わが父・ケ小平:文革歳月

わが父・ケ小平:文革歳月(上) 」と「わが父・ケ小平:文革歳月(下)
「わが父・ケ小平」は、生きのびるとき、人間の能力の中で何が一番重要かということを教えてくれます。決して、知恵や頭のよさではありません。単に耐えることでした。
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はじめに-ケ 小平さんとは?

ケ 小平(とう しょうへい 1904年8月22日 - 1997年2月19日)は、中華人民共和国(中国)の政治家。生涯に3回の失脚を乗り越え、実利的な視点に基づく「改革・開放」政策によって中国の市場経済化に手を着けた。1978年から1997年までの、事実上の中国の最高実力者。

(By Wikipedia)

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「わが父・ケ小平」は強力な忍耐力が欲しい人向けの伝記です。

基本的にわたくし、ケ小平という人はあまり知りませんでした。
でも、彼の困難に対する対処には、胸を打たれました。


試験問題が難しいなぁ
試験勉強がイヤになってきたなぁ
生活が単調だなぁ


「わが父・ケ小平−文革歳月」を、こんなときに読むと、面白さが百倍です。

人間サバイバル

混乱した中で、人はどうやって生きればいいのか?

生きていくうえで重要なテーマです。

「わが父・ケ小平」の何が面白いかというと、文化大革命の混乱をどう生き抜いてきたかという点につきます。

この文化大革命とは、最も簡単に言えば「言ったモン勝ち」の世界になってしまった社会の混乱のモトとなった出来事です。

「文化大革命」自体は深く考えなくてもいいでしょう。
読んでも、なんだか体系の上の体系から引き出された理屈のようで、どうも容量が得ませんでした。たぶん、当時の人もそうだったでしょうw

極端に単純にいうと、「あいつは〇〇だ!」と大声で叫びおとしめることができれば、それだけで出世できたのです。

出世できれば、給料も住むところも良くなるわけです。
異常な権力志向、利用し・されていく熱狂的な混乱状態にあったわけです。

今風に言うと、会議で「あいつが悪い」と発言するだけで出世への人事評価になったと考えればいいでしょう。


「権力闘争」の脂っこさ、いやらしさ。なによりえげえつなさ。

鳥肌が立ちます。そして、自分と全く関係のない所の「政争」で2転3転。

60を超えてこんな仕打ちをされたら自分はどうなるだろうか?
耐えれるだろうか?


まず、こんな感想を持ちました。

逆境の中で人はどう生きるべきか?
耐えるにはどうしたらいいか?
この本がココロを打ったのは、耐えて生きた人の姿の真実があるからです。



極めて常識的なこと。この本で学ぶことは、常識です。

好いときもあれば悪いときもある。
淡々と生きればよい。
家族を大事にする。

全編に貫かれているテーマを書き出せば、上記のように至って普通です。
ただ、大切なのは、自分がどういう状況になっても「そう思えるか」です。
長い人生、大切なことを見失うことも多いでしょう。

大切なコトがわからなくなったら、読み返す価値があります。

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おもしろかったので抜き出した文章

こうした政治的な「鈍感さ」は、彼らの運命−当初の「情勢についていけない」段階から「過ち」を犯す段階へ進み、さらには「革命」の奔流に飲み込まれ、ノックダウンしてしまう−を決定付けた。

→政治的に敗北するとは、こういうことから始まりますよね。アレッ?!みたいな。

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3人の老人はお互いに思いやり、面倒を見合った。あらゆる困難を克服する勇気。苦境の中で持ち続ける楽観的精神。頑強な生存能力。困難な状況のなかでの助け合いとお互いへの尊敬、愛情。これらによって、監禁中の異郷生活は充実し、生命力は満ちたものになった。

→家族関係がうまく行っていないとは、ある意味、恵まれた環境なのかもしれませんね。

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楽しみと幸せは自ら探し、自ら勝ち取らなければならない。困難と憂い、悲しみは自らの強さと努力で克服しなければならない。楽観主義は逆境でこそ持ち続けなければならない。わたしたちにわかったことはそうしたことだった。

→苦境の中でこそ、人は楽観主義になれるかが生きのびるポイントなんだなぁと実感。

読後感

800ページほどありますが、日曜日だけで読み終えてしまいました。
情景が浮かびやすく、読みやすいのです。

基本的に中国の共産主義やら毛沢東主義はまったくわかりません。

ですが、それらの知識がゼロでも、困難な状況下での身の処しかたが、どれも感情を掻き立てられて、あっというまです。


ケ小平の小さな体のどこに、こんなエネルギーがあるのか?
人間の偉大さと奥の深さ、底の厚さを空恐ろしく感じたものでした。

口絵の写真を見るたびにそう思わざるを得ません。

自分の限界を感じている。
自分の壁を感じている。
閉塞感。孤独感。

いろいろイヤナコトはあります。

しかしながら、「わが父・ケ小平−文革歳月」のケ小平一家の姿に触れると、「まだまだ、できるわ」というパワーがでてくるでしょう。

あのような苛烈な状況の中で、ほとんどが「人災・人間関係」の締め付けの状態で、生き抜いて仕事を進めた老人の姿があるのです。

生きていると、いろいろあります。

でも、まだまだある。ということが学べます。

ある意味、人間の不幸の標本ですな。この本はw

−−注意−−

読むべき伝記は「わが父・ケ小平:文革歳月(上) 」と「わが父・ケ小平:文革歳月(下) 」の2冊です。

「わが父・ケ小平」シリーズは2タイプあって、1つは、新中国誕生まで、もう1つは文化大革命の頃のケ小平の伝記です。

筆者の「毛毛」さんは、ケ小平さんの晩年の子供のため、「新中国誕生への道」と「 若き革命家の肖像」編は伝聞と取材形式で書かれています。ですから、あんまり面白くないと。筆がのっていないと見受けられます。

それほど、「ケ小平」という人間を扱った2部作でありながら、前本と後本は内容に違いを感じたのでした。

極端に申しますと、前本の新中国編は、できの悪い歴史の本を読むようで、共産主義の歴史を知りたいという人くらいしか読む価値はないと思います。

たいして、文化大革命という人災時のケ小平が書かれた「文革歳月:上、下」については、筆者がモノゴゴコついていたため、当事の文化大革命の肌触りが感じられ、大変面白く読めます。

権力闘争の凄さとその対処の処方箋にこれを超えるものはないでしょう。

読むなら「文革歳月」の方を読んでください。ちなみにオイラの上記の感想は、「文革歳月」からがほとんどです。

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