簿記3級の第1問の仕訳問題で頻出なのが「当座借越」。当該仕訳について“狙われる理由”と注意事項を最低限に述べる。実務上、重要な取引なので、勘定科目を暗記・記憶するのみならず、取引の意味と目的とを、しっかりテキストを読んでおく必要がある。一口で言えば「短期の借り入れ」である。
当座借越(とうざかりこし)の論点は、仕訳問題で頻出です。
狙われる理由は、「多くの受験生が、当座借越に疎いから」です。
まず、「当座借越」をざっくり言うと、わたしたちの「総合口座(普通預金と定期預金)」の関係です。
銀行口座で「定期預金」をしていると、当該預金の金額だけ、お金を「立て替えて」くれる口座があります。
代表的なのはゆうちょ銀行の「総合口座」です。
たとえば、公共料金の引き落としの際に、普通預金にお金がなかったとします。
この場合、定期預金をしていたら、当該金額を上限に、銀行が支払ってくれる(立て替えてくれる)といった塩梅です。もちろん、当該立替分を支払わない(普通口座に入金しない)と、定期預金で相殺されます。
「当座借越」は、総合口座の企業版で、銀行と当座借越契約を結んでおくと、当該契約金額の分だけ、預金に不足が合った場合に立て替えてくれるという次第です。
(ゆうちょは貯金とかのそういうアレは見逃してください。)
よくある問題文としては…、
「買掛金500,000円の決済日になったが、当座預金には300,000円しかなかった。当社は、総額500,000円の当座借越契約を結んでいる」
…です。
仕訳は以下のようになります。
間違いを恐れずに言うと、「当座借越とは、ごくごく短期の借入金」とか「当座借越とは、ごくごく短期で貸してくれるお金」くらいに考えておけば、仕訳で悩むことは少ないはずです。
「当座借越」という名称で、銀行から借金して支払っている、ってな感じでつかんでおくといいでしょう。
冗長ですが…、
…先の仕訳の背景には、こういう仕訳があって、その合算である、と考えておけば、間に合います。
もう既に、「当座借越」枠を使っているケースの出題もあります。
よくある問題文としては…、
「1,000,000円の受取手形を割り引き、割引料10,000円を差し引いた残額と当座預金に預けた。なお、当座借越の残高(貸方残高)が200,000円ある。」
…ってな塩梅です。
答えの仕訳は以下。
先述したように、当座借越とは、「ごくごく短期の借入金」と捉えて、「入金、即、借金の返済」と考えれば、すんなり仕訳が切れるように思います。
以下は、非常に細かいし、そんなに出ないので無視しても構いません。
先に述べた処理は「2勘定制」のものです。
しかし、当座借越の処理には、「1勘定制」のものがあります。
その名の通り、「1つの勘定」しか使わない処理です。
1勘定制では、「当座」しか使いません。だから、「1」勘定制なのです。
対して、先の2勘定制では、「当座預金」と「当座借越」の「2」つの勘定を使う、ってな次第です。
要領的には、明らかに「1勘定制」の「当座」オンリーの方が『楽』です。
問題文で何を言おうと、全部「当座」で処理すればいいからで、正直、「問題になりません」。
先のややこしい受取手形の仕訳も…、
…こんな風になってしまい、考える要素が激減しています。
ですから、「1勘定制」の「当座」はあまり出ないといった塩梅です。
ただ、孤独のグルメを気取る出題者は、「2勘定制が頻出問題だからこそ、受験生の盲点を突くため」に、当該1勘定制を出してくることが考えられます。
難しく考える必要はありません。「1勘定制」の「当座」だと、「全部が“当座”で楽できる」と思ってください。
簿記3級は、「実務重視」路線です。
仕訳だけを憶えるのではなく、「当座借越」という取引の意味と目的とを、テキストできっちりつかんでおいてください。
なお、仕訳がうまく切れないという人は、「取引の8要素」が頭に刻まれていないからです。
「独学の簿記3級:商業簿記」を参考してください。当該8要素が頭に入ってないなら、無理して問題を解かなくていいです。
また、独学向け教材については「簿記3級の教材レビュー」を一読ください。
2016年10月1日 1:54 PM
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