黙るが、実用

合格しても黙っているのが人のため、そして至るや我が身のためなのございます。

誰にも聞かれないのに、「あたくし、合格したざますのよ、オホホ」といえば、ご友人一同から村八分にされること畢竟でございます。

かのジェントルマン、白洲次郎さんは自分のことを一切話さないことで有名な御方でございました。

ついで奥様の白洲正子嬢も、知ったかブリの人を見ては「あら、お勉強ね」と茶化したものでございます。

自分のことをべらべら話すのは、「馬鹿にして」と自分から公言しているのと同じなのでございます。

知性というのは、秘めることで熟成するものでございます。

内面に満ちた知性こそ、美しさの根源でございます。

内面に満ちきった知性は、行き場を失ったといって消えさるものではございません。

出口をお肌に移し、えもいわぬフェロモンとなるのでございます。

花の華や 目には見えぬが 鼻にはわかる −

香水のごとくに、知性とは身にまとうものになるのでございます。

オニも18と申しますように、男性女性ともにお肌というのは、18をピークに数年は横ばい後は衰えるばかりでございます。

深剃りをすれば肌が荒れるようになったり、細かいアゴヒゲがキレイに剃れなくなったりするのは、お肌の弾力性がなくなってきたことが遠因なのでございます。

女性の肌云々については、わたくしの身の安全を考え、細かくは述べないものとします。

衰えゆく我が身を補うものが、知性でございます。

お肌や精力の衰えとともに、熟成された知性が生きてくるのでございます。

そう、ある年齢に達したら、知性で世渡りをしなければならないのでございます。

合格云々についてべらべらおしゃべりになることは、せっかくの知性の熟成を止めているが如しでございます。

樽詰めしたブドウジュースを、片っ端から飲んでいけばワインが出来なくなるのと同じことなのでございます。

3度聞かれて「合格してますの」と小声で言う奥ゆかしさが、身を修める術であると、甘納豆好きの祖母によくいわれたものでございます。

知性のフェロモンは、孫を持つ歳になっても衰えぬ魅力でございます。

黙っているのが、真に実用的なのでございます。

 

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