はどうしたっけ?)と、疑心暗鬼してしまうのも仕方がありません。
しかし、心を強く持って、売上諸係りは、普通に処理します。
くれぐれも、発送費を、「売掛金」に含めないでください。
なお、「発送費」は、支払運賃や運送料や送料といった勘定科目の場合もあるので、「使用勘定科目群」からきっちり該当する勘定を選んでください。
もし、「使用勘定科目群」にはない勘定で解答すると、「×」となるので、ここも要注意です。
ド定番の「売上」の仕訳でも、出しようによっては、ここまで複雑な問題ができてしまいます。
1つ1つが単独で出されたら解けるでしょうが、いっぺんに来られるだけで、たちまち苦戦してしまいます。
こんな問題を出されたら、底の浅い受験生は一気に狩られてしまうでしょう。まさに血の海です。
出題者は、徹底して受験生の弱いところを狙ってきます。いい「的(まと)」にならないよう、しっかり勉強しておきます。
ま、1つ1つの処理は、基礎・基本レベルなので、勉強した受験生なら、苦戦はするでしょうが、点数は取れるはずです。
『心の軍師』に、『すべてを相手にする必要はありません。各個撃破です。』と、助言してもらってください。
なお、仕訳がうまく切れないという人は、「取引の8要素」が頭に刻まれていないからです。
「独学の簿記3級:商業簿記」を参考してください。当該8要素が頭に入ってないなら、無理して問題を解かなくていいです。
また、独学向け教材については「簿記3級の教材レビュー」を一読ください。
2016年10月20日 11:51 AM
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