第23回‐総合問題 過去問(H30/3実施)

まずは初めに結論を。一口で言うと。まとめ。要旨。

 本問は『精算表』の問題。第23回試験の第5問‐総合問題の難易度は「ふつう」。仕訳は、基礎・基本的なものばかりなので、難しいところはありません。過去問を繰り返しておけば、まず、取れます。ホント、精算表は、作成に慣れてないと、かなり手間取ります。仕訳が切れただけで安心せず、何回も、“実地に”精算表を埋めてください。

第5問‐精算表

 ◇問題◇

 

 ◇解答用紙◇

 

 (クリックして拡大。)

解説

 結論から言うと、「答えはこちら」です。

 本問のレベルは「ふつう」です。

 例年通りの問題であり、設問に、難しいものはありません。

 とはいえ、当該精算表の問題は、設問以上に、その作成に骨が折れます。

 記入に慣れていないと、書くところを間違うなどの、ミスが生じます。

 必ず、精算表の解答用紙を3~4枚はコピーして、繰り返し練習しておいてください。

設問1

 

 普通に仕訳を切っていきましょう。

 ①の「電話代¥2,000が引き落とされていたが、その通知は当社に未着であった。」ですが、“未記帳”なだけです。

 んで、解答用紙を見ると、下の方に「通信費」とあります。よって、当該勘定科目で、仕訳を切ります。費用の増加なので…、

 借方:通信費 2,000

 貸方:当座預金 2,000

 …と相なります。

 次に、②の「工事の中間金¥10,000が月末に振り込まれていたが、発注者より連絡がなかったため、当社で未記帳であった。」ですが、これも、記帳されてないので、そう記帳するだけです。

 んで、問題文の言う「工事の中間金」とは、「未成工事受入金」の勘定で処理します。

 仕訳は、負債の増加と、資産の増加なので…、

 借方:当座預金 10,000

 貸方:未成工事受入金 10,000

 …と相なります。

 切った仕訳は、貸借の記入場所に注意しながら、解答用紙の「整理記入」に書いていきます。

設問2

 

 仮払金の処理です。

 ①の「¥12,000は保険料の1年分である。なお、期末時で11か月分が前払である。」ですが、いろいろ仕訳が切れますが、勘定科目に注意が必要です。

 普通なら、「支払保険料」的な仕訳を切りますが、解答用紙を見ると、そういった科目がありません。

 従って、本問では、「販売費及び一般管理費(販管費)」を使って、処理することになります。

 さて、まずは、仮払金¥12,000の全額を「販売費及び一般管理費(販管費)」に振り替えます。

 仕訳は…、

 借方:販管費 12,000

 貸方:仮払金 12,000

 …と相なります。これで仮受金の処理が完了です。

 次に、前払い分の処理をします。前払い分の「11ヶ月分」だけ、「前払費用」に振り替えます。

 \12,000が1年分ですから、1か月分は「\1,000」です。んなもんで、「1000*11」で「\11,000」が前払い費用で処理されます。

 仕訳は…、

 借方:前払費用 11,000

 貸方:販管費 11,000

 …と相なります。

 次に、要注意問題の②です。

 ②の「¥93,000は法人税等の中間納付額である。」ですが、この設問は、当期の純利益と、当期の法人税等の金額が出ないと、処理できないものとなっています。

 よって、処理は、最後に行なうことになります。

 そもそも、当期純利益は、合わないものであり、出てくる法人税等も、合いません。よって、本問のような法人税等の中間納付額うんぬんも、合わないです。

 試験戦術上、実に点数を取りにくいので、『捨て問』にして、時間をかけないのも一手です。わたしなら、捨てます。

 さて、先に答えを述べておきます。

 当期の税引き前利益は、「\262,000」となります。

 設問10の…、

 

 …によると、法人税等は、「40%」に当たります。

 「262000*0.4」で、法人税等は、「\104,800」となります。

 「¥93,000」が中間納付されていますから、納税すべき残金は、「104800-93000」で「\11,800」となります。んで、使用勘定科目は、「未払法人税等」が解答用紙にあるので、これらで仕訳を切ると…、

 借方:法人税等 104,800

 貸方:仮払金 93,000

 貸方:未払法人税等 11,800

 …と相なります。

設問3

 

 貸倒引当金の処理です。

 貸倒引当金は、売上債権の期末残高の2%を計上し、差額補充法と指示されているので、そのとおりにします。

 売上債権は、解答用紙を見ると、「受取手形」の「\375,000」と、「完成工事未収入金」の「\745,000」が該当しそうです。

 さて、本試験でのポイントですが、本設問以降に、「売上債権」が変動する設問があるかもしれません。

 んなもんで、いったん作業を止めて、残っている設問に目を通してください。ほいで、売上債権の増減がないことを確かめてから、仕訳を切るようにしてください。

 仕訳を切ったはいいが、後で、たとえば、「売上割引」があったなどの設問があれば、二度手間となります。

 さて、残った設問に「売上債権」が変わるようなものはなかったので、このまま、処理を進めましょう。

 「売上債権」は、「375000+745000」の「\1,120,000」です。この「2%」は、「\22,400」です。

 さて、処理の方法は、「差額補充法」でした。

 貸倒引当金の残高は、解答用紙を見ると、「\27,100」です。よって、“多めに計上されている”ことになります。

 んなもんで、「27,100-22,400」で、「\4,700」を、戻し入れる処理をすることになります。

 んで、解答用紙の下の方には、「貸倒引当金戻入額」とあるので、これで、仕訳を切ることになります。

 仕訳は、負債の減少と収益の認識なので…、

 借方:貸倒引当金 4,700

 貸方:貸倒引当金戻入額 4,700

 …と相なります。

設問4

 

 普通に、振替処理をするだけです。

 注意すべきは、問題文後段の「ただし、同機械は翌期首から使用するものである。」です。

 要は、当期は使ってないので、減価償却費を計上しない、ってな塩梅です。

 普通なら、当期の償却分を計算させるのですが、本問では、“やさしい”ことに、償却しなくていいので、早とちりしないようにしましょう。

 さて、振替処理の仕訳ですが…、

 借方:機械装置 15,000

 貸方:建設仮勘定 15,000

 …と相なります。

設問5

 

 減価償却の処理です。

 ①ですが、予定配賦額は、「1200*12」の「\14,400」です。

 んで、実際発生額は、「¥14,600」となっています。

 仕訳的なものを切ると…、

 借方:実際発生額 14,600

 貸方:予定配賦 14,400

 …と相なります。

 貸方が「\200」、不足しているので、これを埋めようとすると…、

 借方:配賦差異 200

 貸方:機械減価償却累計額 200

 …と相なります。

 んで、問題文では、配賦差異は、「未成工事支出金」に加減せよとあるので…、

 借方:未成工事支出金 200

 貸方:機械減価償却累計額 200

 …と相なります。

 次に、②です。これは普通の減価償却の処理です。

 注意すべきは、「備品(本社用)」となっているところです。よって、当該減価償却費は、「販管費」で計上することになります。

 取得原価¥64,000、残存価額ゼロ、耐用年数が年償却率0.250、減価償却方法は定率法です。

 過年度の備品の減価償却累計額は、「\28,000」なので、備品の減価償却費は、「(64000-28000)*0.25」で「\9,000」となります。

 仕訳は…、

 借方:販管費 9,000

 貸方:備品減価償却累計額 9,000

 …と相なります。

設問6

 

 普通の会計処理をするだけです。

 外注工事費¥7,500は、外注費ですから、工事原価を構成します。よって、「未成工事支出金」で処理します。

 未払いの代金は、解答用紙を見ると、「工事未払金」があるので、これで処理します。

 仕訳は…、

 借方:未成工事支出金 7,500

 貸方:工事未払金 7,500

 …と相なります。

設問7

 

 退職給付引当金の処理です。

 注意点は、「管理部門」のは「販管費」で処理し、「施工部門」のは「未成工事支出金」で処理するところです。

 管理部門¥7,900の処理は、普通です。退職給付引当金の計上なので、仕訳は…、

 借方:販管費 7,900

 貸方:退職給付引当金 7,900

 …と相なります。

 次に、「施工部門」の処理ですが、ちょいと手間です。

 施工部門の退職給付引当金は、月々¥1,300を予定計上しています。「1300*12」の「\15,600」が既に配賦されているわけです。

 んで、実際発生額ですが、「¥15,000」となっています。

 仕訳的なものを切ってみると…、

 借方:実際発生額 15,000

 貸方:予定配賦 15,600

 …と相なって、借方が「15600-15000」の「\600」が不足しています。

 ここを埋めるような仕訳を切ると…、

 借方:退職給付引当金 600

 貸方:配賦差異 600

 …と相なります。

 配賦差異は、「未成工事支出金」の増減で処理するとあるので…、

 借方:退職給付引当金 600

 貸方:未成工事支出金 600

 …と相なります。

設問8

 「完成工事補償引当金」の処理です。

 ポイントは、当該引当金の計上額は、「未成工事支出金」で処理するところです。工事関係の費用なので、工事原価を構成します。

 販管費ではありません。注意してください。

 問題文には、「完成工事高に対して0.1%の完成工事補償引当金を計上する。(差額補充法)」とあるので、そのまんま、電卓を叩きます。

 「完成工事高」は、解答用紙を見ると、「\2,900,000」となっています。んなもんで、「2900000*0.1%」で「\2,900」を計上すればよいことになります。

 んで、当該完成工事補償引当金の残高ですが、「\3,400」となっています。「3400-2900」の「\500」だけ、過大に計上されているので、取り崩す処理を行ないます。

 仕訳は…、

 借方:完成工事補償引当金 500

 貸方:未成工事支出金 500

 …と相なります。

設問9

 「9」の「上記の各調整を行った後の未成工事支出金の次期繰越額は¥956,600である。」ですが、過去問を解いていないと、何をしたらいいか、わからないはずです。

 これは、未成工事支出金の貸借差額を、工事原価に振り替える処理です。

 T字勘定は…、

 

 …となります。

 借方の合計額は、「952000+200+7500」で「959700」です。

 んなもんで、貸方の合計額も「959700」となりますから、ここから、引き算をして、「959700-600-500-956600」の「\2,000」が「工事原価」に振り替えられる、ってな寸法です。

 仕訳は…、

 借方:完成工事原価 2,000

 貸方:未成工事支出金 2,000

 …と相なります。

設問10

 設問10の「当期の法人税、住民税及び事業税として税引前当期純利益の40 %を計上する」ですが、設問2の「仮払金」の処理を参考ください。

練習あるのみ‐習うより慣れろ

 上記のように仕訳が切れたら、解答用紙の「整理記入」に、慎重に、指差し確認をしつつ、注意して、記入していきます。

 んで、記入できたら、P/Lに損益事項を記入して、税引き前の純利益・純損失を計算します。

 税引き前の純利益・純損失が出たら、設問10のいうように、税率40%を掛けて、当期の法人税等を計算します。この際、仮払金の処理と、未払法人税等の計上を行います。

 ここまでできたら、後は、B/S項目を計算したり転記したりして、枡目を埋めていきます。

 まあ、本試験では、純利益・純損失のところは、まず、合わないので、適当でいいです。計算が合えば、ラッキーくらいの取り扱いでいいです。B/SやP/Lの集計も、まあ、合わないでしょうが、気にしないでいいです。

 大事なのは、各設問が絡んだところです。たとえば、本問では、「当座預金」とかで、ここにこそ、配点があります。

 設問で仕訳を切ったところさえ、正確に記述できていれば、「部分点」が取れます。

 精算表の問題は、基本は、部分点狙いで行くので、集計などは“後回し”で、設問のところを、きっちり、正確に記入していってください。

 また、精算表は、先述したように、回数をこなしていないと、絶対に戸惑います。指も動きません。練習していないと、転記ミス・記入ミスが続出します。日々、練習を重ねておきましょう。

 「演習回数」を、必ず、確保です。反対に言うと、「精算表」が取れない人は、練習量が絶対的に不足しています。逆を言えば、練習の数さえこなせれば、誰もがそこそこ点が取れる、という次第です。「習うより慣れろ」で行ってください。

まとめとこたえ

 答えは…、

 

 …です。




23回

 index

第1問:仕訳

 1問:貸倒引当金・・・「ふつう」。

 2問:工事進行基準・・・「ふつう」。

 3問:消費税・・・「ふつう」。

 4問:社債発行・・・「ふつう」。

 5問:手形・・・「ふつう」。

第2問:文章問題

 1問:固定資産売却・・・「ふつう」。

 2問:仕入・・・「ふつう」。

 3問:株式発行資本金・・・「難」。

 4問:本支店会計・・・「ふつう」。

第3問:計算問題

 人件費予定配賦・・・「ふつう」。

第4問 個別問題

 1問:理論問題・・・「ふつう」。

 2問:部門費振替表・・・「ふつう」。

第5問 総合問題

 精算表・・・「ふつう」。

PDF過去問の閲覧

 結論から言うと、PDF形式の過去問でイライラしている人は、「タブレット」で閲覧する、といった次第です。

 

 当方、PDF過去問の閲覧には、12インチのタブレットを使いますが、「紙」の過去問と遜色なく、問題演習に集中できています。

 公式のPDF過去問は、スマホだと画面が小さくて問題文が読み難く、PCだとキーボードやマウス、配線等が邪魔で、かなりイライラします。

 本格的な“問題演習”には、「タブレット」が最も勝手がよく、ストレスが少ないというのが実感とするところです。

 PDFタイプの過去問演習でイライラしている方は、「タブレット」の活用を勧めます。押入れから出してみてください。

 なお、手許に「タブレット」がない人は、最もコスパの高い、アマゾンの「Fire HD」を推薦します。

 アンドロイド製のタブレットと性能が遜色ないくせに、値段は数割安く、もちろん、PDFの閲覧も可能で、コストパフォーマンスが秀逸です。

 とりわけ、スマホしか持ってない方に勧めます。小さい画面での問題演習は、倍疲れます。

 受験が終わっても、アレコレ使えますし、安価なサブ機としても使えます。これを機に「Fire HD」を買っても、損はないです。

独学向け教材

 教材の詳細は「教材レビュー」で述べていますが、読むのが面倒な方は…、

 簿記2級持ちの方は、ネットスクールの「建設業経理士 過去問題集&テキスト 2級 出題パターンと解き方」1冊で事が足ります。

 簿記3級持ちの方は、テキストと問題集は、TACの「スッキリわかる 建設業経理士2級」と「スッキリとける問題集 建設業経理士2級」を…、

 過去問には、「合格するための過去問題集 建設業経理士2級 」を使えばよいでしょう。

 建設業経理士2級は、市販されている教材が少ないので、大概、こうなるかと思います。試験会場でも、多くの人が同じような教材を手にしていました。

 ところで、電卓です。

 100円ショップで売ってるような、ぺらぺら計算機は計算ミスの元です。

 高品質な電卓を使っていない方は、「簿記検定試験の計算機(電卓)選び」や「売れ筋の電卓は、結局なに?」を参考に、買い換えてください。

 簿記2級では必須の高品質電卓と避けるべきペラペラ計算機

 左のがぺらぺらで、中と右が高品質の計算機です。絶対的に高品質の方が打ちやすいです。

 高品質な計算機

 考えるのが面倒な人は、わたしが愛用している「DF-120GT」にすればよいでしょう。これで支障ありません。建設業経理士もこれで受験しました。

建設業経理士2級のこまごましたもの

 建設業経理士に関するこまごましたことは、ブログに投稿しています。

 「建設業経理士の投稿記事」をばご参考ください。

 合格体験記は「建設業経理士2級の合格体験記」で、合格証書は「建設業経理士2級の合格証書」です。

みんなとシェアする