このページでは、法律用語「直ちに(ただちに)」「速やかに(すみやかに)」「遅滞なく(ちたいなく)」を説明していきます。これまた、混同しやすい法律用語なので注意してください。
一見すると、「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」は、同じ意味合いに見えますが、実は、その意味するところは、微妙に違います。
試験に問われることは、そうないと思いますが、いやらしい出題者だと突いてくるときもあるし、雑学的にも面白いので、軽く見ていってください。
「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」は、そのまま、スピード感の違いを表現したものですが、それぞれに、求められているスピードが違います。
スピードの順番は…、
「直ちに」が1番の速さ(早さ)が求められており…、
「速やかに」が2番目の速さ(早さ)を…、
「遅滞なく」が3番目の速さ(早さ)と相なります。
就職試験や昇進試験などの一般常識で問われた場合は、漢字のニュアンスを大事にして、「直ちに」→「速やかに」→「遅滞なく」の順番で、答えればよいでしょう。
当該「直ちに」→「速やかに」→「遅滞なく」の順番は、家裁の判例でも明言されており、行政書士試験でも上記順番が正解とされており、そして、多数意見でもこの順番となっているので、穏当に正解できるかと思います。
また、社労士などの資格試験では、結構、書類の提出期限が出題されますが、その際もよく使われる用語です。
ここまで突いてくる問題、たとえば、「遅滞なく届出せよ」という条文を、「直ちに届出せよ」と改変して正誤を問うといった問題は、まあ、出題の可能性は低いと思います。
ですが、「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」のそれぞれは、決して同じ意味ではなく、スピード(緊急性・喫緊度)が異なっていることを頭に入れておく必要はあるかと思います。
それぞれは違うと踏まえて読んでいけば、条文が立って見えるというか、凹凸が見えて頭によく入っていくように思います。
まとめます。時間的なものも含めたスピード(緊急性・喫緊度)の順番は、「直ちに」→「速やかに」→「遅滞なく」となっています。
さて、以下、ざっとですが、個々の語句の意味を見ていきます。
「直ちに」とは、読んで字の如く、すぐさまやらなくてはならないもので、緊急性の高いものです。
重要な条文に付いてくる枕詞だ、と記憶しておきましょう。
たとえば、「~の場合は、“直ちに”届けねばならない」などの条文の場合、届出がないと法律行為そのものが作用しなかったり、許可が効力を発揮しなかったり、許認可等の取り消しや罰則の適用のあったりする、重要な届出に当たるという次第です。
契約書等の文言でも、「一番はやくやる(やらせる)もの」には、「直ちに」を用いるといった塩梅です。
たとえば、商品代金の入金後スグに発送してほしいときは、入金後“直ちに”発送する、と明記するってな寸法で…、
すぐに送らなくていいときは、「速やかに」や「遅滞なく」を使うという次第です。
そう言えば、避難訓練でも、「“直ちに”避難してください」とアナウンスされますよね。
ゆっくりしていてもいいよ的なニュアンスが絶無なのが「直ちに」です。
「速やかに」とは、時間をおかず、できるだけ速く、という意味です。
速さの度合いからすると、2番目になります。
「直ちに」ほど強くない(緊急度が低い)ときに用いる用語です。
たとえば、図書館の本を延滞したときには、「“速やかに”返却を」という言い方となります。
学校の下校の放送も、確か「♪~“速やかに”下校してくださいー♪~」だった気がします。
「遅滞なく」とは、読んで字の如く、「滞りなく」という意味です。
基本的に遅れても、重大な問題は起きません。遅れてもスイマセンデシタ、と謝れば済むくらいの届出や処理に付いてくる枕詞です。
遅れが許される点が、「直ちに」や「速やかに」と違うところです。
こんな次第で、「直ちに」→「速やかに」→「遅滞なく」の順番に、緊急度が低くなっていく(緊張が緩やかになっていく)という塩梅です。
以下は、混乱するので、読まなくても構いません。
当該「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」の順番には、ちょっとした混乱が渦巻いています。
先も言ったように、「直ちに」→「速やかに」→「遅滞なく」の順番で考えておけば大丈夫なのですが、
「直ちに」→「遅滞なく」→「速やかに」の順番で考える人たちもいるのです。
「直ちに」が1番なのは変わらないのですが…、
2番目が、「遅滞なく」で、
3番目が、「速やかに」となっているのです。
このため、これらの用語に、『混乱』が生じているという次第です。
ド素人が言っていたら問題はなかったのですが、多数の弁護士で監修された用語集が発端だったために、「速やかに」と「遅滞なく」のどっちが『先』か、混乱が生じたという次第です。
実はわたしも、「直ちに」→「遅滞なく」→「速やかに」の順番で、用語の意味を捉えていました。(手元にはもうないのですが、わたしが読んだ本もそうだったのです。)
当該「直ちに」→「遅滞なく」→「速やかに」とする根拠は、「実務的な緊急性」でした。
「直ちに」と「遅滞なく」の付いた条文は、『罰則』が設けられていることが多く、対して、「速やかに」の条文には、『罰則』があんまりないのです。
だから、実務的には、「直ちに」と「遅滞なく」が絡んだものについては、罰則が付きまとうので優先し、「速やかに」は別段遅れても罰はないので後回しにしてもよい、と考えられるようになって、先の順番のように述べられるようになった、という塩梅です。
そう言われたらそうなのですが、しっくりこないのも事実です。
ま、当該「直ちに」→「遅滞なく」→「速やかに」は少数意見で“こじつけ”的な面もあり、まあ、この立場には立たなくてもいいでしょう。
先述したように、漢字のニュアンスを大事にして、「直ちに」→「速やかに」→「遅滞なく」と考えればおけばよいかと思います。
追記:Mさん、メールありがとうございました。
※ お手数ですが、不備や間違い・勘違いがあれば、是非ともメールを下さいませ。
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