1問‐H30の過去問と解説

まずは初めに結論を。一口で言うと。まとめ。要旨。

 第1問は、「意思表示」の問題です。詐欺、錯誤、虚偽表示といった、基礎的な論点で問題が構成されています。判例の出題もありますが、常識的に考えれば、大丈夫です。選択肢4は、暗記では正解できない良問です。ぜひ解いてください。取れる問題です。落とさないでください。

1問‐意思表示

 

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難易度・優先順位ひとこと

 本問のレベルは「ふつう」です。

 実力のある受験生なら、「点」にする問題です。

 単なる暗記では解けない良問です。

 本問の答えは、「こちら(記号のみ)」です。

解説

 本問は、「誤っているもの」を選ぶ出題形式です。

 別段、複雑な指示はないので、ふつうに選択肢の1つ1つを解けばいいです。

 なお、本問には、類似問題があるので、後述する「参考リンク」を活用ください。

選択肢1

 選択肢1の「甲土地につき売買代金の支払と登記の移転がなされた後、第三者の詐欺を理由に売買契約が取り消された場合、原状回復のため、BはAに登記を移転する義務を、AはBに代金を返還する義務を負い、各義務は同時履行の関係となる。」ですが、正しい記述です。

 判例問題です。常識的に考えれば、納得できるはずです。

 第3者による詐欺によって、買主が契約を取り消したわけですが、当然、売主・買主には、原状回復義務が生じます。

 当該原状回復義務は、同時履行の関係に立つものとなっています。

 よって、選択肢は、「正」となります。

選択肢2

 選択肢2の「Aが甲土地を売却した意思表示に錯誤があったとしても、Aに重大な過失があって無効を主張することができない場合は、BもAの錯誤を理由として無効を主張することはできない。」ですが、正しい記述です。

 民法 第九十五条には、『意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。』とあります。

 錯誤の意思表示は、「無効」なわけですが、表意者に「重大な過失(重過失)」がある場合は、その「無効」を主張できません。

 表意者が「無効」を主張できないのですから、相手方も「無効」を主張できません。

 よって、選択肢は、「正」となります。

 なお、当該規定は、原則的に、表意者保護が目的です。

 表意者が、錯誤のある意思表示をしても、それについて、無効を主張しなかったりするなら、相手方や第3者は、無効を主張できないことになっています。

選択肢3

 選択肢3の「AB間の売買契約が仮装譲渡であり、その後BがCに甲土地を転売した場合、Cが仮装譲渡の事実を知らなければ、Aは、Cに虚偽表示による無効を抗することができない。」ですが、正しい記述です。

 基礎的な条文を問う問題です。

 通謀虚偽表示は、「無効」ですが、善意の第三者に対抗できません。

 参考:民法 第九十四条第1項・・・『相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

 参考:民法 第九十四条第2項・・・『前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

 本問では、Cは「事実を知らない=善意」なので、抵抗できなくなります。

 よって、選択肢は、「正」となります。

選択肢4

 選択肢4の「Aが第三者の詐欺によってBに甲土地を売却し、その後BがDに甲土地を転売した場合、Bが第三者の詐欺の事実を知らなかったとしても、Dが第三者の詐欺の事実を知っていれば、Aは詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。」ですが、誤った記述です。

 本問は、「第3者による詐欺」です。

 条文を見ていきましょう。

 民法 第九十六条第1項・・・『詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

 民法 第九十六条第2項・・・『相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、“相手方がその事実を知っていたときに限り”、その意思表示を取り消すことができる。

 民法 第九十六条第3項・・・『前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

 そもそも、Bは「善意(知らない)」なのですから、Aは詐欺による取り消しを、Bに主張できません。よって、この契約は、「有効(取り消すことができない)」となります。

 元の契約が「有効」なのですから、次の所有者が「悪意(知っている)」であっても、「有効」とならざるを得ません。

 第3項をよく読んでください。

 条文には、「前二項の規定による詐欺による“意思表示の取消し”は」とあります。

 第3項は、「取り消すことができる場合」の規定です。

 本問の場合は、取り消し自体できないのですから、第三者への対抗云々は、問題ではなくなります。

 よって、選択肢は、「誤」となります。

答え

 「1」は「正」です。

 「2」は「正」です。

 「3」は「正」です。

 「4」は「誤」です。

 本問は、「誤っているものものはどれか?」ですので…

 正解:4

 …と相なります。

 >>> 次の問題へ。


参考リンク

 当該年度のぜんぶの問題(1~50)のリンクは、「こちら」です。

 当該年度の「権利関係」だけ、問題演習をしたい人は、「H30 権利関係一覧リスト」を、ご利用ください。

管理業務主任者の民法

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 まだまだ問題が解き足らない方は…、

 「管理業務主任者 民法一覧」の方も、活用ください。

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宅建のこまごましたもの

 試験勉強については、「宅地建物取引士(宅建)の独学」を、参考にしてください。

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 ブログに試験勉強に関する記事を投稿しています。興味のある方は、「宅建タグの投稿記事」を、お目汚しください。

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