気はすぐ変わる

えらそうな事をいう人には、ホトホト注意をしなければならないのでございます。

イヤなことがあってもさぞかし、知ったような口調で「なあに今年の厄払いさ」などという人には、警戒の念を解いてはいけないのでございます。

ノラネコなら逆毛のまま、フゥッと威嚇続行中でございます。

こういう言の人は、たいがい自分に起こっていない、対岸の火事だからこそ、いうのでございます。

というもの、どんな人でも自分の気分を操作することなんてできない、と悟ったからでございます。

あるお昼下がりの出来事でございます。

お昼ご飯を食べていて、あら、おかしい、なにか「空」なる違和感を感じたのでございます。

なんだろ、妙だなと思った瞬間、電光の如く気づくのでございます、右の奥歯の詰め物が取れし事を。

あるところにない。当然感じるものがなかったときの焦り。家に帰ったら妻子が居ないというのはこんなもんかなと思った程でございます。

さて、この詰め物、不思議なのは、いつの間にやら当人が、気づかぬうちに外れていたようなのでございます。

馬鹿らしいのですが、詰め物が取れたと気づいた瞬間、ポケットをパンパン叩き、机の上を見渡して、ちゃわんのごはんをかき分けて、お皿のおかず紛れてないかと、銀歯をあちこち探したのでございます。

しかし、ない。おひるの唐揚げとともに飲み込んだとしか考えられないのでございます。

詰め物を食べた、というのは、これまでにない暗黒な気分でした。1日中、気が晴れませんでした。青菜の虫を食べたのとは違う、気の悪さでございます。

昨日いった「厄払い」と言おうが思おうが、納まるものでなし。

つくづく、人というのは身勝手な物言いをするなぁ、我ながらと思ったのでございました。

考え方や物言い次第で、「イヤ」がなくなるわけでなし、悟りを開くわけでもなしと、3度振り返って赤面するわたくしでございます。

こういうことがあって、いやな目に遭ったよ、という友人に話しには、さかわらず素直に耳をかそうと思ったわたくしでございます。

味わったものだけにしかわからぬものがあると、今更の思いでございます。

はなして茶にして気晴らしに、

茶の間の真理を垣間見る。

 

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