「みなす」と「推定する」は、意味が全然違うので要注意です。このページでは、法律の文章の中で使われている「みなす」と「推定する」の意味の違いを見ていきます。
「みなす」と「推定する」とは、どっちも同じような意味なのですが、「強度」の違いがあります。
そこが注意を要する点で、意味するところ・指示するところは、別物です。
結論から言うと、「みなす」とは、本来そうでなくても、法律上、そのようなものとして取扱う、ということです。事実と違っていても、すぐに修正が効きません。法律上、「そう」決まってしまっているからです。
「推定する」とは、はっきりしないんだけど~法律関係や事実関係からするとこうだよね、と一応の判断を下すことをいいます。
「推定」されたことは、事実と違っている場合に、修正することが容易です。
実際に「みなす」がどのように使われているかを、見ていくことにしましょう。
2 被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時胎児であつた子が生まれたときは、前項の規定の適用については、将来に向かつて、その子は、被保険者又は被保険者であつた者の死亡の当時その者によつて生計を維持していたものとみなし、妻は、その者の死亡の当時その子と生計を同じくしていたものとみなす。
おなかの赤ちゃんは、実際に生まれてませんから、いっしょにご飯を食べていません。ですから、生計をともにしていたとは、言えないわけです。
年金の支給要件は、「生計をともにする」ことが必要なのですが、法の文章をそのまま当て嵌めると、「赤ちゃんが生まれて、一緒にご飯を食べていた人」には、年金が支給されますが、「妊娠中だった人」には、支給されなくなってしまいます。だって、「生計」してないからです。
当該「みなす」は、「実際には生計してないけど一緒にご飯を食べていたことにする」ということです。つまり、おなかに赤ちゃんがいて生計していない場合でも、上記の条文では、「年金の受給対象者とします」と言っているわけです。
民法の親族法にも、似た規定があります。
民法 第886条 1)胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
生まれてはいないけど、生まれているものとして確定させるということです。
推定には、超有名でアレでアレな条文があるのでこれを押えれば一知半解でバッチシですw
民法 第772条 1)妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
事実と違っている場合は、修正することができますw
逆に、修正をしなければ、「その子はあなたの子ども」として、今後扱われていきますよ、ということです。
一口で言うと、法律上、そのようなものをして取り扱う、確定させる、決めるという強い意味を持つのが「みなす」です。
感じ的にいうと、「(事実とは異なるが)そういうことにする」「(事実と違うときもあるだろうが)そういうものとする」「(あーだこーだ言えるだろうが)法律的にそのように確定する」てな、感じでしょうか。
対して、多分そうでしょうという、ちょいと弱めの意味が「推定する」です。
ニュアンス的には、「そういうことにしておきますかな」という感じです。
法律の正誤問題には、よくみられる形式です。行政書士の法学などに、よくでそうですね。過去問等で「みなす」と「推定する」を入れ替えて出題する引っ掛け的な問題に当たった記憶があります。
テキストや条文を読むときに、強いんだな、弱いんだなと考えながら読むと、漫然とせずに読み進めていけるかと思います。
修正のできる、できないと言うのがわかりにくいですね。
理解するには、かの有名な失踪宣告をアタマを浮かべてください。失踪宣告は死亡とみなされます。
失踪宣告がされると、「みなす」なので、死んだものと扱われます。生きとるがな!とあなたが叫んでも、法律上は死んでいます。事実として生きていても、死んでいることになってます。
だから、車の免許も取れませんwww住民票が出ないからです。
あんさん、死んでまっせ、といわれるのがオチです。
これが「修正ができない」ということです。
では、どうやって間違いを正すかというと、「取消の訴え」をして、最初から、失踪がなかったことにする作業を行うのです。
取り消しがされると、最初から行為そのものがなかった、ことになります。
「推定」は、ちゃうよ!というと、ハイよ!で終わるのに対し、「みなす」では一旦みなされると法律的に確定され、直すのに手間がかかっちゃうワケです。
「推定」は直接的に誤りを正せるのに対して、「みなす」は間接的・結果的に誤りを救済すると考えればもっと違いがハッキリしますね。
※ お手数ですが、不備や間違い・勘違いがあれば、是非ともメールを下さいませ。
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