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はじめに-瀬島龍三さんとは?軍人。終戦近くの8月に、関東軍参謀として満州に赴任する。終戦のときには、ソ連軍への武装解除の業務に就く。 武装解除の後は、シベリアの収容所にて10年を過ごす。本土に帰還のちは、伊藤忠商事に勤務した。 伊藤忠商事にて代表及び会長を務めた後、行政改革に奉職した。晩年のさまざまな団体・組織の会長職の多さには目を見張る。 ・・・以上が、瀬島さんのざっとした履歴ですが、これだけではまったく面白くないですね。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「幾山河」は、上述した瀬島龍三さんの自叙伝です。全部で669ページで最初に見たときは「ゲゲッ」と思いましたが、思った以上にすらすら読めます。 文章が簡潔なんです。ちなみに、出版社は、産経新聞社です。 本書「幾山河」のあらすじについては、アマゾンかどっかの書評を読んでください。わかりやすかったですwww シベリア抑留この本に感動した点は、まさにシベリアの収容所でした。 考えて見ましょう。 瀬島さんは、終戦のぎりぎりに満州の関東軍参謀に赴任しました。 終戦まじかに渡ったことが、それ以後の10年をシベリアの収容所で過ごす羽目になったのです。 この10年という棒に振った時間の長さ。しかも、強制労働と飢え付き。 たまらんかったやろうなぁ、と思います。 たった数週間で、10年棒に振るのです。 しかも、シベリアの収容所行きは、「不運」としか言いようがないのです。 南方の戦線に派遣されればもっと早く帰国できたし、いわずもがな、終戦を日本で迎えられたら、、、というわけです。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 本当に鮮やかなのが、文章の雰囲気です。 やはり、人間は苦労したら、非難めいたことも言いたくはなりそうなのですがが、恨みやら愚痴やらを感じさせない、堂々として淡々とした文体です。 文は名を表す、といいます。まさに、地を行った文章です。 後年の活動量の多さは、能力如何は当然として、こういう性格だったからだなぁと思うことしきりでした。 性格が現れているので、一番印象的だったのは以下のシーンでした。 シベリアの収容所の帰国後に、子供から「お母様は軍人の妻ということで、(戦後からは)辛い目にもあったのですから。。。」といわれたときに、「なんだと!!」とぶちきれるところでしょう。 それなのに、自分のシベリアでの苦労を語ることなく、「そうやなぁ、苦労かけるなぁ。がんばるわー」と返す姿が書かれたくだりは、なんとも言えず、本当に言葉が出ませんでした。 たいしたもんだなぁ・・・。 ちょっとした事で小言が出る我が身を、思わず振り返ったものですw さいごに人間は、思ったように生きれない。 当然な処世訓です。 いいときと悪いときがあるんだから、短絡的に問題や解決を見出さず、淡々と生きようと思った次第です。 もちろん、悪いときがずーーーと続くわけではないのです。 瀬島さんのように、シベリアに10年いて、復興期に日本に帰ってきて、実務も何も出来なかったのに、会社組織に入り、代表から会長になり、後は行政改革等といった立派な仕事を成し遂げた人もいるわけです。 いまの状況だけを切り取って見るな。所詮、変わる。 ヤケになったり感情的になることなく、淡々と生きるのが長生きするなと思ったのでした。 シベリアのときにヤケになったり、感情的に絶望していったら、彼だけでなく、どんな人も、生き残れなかったでしょう。 それを真似すればいいのですよ。 あと、題名の「幾山河」も、歳を取ってくるにつれて、感傷的に感じてしまいますなぁ。 おまけ 瀬島さんの本の中で紹介されていたシベリア収容所関係の本を、以下に紹介します。 なぜ、瀬島さんを尊敬するかというと、シベリア収容所の過酷さを知るにつれて、よくもまあ、あんなさばさばした言い方をするわ、ということです。 ぜひお読みになってください。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 収容所は、ロシア語でラーゲリと言います。 収容所では、メモもノートも持ち出しが禁止されていました。紙が禁止されていたため、遺書を日本に届けることが出来ません。 そこで、ある人の遺書が、暗記され、暗誦されて、アタマの中に入れられて日本に送られました。 その人というのが、山本という人で、つい、気弱になって絶望に至る収容所生活の中で、句会やその他の文化的活動で、皆を支えた人なのでした。 山本さんは「帰還できる」と皆を励まし、最後はガンで帰還できなくなりました。 究極の状況の中で、自分は何が出来るか? そんなことを深く考えさせられてしまいました。 人間の営みというのが深く心に付き刺さります。 この本を読んだ子供は、まず、道を間違えなくなるでしょう。 教育効果の高い一冊。強烈な人間の生がこの本にはあります。 あと、ほとんどの悩みが吹っ飛びます。こんな状況じゃないからやれる、と思えること多々。 収容所に入れられたら、こういうことで悩むかと自問すれば、ほとんど取るに足らない問題だとわかります。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ・獄中の人間学−古海 忠之 (著), 城野 宏 (著) 到知出版 監獄や収容所というものが、いったいどういう変化を人に与えるか、という点を考える上で非常に面白い一冊です。 仕事や何かで他人を信じないといけないときなど、「この人は収容所でどんな人になるだろうか?」と考えてみましょう。 とはホント、いい得て確かな一言だと思います。 本書では、自分の意思・意見を持たず、周りの状況に翻弄されてしまう人にはならないように、といっています。 というのも、帰りたい一心で転向し、仲間を吊るし上げたりやチクリを率先して行っても、結局は収容所・監獄側から信用されず、その分帰国が遅れていたという状況だったからです。 古海さんがこういっています。反動・戦犯の筆頭として見られていた自分に、平気で話しかけてくれたのは、瀬島さんともう1人の人だけだった、と。 瀬島さんの軍人のキャリアから、経済界・財界で、あそこまで登り詰めるというのは、このような気質があるからとしか思えないのですw −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− だからといって、迎合するのも人間の性でもある、と。。。 迎合できる人間が集まるから、組織も出来上がるわけだしなぁ、と。。。 迎合する人間が集まってるから、指導者が必要なのだしなぁ、と。。。 本書は、明快で、読みやすく、痛快な文体なのですが、アレコレと考えてしまった次第です。
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